学術会議人事 誰が6人を外したのか

2020年10月15日 07時51分
 一体、誰が六人を外したのか。日本学術会議の新会員任命拒否問題。菅義偉首相は推薦名簿を見ずに特定人物を除外していた。任命拒否が「総合的、俯瞰(ふかん)的な観点」だったとの説明には無理がある。
 首相は内閣記者会のインタビューで、学術会議新会員の任命手続きについて、会議側が推薦した百五人ではなく、六人を除く九十九人が記載された内閣府作成の起案文書を、九月二十八日に決裁したと説明している。
 つまり、首相に名簿が上がった段階では、すでに六人が除外されていたことになる。加藤勝信官房長官は六人を除外した起案段階の人選について「首相が一つ一つチェックするのではなく、事務方に任せていた」と説明している。
 さらに、首相の決裁前に杉田和博官房副長官が首相に対して口頭で、任命できない人が複数いることを報告していた、という。
 首相官邸サイドは、こうした手続きについて「通常のやり方にのっとって作業が進められた」「最終的には首相が決めている」として、問題はないとの立場だ。
 日本学術会議法は、会員は同会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定め、政府はこれまでの国会答弁で、首相の任命は「形式的」なものと説明し、裁量の余地を認めていなかった。
 国会審議を通じて確立したこの法解釈を、政府は一片の内部文書のみで一方的に変更した。今回、六人の任命拒否を正当化するために挙げたのが「公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利」とする憲法一五条の規定である。
 しかし、首相が名簿を見ずに任命を拒否していたとしたら、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点」からの人選には程遠く、これまでの説明に疑義が生じる。
 さらに、六人の除外を決めたのが国民を代表する国会で選ばれた首相ではなく、国民による選挙を経ていない官僚だったとしたら、官僚の暴走ともいえる違法行為であり、憲法の規定に反する。首相は厳しく処断せねばなるまい。
 野党側は、杉田副長官を二十六日召集予定の臨時国会に出席させるよう与党側に要求した。与党側は応じるべきである。
 法律の解釈を巡り、政府が国会に諮らず、一片の内部文書で変更したことは、唯一の立法府である国会への重大な挑戦だ。与野党を問わず傍観は許されない。
 誰が、なぜ六人を外したのか、国会は国政調査権を行使し、真相解明を果たすべきである。

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