【新型コロナ】なぜ高齢者が重症化しやすい? 感染しやすさはどの年齢も同じだが、病状の進みやすさは年齢によって異なる
2020年10月13日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症者および死亡者は、世界共通で高齢者に多い。
感染した後の病状の進みやすさは年齢によって異なることが、北海道大学などが日本など3ヵ国を比較した研究で明らかになった。
一方、感染のしやすさは年齢によらず、どの年齢でも同じくらいの感染の可能性があるという。
感染した後の病状の進みやすさは年齢によって異なることが、北海道大学などが日本など3ヵ国を比較した研究で明らかになった。
一方、感染のしやすさは年齢によらず、どの年齢でも同じくらいの感染の可能性があるという。
新型コロナの重症例は高齢者に多い
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症例と死亡例は、高齢者に多くみられることが全世界で共通して報告されている。
北海道大学などは、COVID-19での重症者および死亡者が高齢者に多い現象について、感染症流行の数理モデルを用いて検証し、感染した後の病状の進行の進みやすさが年齢によって異なることを明らかにした。
なぜ高齢者が重症化しやすく死亡リスクが高いのか、そのメカニズムを解明することが急務となっている。そこで研究グループは、(1)高齢者は感染しやすい、もしくは、(2)感染のしやすさは年齢によらないが、感染した後の重症化のしやすさは高齢者ほど高い――という2つの原因を考え、どちらが正しいかを検証した。
研究は、同大人獣共通感染症リサーチセンターの大森亮介准教授、広島大学大学院医系科学研究科の松山亮太助教、青山学院大学理工学部物理・数理学科の中田行彦准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
新型コロナの死亡の年齢分布はどの国も変わらない
まず研究グループは、2020年5月時点で流行規模が大きく異なったイタリア、スペイン、日本の3ヵ国で比較して、死亡の年齢分布はほぼ変わらないということに着目した。
流行規模によらず死亡の年齢分布が共通している理由を解明するためには、どのような重症化および死亡の年齢依存性があるかを知る必要がある。
そこで、年齢別のCOVID-19の流行についての数理モデルを作った。この数理モデルでは、年齢による人の接触のしやすさの違い、COVID-19の流行による家庭外での行動制限などを考えた。
この数理モデルを、3ヵ国の死亡年齢分布のデータにあてはめ、年齢別の感染のしやすさを推定し、その推定値から新型コロナウイルスの重症化および死亡のメカニズムの可能性について検討した。
感染のしやすさは、年齢によらないことが明らかに
数理モデルにより、死亡率は年齢によらないが、感染のしやすさが高齢者ほど高いと仮定すると、重症化および死亡の発生が高齢者に偏る現象を説明できる。
しかしこの条件では、死亡の年齢分布は流行規模に大きく左右され、イタリア、スペイン、日本で観察された流行規模に依存しない死亡の年齢分布を説明できない。
一方、感染のしやすさは年齢によらないが、死亡率は高齢者ほど高いと仮定すると、死亡の年齢分布は流行規模にほぼ影響を受けないという結果となり、観察データと合致する。
さらに、(1)死亡率が年齢によらず一定、もしくは、(2)症状が出る率が年齢によらず一定という2つの仮定のもとで、数理モデルを3ヵ国の死亡の年齢分布のデータにあてはめ、感染の年齢別の感染のしやすさを推定した。
すると、どちらも年齢間で感染のしやすさは非現実的に大きく異なる推定値になり、この2つの仮定は妥当でないことが示された。
これらから、死亡率や症状が出る率といった病状の進みやすさは年齢によって異なることが、COVID-19の重症および死亡は高齢者に偏ることの原因になっていることが明らかになった。
出典:北海道大学、2020年
死亡率や病状の進みやすさは高齢者でより高い
感染のしやすさは年齢によらないが、死亡率や病状の進みやすさは高齢者でより高いことが解明されたことは、感染による死亡を未然に防ぐ手法を開発するために重要だ。
COVID-19以外の感染症に感染した経験から、COVID-19に感染しやすくなっているといった、感染のしやすさが年齢とともに異なるような状況も十分に考えられる。
感染のしやすさが年齢に依存しないことことは、重症化および死亡のメカニズムを解明するのに役立つ。「今後は病状進行の年齢依存性のメカニズムを解明し、治療手法を開発・発展することが期待されます」と、研究グループは述べている。
北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターThe age distribution of mortality from novel coronavirus disease (COVID-19) suggests no large difference of susceptibility by age(Scientific Reports 2020年10月6日)
関連ニュース
- 2020年10月13日
- 高脂血症治療薬「ペマフィブラート」に糖尿病網膜症治療薬の可能性 選択的PPARαモジュレーターに網膜神経の保護効果を確認
- 2020年10月13日
- 【新型コロナ】なぜ高齢者が重症化しやすい? 感染しやすさはどの年齢も同じだが、病状の進みやすさは年齢によって異なる
- 2020年10月09日
- SGLT2阻害剤「フォシーガ」が米国で慢性腎臓病を対象にブレークスルーセラピーに指定
- 2020年10月08日
- 日本の高齢者のインフルエンザなどの予防接種率は低い 「プライマリ・ケア」が充実すると接種率は向上
- 2020年10月07日
- 腸内細菌による食後血糖調節メカニズムを解明 糖尿病での免疫細胞の機能改善や腸内細菌の正常化が新たな治療法になる可能性
- 2020年10月05日
- 低血糖時救急治療剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」を発売 室温で携帯できる初の点鼻粉末剤 迅速な救急処置を可能に
- 2020年10月05日
- 「がんを抱える糖尿病患者の支援の実際と今後の課題」 第25回日本糖尿病教育・看護学会レポート(5)
- 2020年10月05日
- 「糖尿病透析予防指導管理料算定と遠隔モニタリングを用いた看護支援の工夫と成果」 第25回日本糖尿病教育・看護学会レポート(4)
- 2020年10月01日
- 糖尿病治療薬「メトホルミン」の発がんリスクを評価 55万人に1人ががん発症 NDMA生成の原因は?
- 2020年10月01日
- 服薬アドヒアランス不良の患者は1日の服薬回数が多い 2型糖尿病患者の経口薬の処方実態調査
関連コンテンツ
糖尿病情報スクランブル 新着記事
編集部注:
- 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
- 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2020 SOSHINSHA All Rights Reserved.