アベノマスク「失敗」、全国一斉休校「疫学的に意味なし」 対応の関係者証言
2020年10月9日 05時00分 (10月9日 15時17分更新)
「アベノマスクは失敗だった」「一斉休校は疫学的に意味がない」−。政府の新型コロナウイルス対策を検証した民間臨時調査会の報告書は、対応に追われた政府や専門家会議の関係者らの生々しい本音を紹介。政権内部や専門家会議との連携が不十分な中、場当たり的に政策が決定されていった過程が浮き彫りになった。
▼デジタル敗戦
一世帯当たり二枚配布された「アベノマスク」。使い捨てマスクが不足する中、厚生労働省や経済産業省と事前調整なしに首相周辺で決められた。配布に時間がかかったこともあり、国民からはマスクより緊急経済対策や現金給付を求め批判が続出。官邸スタッフは「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と証言した。
国民一人当たり十万円の特別定額給付金の支給でも、マイナンバーと金融機関口座のひも付けがなく時間がかかった。患者データの全国集計でもデジタル化が遅れ、日本の「デジタル敗戦」が露呈した。加藤勝信前厚労相は「デジタルトランスフォーメーションの遅れが最大の課題だった」と振り返った。
三月からの一斉休校では政権内の連携不足が混乱を招く事態に。二月二十四日の専門家会議記者会見での「コロナウイルスに対する闘いが瀬戸際に来ている」との発言を重く受け止めた首相は全国の一斉休校を決断した。事前に文部科学省や専門家会議への相談はなかった。専門家会議関係者は「子どもは感染源にほとんどなっていない。疫学的にはほとんど意味がなかった」と批判した。
▼ありがた迷惑
三月中旬以降、欧州で感染した人の流入が国内の感染拡大の一因になったとされる。専門家会議は三月十七日、水際対策の強化を求めたが、政府は当時の一斉休校に対する反発や批判の大きさに消耗、欧州旅行の中止措置は葬り去られた。「あの時、欧州旅行中止措置を取っておくべきだった。一番悔やまれる」(官邸スタッフ)。
専門家会議は密閉、密集、密接の「三密」の発信など感染拡大防止で大きな役割を果たすようになると、経済の維持を重視する政府からは「ありがた迷惑」(内閣官房幹部)な存在とみられるように。調査会は「専門家会議とより丁寧な対話を行い、その役割を国民にもっと明確に周知、理解させるべきだった」と指摘、決定プロセスと結果を検証できるような議事録を残すことも課題とした。
日本は想定外の流行に備えが不十分でその場しのぎの対応に追われたが、結果的に人口当たりの死亡率を低く抑えた。官邸スタッフは「泥縄だったけど、結果オーライだった」と実態を総括した。
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