新型コロナの吸入型ワクチン、ウイルス侵入ポイントで防御目指す
James Paton-
経鼻ワクチン接種が体全体に強力な免疫反応-ワシントン大の研究
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針を必要とせず低温での保管・出荷が不要になる可能性
実用化に最も近い新型コロナウイルス感染症(COVID19)ワクチン候補は腕に注射する形で開発されているが、研究者らは鼻や口といったウイルスの侵入ポイントでワクチン接種する方がもっと体を守ることができるのではないかと考えている。
従来型の皮下注射の代替として、スプレー型や吸入型の予防接種が米国や英国、香港で開発されている。ウイルスは鼻腔から体全体に拡散し、他の人々にも感染される恐れがあるため、侵入ポイントとなる鼻腔でのウイルス増殖を防止するのが目標の1つだ。実現すれば、経済や日常生活を一変させた行動制限から社会を自由にする重要な役割を果たす可能性がある。
初期のワクチン開発者の大部分は皮下注射を世界を病気から守るための最短ルートとして注目していたが、吸入型のワクチンメーカーは粘膜で覆われた肺や鼻、喉のユニークな特徴を重視する。この組織にはIgAと呼ばれる高レベルの免疫タンパク質が含まれており、呼吸器系ウイルスに対して高い免疫力を持つ。
彼らの理論では、こうした免疫力を活性化することで新型コロナウイルスが最も深刻なダメージを与える肺のより深い領域を保護できる。また、ワクチンが感染を阻止する可能性を高める可能性もあるという。
ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学の感染症専門医マイケル・ダイアモンド氏は「第1世代のワクチンは恐らく多くの人々を守るだろう。だが、第2、第3世代のワクチンと経鼻ワクチンが重要な要素になると思う。いずれは必要になろう。そうしなければ市中感染が続くだろう」と述べた。
ダイアモンド氏と同氏のチームは8月にマウスを使った研究で、鼻腔経由でのワクチン接種で体全体に強力な免疫反応が生じることを発見した。このアプローチは鼻と気道で特に効果的で、ウイルスが体内に定着するのを防いだ。
鼻腔内でのスプレー型や吸入型のワクチンは、実用面でも恩恵がある可能性がある。これらは針を必要とせず、低温での保管・出荷が不要になる可能性もあり、医療従事者が投与する必要性を減らすことができる。
メリーランド州に本拠を置くアルティミューンは経鼻ワクチンのマウス実験での良好な結果を受けて10-12月(第4四半期)にヒトを対象とした治験に入る計画。皮下注射型ワクチンを英アストラゼネカと共同開発する英オックスフォード大学や、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者もやや異なる吸入型ワクチンの研究を計画している。
原題:
Inhaled Vaccines Aim to Fight Coronavirus at Its Point of Attack(抜粋)