休業支援金、企業が協力渋り支給3% 申請書は手当不払いの違法「自白」
2020年10月9日 06時00分
新型コロナウイルスの影響で休業を迫られたのに、勤務先から休業手当をもらえない中小企業の社員らに政府が支払う「休業支援金・給付金」の利用が低調だ。7月に申請受け付けが始まったが、支給額は予算のわずか3%ほど。申請書に「休業手当を払っていない」と記入するのを企業側が嫌うのが一因で、制度の見直しを求める声が高まっている。(岸本拓也)
◆5442億円、補正予算に計上でも…
コロナ禍で休業を指示された働き手には会社が休業手当を支払う義務があり、支払った企業には国が後から「雇用調整助成金」を支給する。しかし「資金繰りが苦しく、助成金を待てない」と休業手当を支給しない中小企業が続出。政府は休業支援金を導入した。
6月の第2次補正予算に5442億円を計上。だが支給額は予算の3.1%の約167億円(10月1日時点)、支給件数は1カ月最大60万件の想定に対し計約21万件にとどまっている。申請に協力しない企業が多いためだ。
申請書には原則①休業は会社の指示②会社は休業手当を払っていない、などを会社側に記入してもらう必要がある。だが「休業手当を払っていない」と書けば、会社側は「違法」を認めることになりかねない。
◆「休業は会社の指示ではない」
「休業はコロナが原因。会社の指示ではない」。東京都内に住む大学4年の男子学生(23)は実際にアルバイト先からこう言われ、休業手当の支払いはおろか、休業支援金の申請協力も拒まれた。バイト先は結婚式の2次会などを運営する都内の中小企業。3月から仕事がなくなり、月約10日の勤務で得ていた7万~8万円の収入が途絶えた。
「違法行為を『自白』させるような申請書がネックになり、協力したがらない企業がある」。休業支援金に関する相談を受ける労組「首都圏青年ユニオン」の栗原耕平事務局次長は指摘する。会社の協力がなくても申請は可能だが、その場合は労働局から問い合わせがあり、会社側が「休業指示はしていない」と答えれば、休業支援金は支払われない可能性が高い。
◆厚労省、手続き見直さず
厚生労働省の担当者は「休業手当を払っていないと答えても違法の根拠となるわけではない」と話す。だが都内の社会保険労務士は「行政指導のリスクがある以上、なるべく休業支援金を使わないよう助言している」と明かした。
厚労省は申請の受け付け期間を延長したが、手続きは見直さない方針。栗原氏は「会社が申請を妨害する悪質なケースもある」として「会社が休業を認めない場合でも、休業前の勤務実績などを踏まえて労働局が支給を判断してほしい」と訴えた。
休業支援金・給付金
コロナ禍で今年4月以降に休業を迫られたのに、休業手当をもらっていない人を救済する給付金。正規・非正規を問わず、一定規模以下の中小企業で働く人が対象で大企業の従業員は対象外。月33万円を上限に休業前の賃金の8割を支給する。利用が低調で、政府は救済の対象期間を当初の今年9月末から今年12月まで延ばした。申請の締め切りは4~9月分が12月31日、10~12月分は来年3月31日。
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