待遇格差判決 非正規差別を正さねば
2020年10月14日 07時58分
賞与や退職金…正社員と非正規労働者との間にある待遇差を高裁が「不合理」としたのに、最高裁は覆す判断をした。「同一労働同一賃金」の制度下では、もっと非正規への差別が正されるべきだ。
「私たち非正規を見捨てた判決だ」と原告の女性は言った。確かに旧労働契約法二〇条では、有期雇用による不合理な待遇の格差を禁じている。だが、問題は不合理な待遇差とは何か、その範囲もあいまいなことだ。
原告の一人は医科大でアルバイトとして採用された。一年契約の秘書で、教員のスケジュール管理などの事務を担当した。ほぼフルタイム勤務だったのにボーナスはなかった。
大阪高裁は「不合理で違法だ」として、「正職員の60%を下回らない」という賞与額も示した。だが、最高裁はこれを見直し、ボーナス分を棄却してしまった。「正規職員は業務内容の難易度が高く、人事異動もある」との理由だ。
別の原告らは地下鉄の売店で働く女性たち。契約社員で約十年も働いたのに退職金がもらえなかった。東京高裁は「長年の勤務への功労報償の性格があり、不合理」と判断していた。正社員と同じ算定法で少なくとも25%は支払われるべきだとも…。
だが、最高裁は「不合理とは言えない」と覆した。いずれのケースも格差是正に至らなかったのは極めて残念である。
法の趣旨は有期雇用か否かで労働条件に待遇格差を認めない。そのため雇用主側は労働者個人の実績や責任の重さ、転勤の有無などに応じて格差が生じる−そう説明したりする。最高裁判決はまさに雇用主側に立った見方だ。
だが、このまま非正規への差別が温存されていいはずがない。日本では非正規の賃金は正規の60%といわれる。フランスだと90%、ドイツだと80%とも…。少なくとも西欧レベルに賃金は引き上げるべきである。
退職金も「長期雇用への動機づけ」だと説明されたりするが、賃金の後払いの性格もあるはずだ。非正規雇用者数は約二千二百万人、労働者の実に38%だ。賞与や退職金ばかりか、夏季休暇など福利厚生にも厳然と差別があってはならない。
「同一労働同一賃金」の制度は、非正規労働者の待遇改善を図るための国の政策である。政府も企業も是正を進める責任を負っていることをかみしめてほしい。
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