政府のコロナ対応、民間が検証 「場当たり的政策 積み重ね」
2020年10月9日 05時00分 (10月9日 15時23分更新)
新型コロナウイルス感染症への政府の取り組みを検証した「新型コロナ対応・民間臨時調査会」は八日、記者会見を開き、全国一斉の休校要請や緊急事態宣言の発出など半年間の施策を「場当たり的な判断の積み重ねだった」とする報告書の内容を説明した。危機管理体制の強化を求めたほか、政府として対応を検証する重要性を訴えた。
民間臨調によると、政府対応を総括する報告書は世界でも珍しいという。欧米と比べ死亡率や経済への打撃を抑えられたことは評価した一方、多くの施策が戦略的に練られておらず「今後も危機管理がうまくいく保証はない」と断じた。
四月に発出した緊急事態宣言には強制力がなく、安倍晋三首相(当時)は調査に「国民みんなが協力してくれないことには空振りに終わってしまう」と振り返ったという。検査拡大が滞った点や経済再開を重視する官邸と専門家の意思疎通の不十分さも書き込んだ。
人と人との接触機会を「八割」削減するとの専門家の意見を安倍氏が採用せず、諮問委員会の尾身茂会長との協議で「最低七割、極力八割」になったと紹介。緊急事態宣言の解除基準作りでは専門家案に安倍氏や当時官房長官だった菅義偉首相が難色を示し、幅を持たせる内容になっていた。
政府のデジタル化推進や、休業要請に応じやすいよう新型コロナ特別措置法を改正して経済的な補償措置を用意することなどを提言した。民間臨調は安倍氏や閣僚、官僚ら八十三人に聞き取り調査。報告書は八日、菅首相に手渡した。十八日に電子版、二十三日に紙の書籍として発売する。
新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調) 新型コロナウイルス感染症に対する政府の施策を民間で検証するため、独立系シンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブ(東京)が7月に設立した。委員長は三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長。委員は政策研究大学院大の大田弘子特別教授、早大の笠貫宏特命教授、中央大法科大学院の野村修也教授。
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