原因はギャンブル依存症

公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会・田中紀子氏の、『使途の一つがギャンブル』と記述してある事件の一連のツイートである。田中氏は著書でも『使途の一つがギャンブル』の事件のリストをまとめている。ここで疑問が湧いてくる。




田中氏は、どのようにギャンブル依存症と断定したのだろう?

田中氏は精神科医でもカウンセラーでもない。ましてや、接見もしてない。ニュース記事に『使途はギャンブルなど』と記述してあればギャンブル依存症と断定してしまう。



依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク

田中氏は『依存症問題の正しい報道を求めるネットワークの発起人の1人』である。他の発起人には、『筑波大学・医学医療系社会精神保健学教授・斎藤環氏』『国立研究開発法人・国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所・薬物依存研究部部長・松本俊彦氏』などの錚々たる顔ぶれである。外部協力者には『シノドス編集長・評論家・荻上チキ氏』もいらっしゃる。

同ネットワークのウェブサイトの『当団体の理念と目的』には、こう記述してある。


私たちが見過ごせないと感じる問題報道がなされたとき、協議し、改善を求めていくことが、このネットワークの主な活動です。(*1)

依存症問題においては誤解や偏見、中傷をまきちらすことが決して珍しくはありません。(*1)

このように、高尚な『当団体の理念と目的』があるのだが、それに反する田中氏の一連のツイートは、ギャンブル依存症の誤解や偏見を撒き散らしていると言っても過言ではない。その理由は、被疑者がギャンブル依存症と判明していない事件を、被疑者はギャンブル依存症だと断定するのは、ギャンブル依存症者は犯罪者であると言う『スティグマ』であるからだ。

田中氏は、このツイートを依存症者がどのように捉えるかを想像できないのだろうか。



ダブルスタンダード


「薬物使用者=無差別殺人を犯す極悪人」であるかのような誤解や偏見を与えました。(*2)

田中氏はブログエントリーでこのような表現で批判をしているが、田中氏の『使途の一つがギャンブル』と記述してある事件の一連のツイートと照らし合わせると

「ギャンブルをする人=あらゆる事件を犯す極悪人」

と誤解や偏見を与えている。このように、田中氏は薬物使用者の犯罪には薬物以外の他の問題があると擁護するが、『使途がギャンブル』の事件では、依存症が原因だと断定して、ギャンブル依存症者を貶める。これを『ダブルスタンダード』『二枚舌』と言わずに何と言うのか。


今の日本の実情考えたら、各県に1億円位の予算はいるでしょうよ。(*3)

これは、ギャンブルと事件との関連を公衆に擦り込み、「ギャンブル=酷い」というスティグマを構築して、田中氏の提唱する「ギャンブル依存症対策費47億円」を業界に支出させる為のプロパガンダではないのか。



田中氏は、メディアによって薬物使用者のスティグマが作られると批判しているが、ギャンブル依存症者のスティグマを作っているのは、田中紀子氏、あなた自身である。



依存症のスティグマ



WHO(世界保健機関)ではギャンブル依存症を精神疾患と認定するが、田中氏のように「ギャンブル依存症は病気だ!」「ギャンブル依存症者の犯罪だ!」と、声高に叫ぶのは依存症者へのスティグマである。これでは、「ギャンブル依存症者は犯罪者である」というスティグマが強まり、社会的信用を低下させ、自らを卑下し、心理的負担を増大させる。

APA(アメリカ精神医学会)のDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)やWHO(世界保健機関)のICD-11(国際疾病分類第11版)での、現在の呼称は「Gambling Disorder(ギャンブル障害、ギャンブリング障害)」である。



ICD-10では「Pathological gambling(病的ギャンブル)」だったものが、ICD-11では、「Pathological gambling(病的ギャンブル)」や「Compulsive gambling(強迫的ギャンブル)」、「addiction; betting(賭け嗜癖)」や「addiction; gambling(ギャンブル嗜癖)」は「Gambling Disorder(ギャンブル障害)」に包含されるようになった。



2つのスティグマ

これは「Pathological=病的」というスティグマや、「否認の病」と言われる所以と思われる「依存症=病気=精神疾患」というスティグマを懸念したのではないか。然すれば、日本語訳も「依存症=病気」では無く、「〜依存」や「〜嗜癖」が適切である。

この2つのスティグマの懸念と、依存状態から脱却する為に「治療」という言葉では無く「回復」という言葉を使うという事実を合わせると、「〜依存症=病気」ではなく、「〜依存¬病気(依存と病気は違う)」が適切であり、「addiction」も「中毒」や「〜依存症」ではなく、「〜嗜癖」や「〜依存」が適切である。私の感覚的には「〜障害」という呼称も微妙である。

現代の精神疾患への一般の人々の理解はまだまだ低く、社会での精神疾患者への対応もまだまだです。「依存症=病気=精神疾患」というスティグマにより、その表面だけを端的に捉えさせてしまうと、社会での精神疾患への理解度の低さから差別の対象になりかねません。

然すれば、前述の通り、「〜依存症=病気」では無く、「〜依存¬病気(依存と病気は違う)」が適切なのではないだろうか。



時代錯誤

田中氏はギャンブラーズアノニマス(GA)などの自助グループや回復施設を推奨しているが、そのプログラム(12ステップ)が宗教的で馴染めないなどの相性の問題があります。そのプログラムで強迫的ギャンブラーを自認すると、「絶対にやってはいけない」「一生治らない」「進行性」などと強迫的ギャンブルから脅迫されます。クオリティオブライフの視点から見ると、心理的負担が大きのではないか。と、疑問符をつけざるを得ません。

また、依存症者が何度もスリップ(リラプス)してしまうのであれば、ギャンブル⇆自助グループ・回復施設・精神科のループが続き、スリップ(リラプス)による心理的負担が大きくなるのではないか。然すれば、パチンコがメインの日本であるならば、確率論の知識を得て、その知識を基に立ち回り、『ハームリダクション・ギャンブル』をして、負債を抑えた方が良い。


関連エントリー


進行的で不可逆的ではない事が証明されて、強迫的ギャンブルの定義が覆されており、また、ギャンブルの根幹である確率論に言及しない、1950年代生まれの強迫的ギャンブルは時代錯誤である。ギャンブル依存症の完全なる回復方法が確立されない原因は、強迫的ギャンブルにあるのではないか。

田中氏の「ギャンブル依存症は病気」という啓蒙はもう古く、「強迫的ギャンブル」(12ステップ)もギャンブル依存症回復のメインストリームにならない。時代錯誤である。

また、私には「理」では無く、「利」で啓蒙活動しているように見える。依存症問題の正しい報道を考えるネットワークの発起人でもある、田中氏の主張は、本当に正しいのだろうか。懐疑的にならざるを得ない。



(*1)引用元・依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク・当団体の理念と目的
(*2)引用元・ミヤネ屋の事実誤認に対しBPOに申し立て - アゴラ - 田中紀子氏
(*3)引用元・たらい回し案件は誰かが真剣に何とかしようと思えば何とかなる!です - 田中紀子氏
参照元・ギャンブル依存症 - Wikipedia