タイマン
「何勝手に、俺様の許可もなく、雑魚ギルドに五大ギルドが負けてんだぁ?」
ケルビン・ヒットレ。
SS級、二百階層突破探索者でありながら、新生国家『ムーン』の親善大使という名目で、日本を影から仕切るこの国の裏の君主だ。
「こうも簡単に引きずり出されてくれるとはな」
「あいつは、血気の盛んな奴だし、何よりジャイアニズム全開の王様気取りな性格をしてますから、自分の顔に泥が投げつけられたら子供みたいに怒鳴り散らしに来ますよ」
世界には三つの超巨大ギルドがある。
アメリカの『UCG(アメリカ合衆国中央ギルド)』。
中国の『麒麟』
そして新生国家ムーンの『ムーン』。
この三つと、日本のナンバーワンギルドの『白栄』の最もな差は到達階層だ。
日本の最高到達階層は百四十二階層なのに比べて、この三つのギルドはどれも最高到達記録が公表さえされていないだけで、二百階層を越えている。
ただ、その三つの中で、最も強力なギルドは何処かと問われれば誰もがこう答える。
『それはムーンギルド』だ、と。
その理由は総人口の約五十パーセント、約五百万人の探索者が所属する世界最大規模のギルドだからだ。
そして非公式記録すらも、それが真実であると物語っていた。
SS級探索者の数も『ムーン』が一番多いからな。
「僕は子供の頃、興味本位で三大ギルドの機密事項にアクセスして驚愕しました。僕が中学生、つまり五年前の段階でムーンには十人ものSS級探索者の記録があった」
そして現在は、UCGにも四人、麒麟にも三人のSS級の存在が確認されています、と緑川は続ける。
「だから、僕は日本をもっと強くしたいと願った。SS級の前では、それ以下の探索者は無力だから。彼らがもしも日本を滅ぼそうと思ったのなら、日本列島は多分一日で地図から消滅する」
そんな状況を容認できるはずがない。
それが、緑川晴斗が俺に対して『世界に通用するギルドを作れ』と言った理由なのだろう。
「おい! この俺様が来たんだぞ! 荒神! 帳! 緑川! 頭下げてもてなせや!」
緑川の言ったジャイアニズム全開って言葉は嘘ではないようだ。
ってかただの癇癪持ちだろあれは。
証拠は今の言葉だけで充分だろう。
日本五大ギルドのギルドマスターは、それこそ官僚以上の権力を持つ人たちだ、それにこうも無茶な要求を出来るのは日本全土を探してもこいつ位な物だろうな。
試合会場、男が歩いて出てきた場所に一番近い所に居た、荒神楓にその男は目を付けた。
「まずはテメェからだ。頭が高けぇぞ、荒神楓」
「ケルビン・ヒットレ……様」
五大ギルドのマスターすら敬称をつけて呼ぶ、その事実だけでどちらが上位者なのか理解するには十分。
その言葉に気を良くしたのか、男は更に言葉を続ける。
「これは、どういうつもりだ? 俺の管轄の国の俺の管轄のギルドがよぉ、なんで誰とも知らねえ弱小ギルドに負けてんだ?」
足を振り上げ、荒神楓のどてっぱらに靴底を向け、その足を勢い良く前へ突き出す。
その速度は、さっきまでの戦闘に比べれば大したスピードでは無かったが、しかし荒神楓はそれを避けようとしない。
それを避けてしまえば、それは逆らったと捉えられてしまうから。
「ふざけんなよ日本一。あんたがここでそんな姿見せたら、日本は属国だって認める事になるだろうが」
【
刻眼:《
】
雷の如き速さを以て、その足を俺の手が掴み取る。
「なんだよ、テメェは」
「黙れよ筋肉達磨。悪いが、お前みたいな下っ端に名乗る名前なんて持ちあわせてねぇんだ」
「んだと……!?」
ブチギレた表情を浮かべながら、男は掴まれた脚をそのまま俺の顔面に蹴り込んでくる。
分かり易くて助かるな。
「っ!」
流石にレベル二十相当。
今の俺のレベルじゃ、掴んでも振り払われる。
だが、極光によって加速した身体能力と観察を以てすれば、その蹴りを避ける事は容易い。
少し距離を空けてその蹴りを回避する。
「青葉君何故、いや何をしに来たの……?」
「俺の目的は最初から何も変わっちゃいない。最強のギルドを作る。その為に、優秀な人材を集める。さっきに戦いを見て決めたよ、あんたは俺のモンだ。それが例え世界三大ギルドでも、何も分かってねえ奴に渡すわけには行かないな」
冬華と荒神楓のツートップ。
それが俺の思い描く、最強ギルドの構成にさっき決まった。
冬華の花弁を茨にするには、荒神楓の針を剣山にするには、『以心伝心の力をこの二人で共有する事』が一番短い道だ。
冬華は戦闘中にアーツスキルを発現させ、荒神楓は戦闘中にレベル七のスキルを手にした。
それが答えだ。
この二人に心さんの能力が加われば、それは間違いなく、世界最強の探索者になる。
「どういう意味かしら……」
「なあ、楓さん。もし俺がこの筋肉達磨をぶっ飛ばしたら、俺のギルドに入ってくれ」
「なっ……そんなことできわるけ――」
「ああ、答えを聞かせてくれるのは全部終わった後でいい。冬華?」
「うん、頑張ってね。楓さんごめんなさい」
そう言って、冬華は荒神楓を無理矢理抱えて選手席まで移動していった。
「テメェは、俺が誰だか分かってんのか?」
「分かってるさ。筋肉達磨。お前はお前の仕切る五大ギルドが負けて、全国放送なんてされてるもんだから、親元の『ムーンギルド』に恰好つけようと出てきたただの
「だったら、何しに来たかも分かってんだろなぁ!?」
ケルビン・ヒットレは、その巨体から放たれる拳を俺に向かって振り下ろす。
ってか極光めっちゃ疲れるんだが、酸素消費五倍はヤバいだろ。
【
刻眼:《加速》
】
こいつのパンチ避ける程度、これで十分。
その拳の着弾点から、凡そ人の身体一つでは出せないような爆裂音が鳴り、地面に小さなクレーターが出来ていた。
レベルによる身体強化がこの場に居る誰よりも上なんだ、これくらいしてくれなきゃ倒し甲斐がねえ。
「一つ、テメェに絶望的情報をくれてやるぜ。俺の能力は近接系じゃねえし、遠距離系でもねえ」
「お前は悉く莫迦だな。俺がそんな事を知らねえ訳ねえだろうが」
「だったら、テメェは俺のこいつにどう対処してくれるんだぁ!?」
【
ケルビン・ヒットレ
レベル20
破壊力3220 (C
耐久力2820 (D
敏捷力2420 (E
精神力2420 (E
感覚力2820 (D
炎36 (E
水56 (D
風56 (D
土76 (C
先天性スキル
《
後天性スキル
《近接戦闘1》《炎属性魔法3》《水属性魔法5》《風属性魔法5》《土属性魔法7》
】
知ってるんだよ。
お前の事は全部。
ケルビン・ヒットレの周りに魔物が現れる。
それはダンジョンの魔物。
九番台の階層に居るボスモンスターが計二十匹。
こいつの先天性スキルは、生物の死骸を操り人形に変える物。
最大支配数はレベルと同数で、死骸であれば操れない相手は居ない。
なるほど、確かに強スキルだ。
テレビ局の人間が現れた魔物を見て騒がしく移動する。
だが、緑川と心さんの指示によって生放送は継続され、照明の類も落ちた様子は無い。
「三下が、俺が身の程弁えさせてやる」
「やってみろ。 この数の魔物相手に何か出来るならな」
「数か……そもそもお前が相手にしているのが、俺だけだと思っている事が根本的な間違いだ」
「はっ。仲間に頼ろうったってそうは行かねえぞ? 黒宮と青轟の精鋭探索者を待機させてる。悪いが
ケルビンは言葉と同時に観客席を指すと、そこには青の制服と黒の制服に身を包んだ百にも及ぶ探索者が見えていた。
「心配すんな。お前を飛ばす位俺一人で十分だ。だが、俺が使えるのが、俺の力だけとは限らねえぞ?」
速く、その力を解放しろと。
「王様気取り、本物の『王』の力を見せてやるよ。さぁ、
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