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マリリン・モンローの野心 [読書]

マリリン・モンローの若い時の写真を見ると、
赤ちゃんの写真を見たときと同じ気分になる。
ふっくらした、かどのないかわいらしい笑顔に、
見ているこちらも、つい笑顔が出てしまう。
いつまで見ていても、飽きない。


マリリン・モンローの生涯を書いた本を読むと、
彼女の全身は、整形手術で痛めつけられていて、
ブロンドも髪も、薬で脱色していたので、
たぶん、かなり痛んでいたはずだ。
体毛すらも生まれつきの金髪女性らしくみせようと、
脱色していたのだ。
身体の内部も、生理痛が酷くて、精神が不安定で、
睡眠薬を飲まなければ眠れない。
心も体も、ぼろぼろだったのだ。


ところが、カメラの前に立つ彼女は、
つま先に負担のかかるハイヒールに、
身体にぴっちりした洋服を着て、
今のラフな服装からすれば、
それらすらも、苦痛のもとでしかないだろうに、
見る人を、芯からとろけさせてしまうような、
うっとりするきれいな顔をして、
笑えば、まるで天使のようにあどけないのだ。


その舞台裏を知ってしまうと、
人間はこれだけ、人の目を欺けるのだ、
という見本を見せられているような気が、
しないでもない。
それで、腹が立つならいいが、
ああ、かわいそうにとしか思えない。


生い立ちから、突然の死まで、
あまりに悲惨な人生なので、
彼女の人生を描いた本を読むと、
決まって気が滅入って、暗い気持ちになる。
なのに、新真実! とか、
これこそが真相なのだ、といった宣伝文句で、
新たな本が出ると、ついついむさぼり読んでしまう。


わたしが読んだのは、
『マリリン・モンロー』亀井俊介 岩波新書
これは、入門書みたいな本で、まったく何も知らない人用の本、
少しでもマリリン・モンロー伝説を読みかじっている人には、物足りないだろう。

マリリン・モンローの暗い部分を暴いているのは、
この2冊、読みでがある。
マリリン・モンローにロマンチックな、淡い恋心を抱いている人は、
近づいてはいけない本でもある。
『ブロンド ―マリリン・モンローの生涯 』上下
ジョイス・C・オーツ著 古屋美登里訳 講談社 2003年刊
『マリリン・モンローの真実』上下
アンソニー・サマーズ著 中田耕治訳 扶桑社 1988年刊


他に、女性作家が、彼女の生涯を小説にしたのを
読んで、これが一番の傑作だったのだが、
パソコンで1991年から記録している読書カードを、
繰り返し見返しても、それがなんという小説なのか、
書き記したものが見つからない。


ところが、それだけではない。
上記の3冊は、確実に読んで『マリリン・モンローの真実』は、
母親が読むというので、田舎に送り、
それが本棚にあるのを先日も見てきたし、
岩波新書は、いまだに自宅の本棚にあり、
講談社の本は、買わずに図書館で借りて読み、
自分でももの好きだなあと思いつつ、読んだのを憶えており、
さらに、連れ合いが友人からもらってきた、
「いらないというのに、持ってけというから」
と、自分の趣味ではないことを、やけに強調した
『マリリン・モンローの写真集』まであるのに、
マリリン・モンローに関する本の記述は、
わたしの1970年代からある読書ノートや、
パソコンのカードに、上記三冊を含めて、
一切存在していないのだ。


週刊誌とか、雑誌の類は、読書ノートに書き込まないが、
どうやら、マリリン・モンロー関係は、雑誌扱いしたらしいのだ。
ええっ、と自分でも驚いている。
しかし、評伝でなく、わたしがぞくぞくした小説まで、
その感触と、本のイメージが浮かぶのに、
作者と、本の題名がまったく、空白のままだ。
日曜日はまる一日、それらの痕跡を捜してむなしく、終わった。
見つからないとは、どういうことだろう。
それとも『ブロンド・・・・・』がその本だったのか、
なんだか狐につままれたような、不思議な気分。
つぎからつぎへと本を読んでいるから、記憶がごちゃ混ぜになってる?


本が手元にないので、具体的なことが書けないのだが、
マリリン・モンローが、ケネディ大統領やその弟に接近する
あたりから、わたしは彼女にうんざりしてしまった。
悲惨な人生をさらに悲惨にする彼女の貪欲な性格。
最初は同情し、どん底から這い上がるヴァイタリティに
拍手を送るが、やがて、ついていけなくなる。


彼女は、欲張りなのである。
彼女が求めているのは、名声なのだ。
悲惨な生い立ちとそれまでの人生から来る劣等感を、
穴埋めして、お釣りがくるような大成功なのだ。


自分が有名人でありながら、有名人病にかかっている。
そういう男性を手に入れて、
世間の評価をひっくり返したい、
自分の能力以上のものを、彼女は求め、破滅した、
というふうに、これらの本を読んで、わたしは感じた。


彼女は外見以上に頭のいい女性だったが、
心を磨くことをしていない。常に心が空虚なのだ。
愛を求めて、愛することを学ばない。
外側は女だったけれど、なかみはまるで男だった。


男がみなそうだというわけではないのだが、
外見とは似ても似つかない、強固な野心を、
まるで、男だと表現する以外に、
ちょっと表現のしようがないのだ。


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コメント 2

Sho

昨日スーさんがあげておられた伝記、「よみたいなあ・・」と思っているものが多かったのです。
マリリン・モンローは、確かにあかちゃんみたいにぷよぷよとあどけなく
見ていてあきませんね。
でも、つねに「悲しみ」が付きまとってる感じがします。
by Sho (2007-05-22 09:35) 

NO NAME

モンローファンとしては 未だに彼女を誤解しているひとが沢山いるのが悲しい。
幼少時代も決して言われるような悲壮感漂うものでもなかったよう。
モンローが来日したとき、実際彼女に接した人々の声を聞いたこと、読んだことはありますか?

それこそ真実のマリリンだったのではと思います。
彼女の残したコメントにはこうあります

 お金も 名声も いらない
 




by NO NAME (2008-04-23 23:12) 

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