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 使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)を地下深くに埋める最終処分地をめぐり、北海道の神恵内(かもえない)村と寿都(すっつ)町で、3段階の選定過程の最初に当たる「文献調査」が実施される見通しとなった。

 調査では火山や地震、地質などの資料を用いて、地層の変動や鉱物資源の有無などを調べる。事業を進める経済産業省原子力発電環境整備機構(NUMO)は、知事や首長が反対すれば、次の段階には進まないとしている。北海道の鈴木直道知事はすでに反対を表明しており、先行きは見通せない。

 まずは国の基本方針にも示されている通り、情報公開や透明性の確保を徹底し、地域全体の声を聞きつつ議論を深めることのできる環境づくりが重要だ。

 3年前に発表された「科学的特性マップ」では、火山に近い神恵内村の大半は「好ましくない特性」がある地域に分類された。寿都町は「好ましい特性」とされたものの、活断層帯が町を縦断していることがわかっている。こうした懸念も踏まえ、より慎重な分析が必要だ。

 放射能が十分安全なレベルに下がるまでには数万年を要する。国の原子力委員会の依頼で、8年前に日本学術会議が発表した報告書は、それだけの長期にわたって地層の安定を確認するには、いまの科学や技術では限界があるとしたうえで、それを「明確に自覚する必要がある」と釘を刺す。万が一にもリスクを過小評価することがあってはならない。

 地元には、調査の進捗(しんちょく)や事業に関する情報を共有するための「対話の場」も設置される。原発に批判的な専門家の見方を含め、幅広く情報を提供し、住民の疑問に答える必要がある。

 朝日新聞は、実現の見通しのない核燃料サイクルを前提とした現行の処分計画には、根本的な問題があると指摘してきた。

 現在、経産省とNUMOは全国各地で「対話型」と称した説明会を開いている。「対話」といっても、出された意見は聞くが、計画や方針に生かしていく姿勢はみえない。自分たちに都合の悪い内容であっても、理があれば採り入れる柔軟さがなければ、国民の理解は広がらないと心得るべきだ。

 いうまでもなく、原発を運転すれば、処分すべき廃棄物は増えていく。学術会議の報告書は、最終処分の政策に対する批判や不信の根底には、廃棄物が無制限に増えていくことへの歯止めが利かなくなるとの危惧がある、とも戒めている。

 今の政策を続けるのか、原発依存からの脱却をめざすのか。処分地選びを進める以前の基本的な立ち位置も問われている。

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