19 研ぎ澄ませ
接触の直前。
フィストは構えを取る。
全身の筋肉を隆起させながら腰を落とし、左半身を前へ、右半身を後ろに。
右腕は腰だめに構えられ、まるで発射を待つ弓矢のように引き絞られていた。
そして俺が射程に入った瞬間、目にも止まらぬ速度で拳が解き放たれる。
小細工無用とばかりに、全ての力が込められた必殺の正拳突き。
来るとわかっていても対処は困難だろう。
防げるものなら防いでみろと言われているような気がした。
だが、残念だったな。
その手の攻撃は俺のカモだ。
目にも留まらぬ拳へと正確に刀を合わせ、流刃で受け流して回転。
その威力を斬撃へと変換してフィストの足を狙う。
カマキリ魔族や剣聖スケルトン相手にやった、恒例の足刈り。
機動力を削げれば一気に有利になる。
しかし、さすがにこんな単発の一撃で刈れるような甘い相手じゃない。
フィストは拳の勢いのままに体を回転させ、それに沿って俺の狙っていた左脚を下げる事で斬撃を避けた。
俺はそのまま流刃の勢いに任せてもう一回転し、次は脇腹を狙って斬るが、左手に付けられた無骨な手甲で簡単に防がれる。
初撃のぶつかり合いは、互いにダメージを与えられず引き分け。
上々の結果だ。
しっかり英雄と張り合えてるし、
覚悟しろよ、英雄。
今、俺の舞台に引き摺り込んでやる。
俺はフィストの左腕に攻撃を防がれた反動を利用し、激流加速を発動。
一目散にフィストの後ろへと走り抜けた。
向かう先はドラゴンゾンビの首の道。
そう、フィストを無視して老婆魔族を狙う!
「ッ!? フィストォォ!」
そうなれば当然、老婆魔族はフィストをこの首の道に呼び出さざるを得なくなる。
命令に従ったフィストは、背後から大ジャンプで俺を追い越し、老婆魔族の前に立ち塞がろうとした。
しかし、フィストがジャンプした瞬間に、俺は飛翔する闇の斬撃を老婆魔族に向かって放つ。
老婆魔族はそれを避ける為にドラゴンゾンビの首を動かし……
「しまっ……!?」
直後に己のミスに気づいたらしい。
今動かしたドラゴンゾンビの首は、俺達にとって足場だ。
そして、フィストは現在跳躍中。
フィストにとっては、突然足場が動いて着地点がなくなった事になる。
いくら英雄でも、さすがに空は飛べない。
このまま落ちてしまえば、俺が老婆魔族を斬るまでに戻って来る事はできないだろう。
そうなれば勝ちなんだが……
「まあ、そう簡単にいく訳ないか」
ドラゴンゾンビがもう一度首を動かし、フィストの着地点を確保する。
そこへすかさず、二発目の闇の斬撃を叩き込んだ。
ここで避ければさっきと同じだ。
タイミング的に、今度こそフィストは地上へと落下する。
しかし、避けなければ老婆魔族の耐久力的に致命傷だろう。
対応を迷ったのか、老婆魔族とドラゴンゾンビの動きが一瞬止まった。
それを解決したのは未だ空中にいるフィストだった。
フィストが拳を振るい、飛翔する打撃を闇の斬撃にぶつけて叩き落としたのだ。
さすが、撤退する勇者達を守りきったという伝説を持つ男。
味方を守るのは得意分野か。
その力を、自分を殺した魔族の一人の為に使わされるというのは何とも悲しいが。
だが、今の一連の無駄な動きのおかげで確信できた。
この首の道での戦いは俺が優位だ。
この不安定な足場は俺も戦いづらいが、向こうはそれ以上に戦いづらい。
足場の制御権こそ向こうにあるが、今の様子じゃ老婆魔族がそのアドバンテージを上手く使うのは難しいだろう。
ドラゴンゾンビのブレスも、ここに居る限り十全には使えない。
下手に撃てば、フィストはおろか老婆魔族すら巻き添えになる可能性があるからだ。
使うにしても小ブレスが精々。
中規模ブレスや極大ブレスはほぼ封じたと見ていい筈だ。
そして何よりも重要なのは、フィストが老婆魔族という弱点を守りながら戦わなければならないという事。
いくら守りを得意とする英雄でも、あんなデカくて剥き出しで、自力での防御も回避もままならないようなお荷物を抱えての戦闘が負担にならない訳がない。
相手の嫌がる事をやり、自分に有利な局面を作るのは戦いの定石だ。
卑怯上等。
俺みたいな弱者が、圧倒的な強者を相手に、絶対的な実力差をひっくり返して、本来からあり得ない筈のジャイアントキリングをやろうとしてるんだ。
手段なんて選んでられない。
勝つ為に、少しでも優位を取る為に、打てる手は全て打つに決まってんだろうが。
俺が欲しいのは正々堂々とか、誇りを駆けてとか、そんなお綺麗な勝利じゃない。
どれだけ汚くても、泥臭くても、ただ勝ちたい。
勝って、勝って、勝って、その果てにステラとの未来を勝ち取りたい。
ただ、それだけだ。
「おおおお!」
気合いを入れる為、少しでも敵にプレッシャーを与える為、雄叫びを上げながら首の道を駆ける。
老婆魔族が杖を振り、フィストが再び飛び上がって、ドラゴンゾンビは首を振り回した。
そして、フィストが空中で両の拳を構え、ドラゴンゾンビの残り二つの頭が俺にブレスの照準を合わせる。
フィストを上空に逃がした上で、こっちの足場を揺らして態勢を崩しつつ、遠距離攻撃で狙い撃ちにする戦法か。
露骨にアドバンテージを活かしてきたな。
それなりに有効な戦法ではあるかもしれないが、俺なら対処可能だ。
俺は足場の揺れる方向や速さを先読みし、適切な受け身を取りながら走り続ける。
首が上へ動けば、地を這うような体勢で重心を取りながら走り。
首が下へ動けば、喉の方へ移動して逆さ走りをするか、鱗を掴んで耐える。
遠距離攻撃も歪曲と斬払いで防ぎ、時には首の道の裏に隠れ、ドラゴンゾンビ自身を盾にする事で防いだ。
大事なのは、力の流れをよく見て、感じ取る事だ。
拳が振るわれる前には必ず肩が先に動く。
地面を踏み締めれば、その力は腰を伝って全身を動かす。
そういう力の流れが見えるようになれば、一番初めの予備動作から相手の動きを先読みできるようになる。
滅茶苦茶に振るわれる竜の首の動きを読む事もだ。
この感覚を掴むのに、夢の俺は十年以上の時間を必要とした。
そして、この感覚を極める事こそが、俺の剣術の極意。
最強殺しの七つの必殺剣は、例外である黒月を除いて、全てがこの感覚の上に成り立っている。
力の流れに逆らわず、そこに相乗りする事で敵の力を利用する『流刃』。
力の流れに寄り添い、僅かに干渉して軌道を歪める『歪曲』。
力の流れの淀みである綻びを突き、滅茶苦茶にかき乱して霧散させる『斬払い』。
残り三つの技も似たような理屈だ。
必殺剣の基盤となるこの感覚を応用すれば、揺れる足場を走り抜ける事くらい容易い。
だが、当然それだけでは勝てない。
敵は過去の英雄に、英雄すら屠る竜、そしてそれらを操る上位魔族なのだから。
唐突に、激しく動いていたドラゴンゾンビの首が静止する。
今までの暴れっぷりが嘘のようにピタリと。
そして、俺の前にフィストが着地して構えた。
どうやら、老婆魔族は小細工をやめて真っ向勝負を選んだらしい。
フィストが老婆魔族を守らなければならないのは変わっていないが、下手にアドバンテージに固執するよりはよっぽど良い手だ。
結局、こうなったか。
小細工を労しても、フィストを無視して老婆魔族を斬る事はできなかった。
だが、それでいい。
元々そこまでは期待してない。
比較的有利な戦場にフィストを引き摺り込めただけで充分。
老婆魔族との距離も大分縮んだ。
取れる優位は取った。
あとは、雌雄を決するのみだ。
「『黒月』!」
まずは走りながらの黒月で牽制。
避ければ後ろの老婆魔族が被弾する以上、フィストは防ぐしかない。
しかし、相手は英雄。
俺の貧弱な筋力で放った攻撃なんて全く効かず、片手で簡単にガードして封殺された。
お返しとばかりにフィストは左腕で軽い拳を放ち、それが飛翔する打撃となって俺に迫る。
それだけに留まらず、フィストの左腕が高速で動き、拳を連打。
高速の連続ジャブ。
それが全て飛翔する打撃となって俺に殺到する。
「速いな……!」
俺は歪曲連鎖で全ての打撃を防いでいくが、この距離でこの速度の攻撃を全弾防ぐのは言う程簡単じゃない。
剛力の加護という、他の武術系の加護と違って、技術ではなく身体能力の強化に特化した加護を持つフィストの力は、単純な肉体の強さでは剣聖スケルトンを超えている。
そんなフィストが、その優れた筋力の全てを速度と連射性に使って攻撃してくるのだ。
その様は、まさに拳の弾幕。
厄介じゃない筈がない。
あと言うまでもないが、一発でも直撃すれば即死だ。
威力より速度と小回りを取った軽い攻撃でも、当たれば俺は余裕で死ねる。
「ぐっ……!?」
それでも前へ進む事をやめなければ、当然防ぎ切れずに被弾する事になる。
相性の問題も大きい。
歪曲に対して最も有効な攻撃は、こっちの対応限界を越える手数での攻撃だ。
そして、刀よりも拳の方が回転数が速いのは自明の理。
直撃は意地でも避けてカス当り程度に抑えてはいるが、それでも体の芯に響くような衝撃が俺を襲う。
そうなれば痛みと衝撃のせいで動きに支障をきたし、隙が生まれ、その隙をカバーする為に体勢は崩れ、被弾数が増えていくという負のループ。
だが、前に進んでいる以上、フィストとの距離も、老婆魔族との距離も縮んでいる。
一方的に殴られるだけの時間はもうすぐ終わる。
「なっ!?」
そう思った瞬間、フィストが更に後ろへ飛んだ。
老婆魔族を巻き込みかねない危険を冒してまで、俺との距離を空けたのだ。
老婆魔族が驚いていない辺り、フィストの独断ではなく老婆魔族の指示だろう。
その証拠に、こっちを向いたドラゴンゾンビの三つの首が、拳の弾幕に足止めされてる俺に向かって、ブレスを放とうとしている。
かなり危ない橋を渡る作戦だ。
手駒に戦わせ、自分は安全な所から高見の見物を決め込むような老婆魔族に、こんな事をやらかす度胸があったとは。
数々の修羅場を越え、数百年の時を生き続けたという歴戦の魔族を、どうやら俺は侮ってたらしい。
どうする。
避けるのは難しいが、できなくはない。
こっちも一旦後ろに下がって拳の弾幕の圧力から逃れ、首の道の側面へ行って他の方向からのブレスやフィストの攻撃を遮断。
鱗に掴まりつつ、残った俺に届くブレス一つを斬払いで防げばいい。
だが、それだとせっかく詰めた距離をみすみす空ける事になる。
そうなれば、今までのダメージを引き摺った状態で、また一から拳の弾幕に再チャレンジだ。
窮地を逃れる事はできるが、不利にしかならない。
「だったら……!」
まだ体が動く内に突っ切るしかない。
ここは引いちゃいけない場面だ。
逆境を切り開け。乗り越えろ。
前進だ。
「ああああ!」
俺は前へと進む足を速めた。
そんな事をすれば、拳の弾幕の圧力は凄まじい事になる。
傷が増え、ダメージが蓄積していく。
このままだと致命傷を食らうのも時間の問題だろう。
運良く耐え抜いたとしても、ブレスの攻撃範囲から逃げ切れなければ、どの道お陀仏だ。
だから、今ここで技を進化させる。
人を最も成長させてくれるのは困難であり、逆境であり、強敵だ。
困難を乗り越える為に試行錯誤し、逆境を切り開く為に力を磨き、強敵を倒す為に強くなる。
人は強く強く必要に駈られる事によって、死に物狂いで進化を掴み取るのだ。
さっき中規模ブレスを斬払いで防いだ時もそう。
俺は絶対絶命の窮地を切り抜ける為に、普段とは比べ物にならない集中力を発揮し、技を進化させた。
今回もそれと同じだ。
さあ、アラン。
進化しなければ死ぬぞ。
拳の弾幕を切り抜け、ブレスの攻撃範囲から逃れて、フィストと老婆魔族の喉元に肉薄するんだ。
必要な技は『歪曲連鎖』。
飛翔する打撃を逸らし、それを他の打撃にぶつけて相殺しろ。
効率を上げろ。
一度の歪曲で、連鎖的にいくつもの打撃を巻き込め。
計算しろ、それを感覚で実践しろ、無駄を極限まで省け。
前へ出ろ。
━━研ぎ澄ませ。
「『歪曲連鎖』ァアアア!」
俺は走った。
拳の弾幕の中を、それを切り払いながら駆け抜けた。
後ろでブレスが炸裂し、その飛沫を剣聖スケルトンの和服が防ぐ。
そうして遂に、俺は再びフィストの眼前に立つ。
「フィストォオオオ!」
「『英雄の拳』」
体に染みついた感覚故か、小さくそう呟いてフィストが拳を振るう。
今までジャブに使っていた左腕を引き、それと入れ替わるように右腕でストレートパンチを繰り出した。
まるでお手本のような、無駄を極限まで削ぎ落とし、効率を極めた、美しいとさえ感じる一撃。
持つ加護が剛力の加護であるフィストに、加護による技術の補助はない。
つまり、これはフィスト自身が磨き上げた力。
拳の英雄が生涯を懸けて磨き上げた、至高の一撃。
俺はそれを真っ向から迎え撃った。
力の流れを読み切り、最適なタイミング、最適な体勢で拳に刀を合わせる。
それを受け流して右回転。
流刃により、フィストの右腕の外側から体を両断するべく刃を振るう。
「ッ!?」
しかし、フィストはそれを完璧に防いだ。
本当に完璧に、俺にとっては最悪の形で。
フィストの左手が、死角から繰り出された筈の刃を掴んでいた。
掌で受け、握り締めたのだ。
そんな使い方をしたせいで、フィストの嵌めていた無骨な手甲が、黒天丸の闇の力に耐え切れずにヒビ割れる。
その代わりに、フィストは黒天丸をガッチリと掴んで無効化して見せたのだ。
さすがだよ、英雄。
少し前までの俺なら、確実にこれで終わっていただろう。
夢の中の俺ですら、武器を失ったら何もできなかったかもれない。
「だがな」
今の俺には、二本目の刃がある。
俺は黒天丸を掴まれたとわかった瞬間、即座に手を離して黒天丸を手放した。
そして流刃の勢いのまま無手で回転し、その間に腰から一本の刀を抜く。
今の俺の相棒であり、あの剣聖スケルトンと斬り合ってみせた名刀『怨霊丸』を。
それを流刃の勢いに乗せて、渾身の力で振り抜く。
「オオオオオオオオオッ!」
フィストの右腕は拳を放ったばかり。
左腕は黒天丸を掴む為に使っている。
つまりこの瞬間、フィストの両腕は塞がっており、ガードは空いている。
その隙を、俺は見逃さなかった。
無防備なフィストの胴を怨霊丸が薙ぎ、その体を上下真っ二つに斬り裂いた。
「フィ、フィストォオオオッ!?」
老婆魔族が絶叫を上げ、数百年前の拳の英雄は塵へと帰っていく。
俺はそれを目に焼き付け、次の瞬間には老婆魔族に向かって走る。
彼をこんな風にした奴にトドメを刺す為に。
「な、なんなんだい、お前はぁあああ!?」
フィストを下げたせいで目と鼻の先まで近づいていた老婆魔族が、そんな絶叫を上げた。
俺がなんなのか、か。
俺はまだ何者でもない。
まだ何も成し遂げていない。
それでも、あえて言うのなら……
「俺は『剣鬼』アラン」
誰かがいつからか呼び始めた異名。
気になってリンに聞いてみたら、「修羅みたいに形振り構わず戦いを求めてるからじゃないですか?」という、なんともアレな答えが返ってきた、半分蔑称に近い呼び名。
『勇者』や『剣聖』みたいな立派な肩書きとは間違っても比べられない、仰々しいだけの俺の称号。
だが、それでいい。
いつの日か……いや、そう遠くない未来に、俺はこの異名を轟かせてみせる。
名前の響きに負けないような立派な男になって。
そして、『剣鬼』と言えばこう謳われるように。
「━━勇者の隣に立って戦う男だ!」
勇者の絶対的な敵である魔族に対して宣言するように俺の決意を叩きつけ、怨霊丸を振るう。
今度は縦に裂いてやる為の唐竹割りの斬撃。
それが老婆魔族の頭を叩き割る。
「ギャアアアアアアア!?」
しかし、老婆魔族はまだ絶命せずに悲鳴を上げた。
だから、俺はこいつが完全消滅するまで刀を振るい続ける。
縦、横、斜め、振り上げ、振り下ろし。
微塵切りにしてやった。
すると、いつしか叫び声は消え、バラバラになった老婆魔族の残骸が塵に帰っていく。
それと同時に、足場になっていたドラゴンゾンビもまた、その巨体を塵へと帰して消滅していった。
どうやら、術者を倒せばゾンビは消滅する仕組みだったらしい。
ドラゴンゾンビは昔の魔王のペットだったって話だし、あるいはそういう昔のゾンビで、老婆魔族の魔法によって腐敗を止められてる奴限定の現象かもしれないが、とにかく助かった。
俺は消えていくドラゴンゾンビから飛び降り、受け身を取って着地する。
そして、フィストに掴まれたまま置き去りにしてた黒天丸が上から落ちてきて地面に突き刺さったので回収。
これが無ければ俺は勝てなかっただろう。
怨霊丸といい、武器に感謝だ。
そんな黒天丸の入手もそうだが、今回の戦いで俺は大きく成長できたという自信がある。
剣聖スケルトン、老婆魔族、ドラゴンゾンビ、フィストと、立て続けに強敵が現れたのは、ある意味かなり運が良い。
こうして強敵という名の壁を一つずつ乗り越える事で、俺は強くなっていくのだ。
これからも似たような事を繰り返して、3年後までにステラの隣に立てる領域にまで辿り着く。
さしあたっては、街の方へ向かったツギハギ魔族を次の標的にしたいんだが……
「……疲れた」
さすがに、今はもう疲れ果てた。
限界だ。
そりゃ、剣聖スケルトン戦からぶっ続けだからな。
迷宮の帰り道で休憩は挟んでたとはいえ、それも徘徊するゾンビを警戒しながらの仮眠が精々。
一度宿屋に戻ってゆっくり休みたい。
地味に体もボロボロだし、自前の治癒魔法じゃ回復までに大分時間がかかりそうだから、できればリンに治してもらいたい。
とにかく、街に戻ろう。
その街をツギハギ魔族が襲撃中なんだが、それは剣聖がいればどうにでもなるだろう。
ああ、そういえば今戻れば剣聖の戦いを見学できるかもしれないのか。
よし戻ろう。
すぐ戻ろう。
そうして、俺は自分を大いに成長させてくれた亡者の洞窟に感謝を捧げながら背を向け、満身創痍の体を引き摺りながら街へ向かって歩き始めた。
ストックが尽きてしまったので、連続更新はここまでです。
戦闘描写くそキツイ……。