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この作品「【単発】 「マスター、早く貴方に会いたい」」は「FGO」「twst夢」等のタグがつけられた作品です。
【単発】 「マスター、早く貴方に会いたい」/のんちまるの小説

【単発】 「マスター、早く貴方に会いたい」

13,428 文字(読了目安: 27分)

こんにちは、のんちまるです。FGOとツイステのクロスオーバーです。書きなぐりました。でも後悔はしてません。キャラヘイトなのでオールオッケーな方お願いします。ネタバレもちょっと含むのでそこはご理解よろしくお願い致します。

オリ主ちゃんはアルターエゴクラスのサーヴァントで、赤髪に赤目の死ぬほど美人な子です。マスターLOVEなのでかなり依存。捏造ありまくりです。すみません。

2020年9月26日 14:54
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「マスター、何処にいるの…………?」

目が覚めたら、見たことのないような不思議な光景が広がっていた。周りにはいくつもの棺が浮かんでいて、真っ暗な室内と相まってとても気味が悪い。
思わずマスターの名を呼んでしまったが、すぐにそれは無意味なことであったのだと理解することになった。

「…………私、異聞帯で━━━━━━━」

そう。確か、皆でやっと芽吹こうとしていた空想樹を切り落とした時。マスターの側におかしな気配を感じて、咄嗟に前に出たのだ。

そうして今、ここで目が覚めた。


「…………………ここは、何処……? いいえ、それよりもマスターは…………?」

ここが何処かなんて、どうでもいい。そんな事よりも、早くあの人の所へ戻らなければ。
いてもたってもいられなくて、私は暗く薄気味悪いその場所から走って、外に出た。












「あ、そこの人ー! お願い助けて! あの猫に追い掛けられてるの!!」
「…………? ネコ………」

外に出て、帰るために必要になるであろう霊脈地点を探していたとき、ふと女の子の声が聞こえた。そして此方へ走ってきている少女の後ろには、真っ青な炎を吐く狸のような動物がいる。エネミーなのだろうか。

「早く助けてよ!!」

少女の急かすような声に、少し違和感を覚えた。そもそも私も、英霊ではあるけれど女の子だ。同じ女の子に炎を吐く狸をどうにかしろと言うだなんて、少し自分勝手なんじゃないだろうか。
そう思ったけど、炎を見ていたら第五特異点でのマスターの火傷の怪我を思い出してしまって、無意識に体が動いていた。

「一度眠りなさい」

狸の額へと指を突きつけ、スキルを発動する。スキルは無事に狸へとかかり、辺りに広がろうとしていた炎は消えて、当の狸は眠ってしまい落ちそうになった所を、慌てて抱き止めた。

「━━━━猫ちゃん!!」
「え」

突如、ドンと力強く押されて、さっきの少女に狸を取り上げられた。
あれ? この子、さっき狸から逃げてたんじゃなかったの?
助けてくれと言われたから助けたのに、いったい何だと言うのか。少女は不意に後ろを向いたかと思えば、顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らしてきた。

「こんな可愛い猫に、何でそんな酷いこと出来るの!? それ、虐待っていうのよ!? さいってい!!!」

言ってる意味が、全く解らない。
押されて捻ってしまった足が動かずに呆然としていたら、何を勘違いしたのか少女が更に怒って、私の顔を思い切り叩いてきた。え、意味がわからない。

「━━━━━ああ、こんなところに居たんですか!! さあさあ、もう入学式は始まっていますよ! さっさと式典会場まで行って下さい!」

不意に、アスクレピオスさんの着けている仮面を顔上半分を隠すものにしたようなペストマスクをつけた変な男が現れて、そんなことを言ってきた。

何を、言っているのだろう。

入学式。式典会場。まるで私が何処かの学校の生徒であるかのようなことを言うその男に、恐怖心と嫌疑、それに拭いきれないような嫌悪感を感じた。
そしてその男は、足を捻って座り込んでいる私のことを心配することも無視することもせずに、無理矢理立たせて強い力で腕を引っ張ってきた。

「い、いたっ………! やめっ、止めてください!」

足も痛いが、何よりも捕まれた腕が痛い。いくら英霊であったとしても、今の私はマスターとのパスが繋がっているかどうかすらもあやふやなはぐれサーヴァントのようなもの。魔力も枯渇しているし、受肉化している状態にかなり近い。しかも私の姿は、少女の時のそれ。大人の男性の力に敵うはずもない。
私は爪が食い込んでタラタラと血が流れている腕を涙目で見つめながら、無理矢理引き摺られる形で不気味な会場へと連れていかれた。

「【この者の魂の形は………………一切の無である。】」
「やった…………!」

喋る変な鏡の前に連れていかれて、さっさと名乗れと言われた。でもマスター以外に真名を名乗りたくなくて黙っていると、私を押し退けて先程の少女が鏡に名前を言っていた。しかも中々酷いことを言われている筈なのに、当の本人は何故か喜んでいるのだから、本当にわからない。挑発的な顔で笑いながら此方を見てくる少女に疑問を抱きながらも、取り敢えずこれ以上あのペストマスクの男に押されないように、鏡の前に立った。

「【汝の名を告げよ】」
「…………………アルターエゴ」

通常の聖杯戦争では、召喚された英霊は皆クラス名を名乗るのだから、問題はないだろう。これは聖杯戦争ではないけれど、今敵味方の判断がつかないこの状況なら、私にとっては聖杯戦争と同義。
そっと目を伏せて鏡からの返答を待っていると、暫く逡巡するように唸っていた鏡が急に声を上げた。

「【この者の魂は厳格であり、また不屈である。そして慈悲深くもあり、熟慮の者のそれであり、また奮励にて形作られた存在である。━━━━━そして何よりも、高尚な精神を持っている。
よってこの者は全ての寮に相応しい。だがそのため、どの寮にも相応しくない!!】」

……………ごめんなさい、全く意味がわからない。


取り敢えず己もまた、貶されているのだろうか。何とも言えずにポカンとしていると、ペストマスクの男がまた強く腕を引いてきて私を突き飛ばすようにして離す。そして芝居がかった口調で「こんなの前代未聞」だとか「なんでこんなことに」とか言ってるけど、此方が言いたい。
そう思っていたら不意に、少女が腕に抱えていた狸が大声を上げて、青い炎を吐いてきた。

あぁ、だから連れてこない方がいいと、忠告したのに。

私の言うことなどを無視してその狸を連れてきた少女は、慌てているかと思えば少し嬉しそうにして口元をにやけさせている。

何が、面白いのだろう。

炎は当然ながら、火傷をするほどには熱い。少女が連れてきた狸のせいで人が怪我をしているというのに、何がおかしいのか。
私は少女に少し不信感を覚えたが、そんなことよりも目の前でお尻に火がついてしまった少年を見つけて、慌てて炎を消した。
少年は一瞬驚いたように大きな眼を真ん丸にさせたが、すぐに私を見るとニッコリと笑ってお礼を言ってくれた。

「お前が消してくれたのか? ありがとな!!」
「い、え…………。いいんです。それよりもお怪我はありませんか?」

お礼を言われたのは、この世界に来て初めてだ。少女を助けたときも誰かが今の炎に焼かれそうになってたところを助けたときも、お礼なんてされなかった。なのに、この人はこんなに自然に、笑顔で「ありがとう」と言ってくれるのか。
少年の眩しい笑顔にマスターを重ねながら、泣きそうになったのを誤魔化すように少しだけ微笑んで見せた。
少年は、ちょっと赤くなっていた。炎で熱くなったのだろうか。








「なんで、グリムを止めてくれなかったのよ!?」

少女に大声でそう叫ばれて、場の空気が一斉に変わったのを感じた。
その狸をここに運んできたのは、貴方なのに。私は怪我をした人たちを助けるのと炎を消すので精一杯だったのに。


貴方はそれでも、私が悪いというのね。




もしもマスターが此処にいたらと思うと、ゾッとする。


だって此処は、恐ろしいほど憎悪と嫉妬が渦巻いていて、そしてそれが全て向けられているから。


誰か、助けて。そう言いそうになって、慌てて口を押さえた。だけど、それでも泣きそうになってしまう。


「……………………マスター。私のマスター。早く、貴方に会いたい」

優しくてカッコよくて、それでも普通の女の子の貴方。私は、貴方のために、貴方の世界を救いたい。





だからマスター。もう少し。もう少しだけ、待っていてほしいの。

























必ず、貴方の━━━━━貴方たちのところに、帰るから。











━━━━━━━━━━━━━




「━━━━━やめてっ………やめてっっ!!!」


やめて、お願い、止めてください。

そんな声が届かなかったのか、それともただただ私の声を聞こえないフリをしたのか。
無惨にも、私の腰より長かった赤い髪は肩よりも短くハサミで切られ、そして変なローブの下に着ていた霊衣も切り刻まれてしまった。

「……………………なんで、こんなこと………」

涙は、切られた瞬間に止まっていた。マスターに綺麗だと褒めてもらって、メイヴちゃんたちと一緒にたくさん弄って遊んだ長い髪。メイヴちゃんもマスターも、私の髪を何度も褒めてくれた。それがとても、とても嬉しくて、ずっと大事にしていたのに……………………


「酷いもなにも。ここは男子校ですから。通うのであれば男装して頂かないと。その服も、すぐに性別がバレてしまうじゃないですか!
あぁ、身元も知らない怪しい女性を学園に置いてあげるなんて、私、なんて優しいんでしょう」





…………………ふざけるな。

そう思ったけど、目の前で床に散らばって踏まれている真っ赤な髪の毛を見ていたら、何も言えなくなっていた。

それでも、英霊としての力を使ってはいけない。例え大切な人たちに褒めて貰えた大切な髪を切られたとしても、例え自分の身体の一部を刻まれるくらい痛くても。

それでも、ダメ。マスターを、悲しませたくない。


学園長室という部屋から追い出されて、次に呼ばれていった少女━━━ユウを待つ。あの子も髪を切られるかもしれない。慌てて学園長室の扉を開けようとしたら、その前に中から人が出てきた。







ニコニコと笑うあの男と、長い髪と可愛らしいスカートをたなびかせて笑う、あの少女が。








プチッ。

胸の奥で、何かが潰れる音がした。










それから、数ヶ月が経った。
あの少女は監督生(?)として学園に通っていて、私は生徒だなんて名前だけの存在で、実質雑用係として生活していた。

何をしても、何をやっても、生徒としてはいれないらしい。
別に生徒になりたいわけではないけれど、これじゃあ私の髪も霊衣も、なんで切り刻まれたのかわからない。1日でやれと命じられた校庭全域の草むしりをしながら、思わずため息が出た。


最初の頃は、運良く見つけられた図書館でずっとこの世界についての勉強と、両立してもとの世界へと帰る方法を探していた。もともと要領はいい方だったから、この世界についての基本知識、同時に通わされてる学年で行う学習を全て理解して、後は全て帰り方を探すために図書館で缶詰めになっていた。なのに、マジフト(?)大会が終わりを迎えた後に学園長から無理難題を押しつけられた。学園全ての掃除とか、どこかの寮全域の清掃とか。それを1日で、しかも授業が終わった後にやれだなんて無茶苦茶だ。
図書館へは行けなくなって、よく会っていたあの人とも自然と会わなくなった。

正直一番キツかったのは本を読むことや勉強をすることよりも何よりも、少女のワガママに付き合うことだったのだが、定期テストが終わった後くらいからは基本的に付き合うことはなくなった。

だって、あの子たちは嘘ばかりつくから。
私がクラスメイトから「監督生を苛めるな」「いつも宿題押しつけてる」「監督生の物を盗んだ」「監督生を殴った」「監督生に酷いことをした」と言われて、私はそれから少女に押しつけられた宿題も都合のいいときだけ友達だからと言って頼んでくる雑用も面倒ごとも、全部全部知らないフリをした。

次の日、「監督生の宿題を捨てた」「男なら手伝うくらいしろ」と言われた。早朝寮の裏で宿題らしきものを燃やしていた少女を思い出して、頭が痛くなった。




魔力があると断言されたけれど、魔力のない少女と口の悪い狸と暮らすことになった。狸は初見の頃に私に眠らされたということを覚えていなかったらしく、何かと突っ掛かってきたり大勢の人間の目の前で馬鹿にしてきた。それは別によかった。だって、それだけなら、私は赦せたから。
でも、この前。何をされても何も言わなかった私を見て調子にのったその狸と少女が、私の大切なチョーカーと短くなっても髪に結んでいるリボンを燃やそうとしてきた。


私は、思わず魔力を使ってそれを取り返したのだが、その場所がいけなかった。


「お前!!! 監督生に何してんだよ!?」

彼女と中がいい男の子二人がやって来て、私の頬を殴った。そこは学校の廊下で、周りにはたくさんの生徒がいたから。彼女に馬乗りになってグリムを床に押さえつけた私(男)をみれば、一部始終しか見てない人たちは必ずそうするだろう。

だって彼女は、お姫様だから。


「エース! デュース! ふぇっ……ふえぇぇんっ! 怖かったよぉ………!!」

わざとらしく泣き真似をしていた彼女を宥めた男の子たちが、次の瞬間目線を鋭くさせて私に向けて魔法を使ってきた。反射で打ち消したものの、周りにいた先輩たちも此方に敵意を向けてくる。


全員、何も見ていなかったの?


魔法での私闘は禁止。さんざん言われていたことなのに、なんで全員私にペンを構えるの?

少し燃やされてボロボロになってしまったリボンとチョーカーが目に入って泣きそうになったけれど、それ以上は何も言わないで寮へと逃げ帰った。






プチ。プチ。
最近、この変な音が聞こえる回数が増えてきた。













私は、マスターが好き。でも、英霊の皆も好き。だけど、生きている人たちは嫌い。これは私の主観ではなくて、ただただ私という存在がそう在る必要があったと言うだけの、ただの修正力。無辜の怪物だなんて、よく言ったもの。それでも私は、人を愛していたの。だって、マスターと皆が守ろうとしていたものが、それなんだから。










だから、我慢したわ。
ずっと。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、ずぅっと、我慢したの。


髪を切られても。霊衣をズタズタにされても。馬鹿にされても。殴られても。蹴られても。物を壊されても。何を押しつけられても。濡れ衣を着せられても。言われようのない罪を暴かれても。私の存在を否定されても。


全部全部、赦したわ。だって、マスターはきっと、それを望むから。皆はきっと、そうするから。だから何をされても我慢したし、笑顔でいたの。だって、メイヴちゃんもエリちゃんも王様たちもマスターも、私の笑顔を可愛いと言ってくれたから。

だから、良かったの。顔を馬鹿にされても。だって、私の本当の顔は、マスターと皆だけが知っていればいいんだから。

綺麗だと、美しいと言われて、それでも酷いものだと思ってた。霊基再臨して取られた目隠しから見えた世界が眩しくて、でも私みたいなのが見ていいものじゃないと思って隠した顔を、皆は綺麗だと言ってくれた。嬉しかったの。マスターが私に、「綺麗すぎて心配だから、やっぱりちょっとだけ隠そう」と言ってくれて、シグルドさんがルーン魔術を付与した眼鏡を作ってくれて。ブリュンヒルデさんとエルキドゥと一緒に花を摘んで、子供のサーヴァントの皆でマスターとマシュ、ダヴィンチちゃんとスタッフの皆に花冠を作って、皆で笑いあって。

嬉しくて、嬉しくて、思わず泣いてしまったの。


全部、綺麗で美しくて、素晴らしい日々だった。生前では到底理解できなかった、暖かい世界がそこにあったの。

皆の幸せのためなら、なんでも出来ると思ってたの。


















だから、ごめんなさい。私にはやっぱり、出過ぎた幸せだった。望んじゃいけなかった。叶えちゃいけなかった。私は、わたし、は━━━━━━━━━━










「返して!! やめてっ! 返してっっ!!!」
「アハハっ! ピョンピョンしててウケる~! トビウオみてぇだねぇ。でもぉ、男がリボンつけるとかキモくなぁい?」

放課後に呼び出された校庭に行くのを渋っていたら、不意に後ろから押されて頭を何かの角に打ってしまった。その隙に髪を編み込んでいたリボンを取られて、思いっきり顔を殴られた。サーヴァントにだって、痛みはある。魔法で強化されているらしいその手を見て、思わず生前のトラウマがフラッシュバックした。

「お願いっ!!! 大切なものなの!! 返してっ!!!」
「アハハっ! やーだ! ………ていうかぁ、お前は小エビちゃんにそう言われて返したのぉ? 返してねぇんだろ? じゃあ、こうなるのは当然だよねぇ?」




「━━━━━━━━━━━━━━━━━ぁ」




燃えていくリボンが、目に写る。マスターに貰った、大切なもの。よくエルキドゥとお揃いの髪型にして遊んでいた、二対のリボン。全部燃え尽きたのを呆然と見るしか出来なかった。私は今、私のリボンを燃やした男に蹴られているから。

「こらこら、フロイド。それ以上やってしまうと死んでしまいますよ」
「えぇー。でもさぁジェイド。こいつ、小エビちゃんのこと虐めたんだよ? 普通にこうされて当然じゃね?」
「まぁ、そうですね。………だから、そう。次はそのボロ雑巾のような方がもうひとつ大切にされているそのチョーカーを燃やしてはいかがでしょう?」
「あっ。めっちゃナイスアイディア~!」

そう言って、首に着けていたチョーカーもそのまま燃やされる。首がチョーカーごと燃えていくのを感じながら、生前の死因と、マスターと出会った時のことを思い出した。
このチョーカーは、生前から着けていたものを女子サーヴァント皆が可愛らしく加工してくれたものだった。よくあの少女に奪い取られたりしたけれど、すぐに取り返していた。それほどには、大事なもの。



それも、首と共に燃やされた。喉が痛い。でも何よりも、心臓が。心臓の奥が、とても痛いの。


「━━━━━ヒュー………カッ………ゴホッ!!」

息すらも満足にできない。心底愉しそうに、まるで自分たちが正義だと信じて疑わないようなその人たちが、悪魔に見えた。

そして、いつの間にか辺りに集まって私たちを取り囲んでいた人たちが、口々に声をあげる。

「当然の結果でしょ」

「監督生を虐めたんだ。これくらいされて当然だ」

「虐めだなんて……。君には心底幻滅したよ。すぐに首をはねてしまおう」

「リドル。こんな奴にユニーク魔法を使う価値すらないさ。魔力と時間のムダだ。」

「そーそー!#監督生ちゃんを虐めた犯人 #撃退完了 #当然の報いだよネっ! ………っと! はい、マジカメアップ完了ー!」

「はっ。弱ぇ草食動物虐めて楽しかったかよ。お前のことは入学式当初から気に入らなかったが、あの時に先に消しとくべきだったな。ほらよ、お前が監督生にしたこと、そのまんま返してやんよ!」

「うっわー、痛そー。レオナさんそんな思いっきり殴ったら顔がもう戻らなくなるッスよ? …………ま、別にいいッスけどね。どうせパッとしない顔してるし。監督生くんの可愛さに嫉妬して~とか、どんだけクズなんすかアンタ。オレらがアンタみたいに性根が腐ってるやつ相手にするわけ無いでしょ」

「……………………」

「おやおや、最早顔が原型を留めていないですねぇ。お望みなら契約しますか? まぁ別に元に戻ってもあまり特別に変わりはしないでしょうが。それだけ酷いお顔をしているとご自覚しています? 流石、性格が歪みきっている人は顔も汚ならしいのですねぇ。」

「ほんと、汚いわねぇ。見てるだけで気持ちが悪いわ。監督生の性格を見習ったらどう? 少しはその歪みきった顔、マシになるんじゃなぁい?」

「おいおいヴィル、それは無理な話というものさ。だって今日、彼はこの学園から私たちが強制的に退場させるのだからね。」

「監督生サンを虐めるとか………ほんと最低」

「『うわぁ、まさか三次元でこんなことするとか………普通に痛いっすわぁ。あ、ちなみにこれ今学園中に生放送してるから。これで学園生活も社会的にも終わりましたなww乙wwwwww』」

「……………………?」



………………………………………………………………………。





「ていうかぁ、この眼鏡うざぁい。アズールみたいだから取れよ。」

殴られて眼鏡を弾き飛ばされ、痛みで顔をおさえた。向けられる嫌悪の瞳から己を守るように下を向くと、不意にざわついた声が辺りに響く。

「学園長…………」

後ろにあの少女を伴った学園長が、ツカツカと此方に歩み寄ってくる。グリムとかいうあの狸は私を睨んできていて、今にも炎を吐き出さんばかりだ。
学園長が顔をおさえて踞る私の側に来ると、まるで戦争で勝利を宣言するかのように、大きな声をあげた。

「貴方を本日をもって、この学園から退学させることにしました。さっさとこの学園から出ていきなさい。」

後ろでは、ニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべる彼女。こんな女が、“可愛い”なんて。キラキラとしているマスターとマシュの笑顔を不意に思い出して、苦笑する。この女と比べることすら、烏滸がましい。私のマスターとその初めのサーヴァントは、こんな女より…………この学園の誰よりも美しくて、気高い。

渇いた笑いがこぼれたその時、彼女は手に持っていた綺麗なペンダントをあからさまに此方に見せびらかすように取り出したあと、そのまま床に叩きつけてその足で踏み潰した。あれは、私の本当に大切な━━━━━唯一のもの。

ああ。それすらも、貴方たちは壊してしまうのね。




不意に口からある言葉がもれでた。




「マスター……………………。早く、貴方に会いたい。」


「…………帰りたい」


プチプチと心臓の奥からそんな音が聞こえて、逆におかしくて笑い出す。すると彼女の周囲に侍っている男たちが私に怒ったような視線を投げ掛けてきて、また殴ってきた。

「はぁっ!? てめぇっ!! 監督生だって帰りたがってるのに、なんでお前みたいに監督生を傷つけたやつが━━━━━━━」
「帰りたいのは監督生の方だろ! あんだけ監督生のこと虐めといて何言って━━━━━━━」
「監督生さんを襲った、とも聞きましたが。まぁどちらにせよ、五体満足でこの学園から去れるなんて思わないことです━━━━━━━………ね…………」









「……………………………………………」



大切なもの、全部壊されちゃった。ああ、おかしい。おかしいわ。あんなに我慢したのに。あんなに頑張ったのに。あんなに心を壊したのに!!!!





プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチ!!!!!!





音が止んで、漸く私は笑顔を消した。




「……………………え………おん、な…………?」
「なんで…………だって………え?」


もう、顔を隠す必要もない。真名を隠す必要もない。己を隠す必要もない。全てを隠す必要もない。

だって、もう全部、どうだっていいんだもの。


「アハハ、アハハハハハハハハハハハハ!!」











━━━━━全部全部、消してしまおう。





「もういいわ。もう充分よ。たくさんの憎悪をありがとう。これで“わたし”はやっと、本来の姿に戻れるのだから。」


人間を憎んで、神を憎悪する。それこそが、わたしの無辜。神のために人が捧げた“生け贄”の集合体。その疑似サーヴァント。


「そう、そうよ。わたしは人間のそのエゴから生まれたの! 人間が目に見えない神に祈るために殺された、哀れで無垢な人柱。それがわたしよ。だから、貴方たちの自分勝手なエゴのおかげでようやく思い出したの。」






わたしは人間を殺すのが、大好きなんだってこと。



あからさまに慌てふためく彼らを見て、ニッコリと口元が歪んでいくのを感じる。マスターのために、皆のために抑えていた、私の別人格。そもそもの概念から外れて作り上げた方が“私”ではあるけれど、それでもやっぱりこの高揚感がいと━━━━━━━━━━━━あれ?


「…………マスターって、だぁれ?」

ああ。ダメ。ダメよ。ノイズがかかって何も聞こえない。何もわからない。なんでわたしは怒っていたの? いいえ、楽しんでいて━━━━━でも涙が━━━でも心臓が………………………………















あれ?









心臓の奥が空っぽになってしまったかのように、空虚感があった。だけど、それが心地いい。何も考えられなくて、何も思い出せなくて、ただ人間と神様への憎悪心だけに満たされているこの心が、何よりも愛しいの。


「…………では、さようなら皆さん。皆さんにとってわたしは悪役なんですものね。悪役は悪役らしく、この世界を全部ぜーんぶ壊して消して、最後には笑顔で殺してあげます。」

そう。それがいい。だけど、おかしいわ。なんで今まで、こんな簡単なことをしなかったのかしら。何のために我慢してたの? 何のために笑っていたの?










そうして不意に、一人の男がその足で踏み潰している“モノ”が、目に入った。


「…………………………………………」

再臨した姿へと変わっていくなかで、己の口から自然と宝具の詠唱が流れていく。


「スケープゴート、スケープゴート。叶わぬ願いを望みましょう。明けない夜を。凍える天を。落ちゆく星を。沈む方舟(ふね)をも贄として。時の刻も、壊してしまえ。
━━━━━さぁ、共に地獄へ参りましょう!」


世界が崩れて、地獄の底を模したような異空間が現れる。懐かしい懐かしい、わたしの愛する地獄の底。神に供物として捧げられた成れの果てが、ここにある。さぁ、さぁ。どうぞご覧になって? わたしの大好き《大嫌い》な場所を!!


「オーバー………ブロット…………!?」
「いいえ、これはそれの比では………!! 今すぐ止めなさいアルターエゴさん! すぐにでも━━━━」

「あら、嫌な人。わたしにあれだけ酷い仕打ちをしてくれたのに、もう忘れてしまったの? わたしだって、何度も言ったわよ? 『やめて』『お願い』って。でも、貴方たちは言ったわよね? 『やめるわけない』って。
なら、わたしもそうするわ! だってわたしは人間のエゴからできた存在だもの。貴方たちのエゴはわたし。我儘も傲慢も大歓迎! 全部全部、愛してあげる!」

生け贄にされた存在だからこそ、わたしは貴方たちを愛してる。貴方たち《人間》に何度も何度も何度も何度も殺されたからこそ、愛しいの。だってそれがわたしの、存在意義だから。


『━━━。そんなこと言わないでよ。それよりも、一緒に世界を見てまわろうよ。大変な旅ではあるけど、それでも君に力を貸してほしい。だからお願い。一緒に戦ってほしい。』




……………………これは、誰かしら。変なの。わたしにこんなこと言ってくれる人なんて、いないのに。


視界が開けていって、ついには学園が真っ黒なドロドロとしたものに包まれて消えていく。全部消えていこうとしたとき、不意に“わたし”が入れ替わって、涙が出てきた。

「………私を心配してくれたあの子たちには、申し訳ないわ」

元気な少年と、理知的な少年。彼らは最後まで、私を心配してくれていた。それだけが、心残りかもしれない。









あぁ。私………わた、し………………………………






「………ごめんなさい……ごめん、なさい…………。私、約束………破っちゃった…………」

マスター。マスター。マスター。マスター。貴方の顔が、思い出せない。会いたいのに、名前を呼びたいのに、私にはその資格すらない!!!






「━━━━━━………ますたぁ…………………早く、貴方に…………会いたかった」


ごめんなさい。貴方が悲しむことを、私はしてしまった。我慢できなかった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。



















あら? おかしいわね。わたし、何を口走っていたのかしら。





「━━━━━━━━━━━どうだっていいわ。全部全部、一緒に消えてしまいましょう」















「━━━━━━━━━━━━“コノハ”!!!」






黒い泥に飲まれた私の上から、貴方の私を呼ぶ声が聞こえた気がした。















━━━━━━━━━━━━


オリ主(コノハ)
→ずっと我慢してた。人間からの仕打ちには慣れているつもりだったけど、トラウマを刺激されて発狂寸前。自分と大切な皆を繋いでいたモノを壊されて今度こそ壊れた。実際は最初から壊れていたのをマスターと他の英霊たちが修復していってくれていただけだから、もとに戻っちゃっただけ。二重人格系サーヴァントで、神のために人間に殺された生け贄の霊が融合した英霊のため、人格がグチャグチャ。マスターとマシュ、カルデアスタッフ以外の人間を『愛してる』とは言うけど、完璧に嫌悪してる。
エルキドゥと中がいいのは、同じ神性特効持ちなのと“作り物”だから。マスターと英霊大好き。正直生きてる人間に興味は無いし逆に概念的には憎悪してるので関わろうとしなかったらこうなった。愛してるって言ってるけど、本能的にはずっと愛してほしいと思ってる。第三のビーストのLとRが融合して一つになった時に、ビーストの幼体として特異点を作ったらマスターに会った。完全なビーストじゃない。実は神様系サーヴァントとは良好な関係だったりもする。


ツイステ側
→悪女にまんまと騙されたけど、普通にクズい。この後どうなったかはわからない。スカラビアの二人と妖精いっぱいの寮、それと狼と機械の子はオリ主がやってないことを知ってたけど、一足遅かった。オリ主がツイステ側に最初に髪切られたりしなかったら、普通に愛されだった。髪切った学園長は普通にオリ主の強すぎる力を見て危険だと思ったから酷い扱いをした。それでも酷い。


悪女
→真性のクズ。悪女ってなんだろうと瞑想してたら出来上がった。正直こいつはバカだと思う。


カルデア側
→謎の特異点発生によって修復しに行ったときに、聖杯を持ったオリ主に会った。名前が出てきた英霊はその時に同行していたメンバー。ビーストの幼体として牙を剥いてきたオリ主にマスターがあの言葉を伝え、無事に特異点は修復。そしてオリ主もカルデアに召喚された。
実は何かの力に邪魔されてツイステ世界に行けなかっただけで、全員オンラインでオリ主の生活を見てた。オリ主がマスターたちのためにと自分に言い聞かせる度に泣き叫んだし、オリ主を殴った奴らと悪女にキャスター勢と神様たちは呪いをかけてた。オリ主がついにぶちギレて宝具開放にて自分の陣地を作成したことにより、やっと繋がる。壊れてボロボロな状態に戻ってしまったオリ主を呼んだのは、大好きなあの人。


















終わり!!!

コメント

  • 星屑の欠片

    とても面白いです!コメントで色々と言われてるようですが、全て貴方が考えたネタでしょうか??

    2日前
  • 小鳥遊 昴

    二次創作作品なのでオリジナルタグをご自身で削除してください。

    9月28日
  • 秋雨くらげ

    ↓あのお話ですよね?私も覚えがあります、ツイステの二次創作は数え切れない程あるから‥‥被りはあるとしても、似ていますよね‥‥

    9月28日
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