業界4位「どろんこ保育園」の"不都合な真実"
「偽装工作」で認可を取得していたことが判明

「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログが象徴するように、保育園不足は今や深刻な社会問題だ。共働き家庭は、死にものぐるいで「保活」をし、自治体は保育園の増設に追われている。
保育の受け皿が拡大していく中で進むのが、保育園の「ブラック化」だ。補助金の不正受給、劣悪な保育、そして保育士たちの過酷な労働環境。姫路の認定こども園のケースでは、行政が積極的に指導を行った結果、全国初の「認定取り消し」となり、園長が4月以降の運営を取りやめる意向を示した。
その一方、「待機児ゼロ」をうたう首都圏では自治体が保育園増設を優先し、こうした園にも目をつぶることがあるようだ。今回取り上げる社会福祉法人どろんこ会はその1例。特色ある保育理念を掲げて人気を博し、規模拡大を続ける中で多くの問題が生じている。その実態をリポートする。
田植えや稲刈り、ヤギや鶏の世話を通して、自然にふれあい生命の大切さに気づく。食育活動では子どもたち自身がおだんごやケチャップなどを作っている――。ホームページを見ると、保護者が「わが子に経験させてやりたい」と思いながらも、都会生活ではなかなか味わえない活動の数々が、写真入りで紹介されている。
社会福祉法人どろんこ会(東京・渋谷区)。「にんげん力を育てる」を理念としてかかげ、東日本を中心に展開する50以上の保育施設をはじめ、関連法人を含めれば100近い事業所を運営している。従業員数は1515人(2017年3月1日現在)にのぼる、業界第4位の大手だ。2015年度ごろから事業規模を急拡大させ、最近では年間で10園近く新規開園する年もある。
自身の子育て経験をもとに1998年に保育園を開設し2007年にどろんこ会を立ち上げた女性理事長は、カリスマ経営者としても知られている。メディアへの露出や講演などにも積極的だ。その効果もあってか、わが子を入園させようとする保護者、そして保育士たちからの人気も高い。まさに、”理想的な保育園”といえるかもしれない。
しかし、規模拡大を優先させているためか、看過できない問題も生じている。認可を得るために「偽装工作」さえ行っているのだ。
「抱いていたイメージと違う」
偽装工作について明らかにする前に、まずはその特徴的な運営ゆえに生じているゆがみについて触れる。
同園の日々の活動の一環として、9時から屋外で行われる「体験活動」「散歩」がある。悪天候の際に「風邪を引いてしまうのではないか」と現場保育士が訴えても、本部職員は無視。活動を強要するような指示が常態的に出されているという。
元職員は憤る。「機会を排除せずに自然体験をさせることが教育方針とはいえ、はき違えも甚だしい」。法人の教育理念に共感して就職した保育士たちの中には、「自分が抱いていたイメージと違う」と入社後数週間で退職した人も少なくない。