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「液体金属(による熱伝導材)をどうしても使いたかった。それには相当な決意と準備が必要だった」――。米Sony Interactive Entertainment(SIE、ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が2020年11月に発売予定の据え置き型ゲーム機「PlayStation 5(PS5)」の機構設計・熱設計の責任者である鳳(おおとり) 康宏氏は、PS5を実現する上で重要な役割を担った技術への思いをこう語る。同氏は、PS2からプレイステーションの設計に携わっており、SIEが2020年10月7日に公開したPS5の分解動画では、自ら出演し、作業と解説を行った。
PS5ではメインプロセッサー(SoC)が発する熱をヒートシンクに伝える熱伝導材料(TIM)に液体金属を利用。この液体金属のTIMの採用がなければ、筐体(きょうたい)はさらに大きく、かつ高価になり、冷却ファンの音も大きくなっていたという。ゲーム時の冷却ファンの音は状況によって異なるものの、「PS5の方が総じてPS4よりも静か」(鳳氏)だという。
PS5には、光ディスクドライブを搭載したものと、非搭載の2機種があり、価格はそれぞれ499米ドルと399米ドルと、仕様に対して割安な値付けといえるだろう。この価格実現に、熱設計がコスト削減に大きく寄与した。本稿では、鳳氏へのインタビューを基に、その詳細について前編と後編の2回に分けて解説する。