持続化給付金 「不正逃さぬ」徹底して
2020年10月13日 07時35分
新型コロナウイルス対策として国が中小企業や個人事業者に最大二百万円を支給する「持続化給付金」で、不正受給が各地で報告されている。急を要する制度の弱点をついた犯罪行為だ。
犯罪グループから誘われ、軽い気持ちで加担した若者も少なくないという。「不正受給をしてしまった」「給付金を返したい」などの相談が中小企業庁が設けたコールセンターや全国の消費生活センター、警察に寄せられている。給付金を所管する中小企業庁は件数を公表していないが、その多さは「殺到」と言えるレベルのようだ。
持続化給付金は、新型コロナの影響で売り上げを減らした中小企業や個人事業者を支援するため五月から申請を受け付けた。前年と比べ五割以上の売り上げ減などの条件を満たせば、中小企業は二百万円、個人事業者は百万円を上限に給付される。経済産業省によると、これまでに三百四十六万件、総額四兆五千億円を給付した。
最大の特徴は簡素な手続きと迅速さだ。確定申告の控えや売り上げ台帳の写しなどを添付し、オンラインで申請できる。経産省のまとめによると、全体の七割近くは申請から十四日以内に支給されている。一刻でも早く窮状を救おうという制度だ。
そこに犯罪グループは目を付けた。愛知県警は八月、詐欺の疑いで名古屋市内の二十〜四十代の男三人を逮捕した。LINE(ライン)などで約四百人の学生や社会人らに声をかけ、虚偽申請を代行したり、指南したりして、現金を山分けしていたとみられている。総額四億円をだまし取った可能性があり、各地で相次ぐ不正受給でも被害額は最大規模だ。
多額の血税を投じ、疲弊、困窮した事業者を支えるはずの「命の水」が悪意に汚された。国は過去の不正受給の例に照らし、一部の審査を慎重にするなど対策を講じたが、「十四日以内」の給付は堅持する姿勢だ。担当者は「調査の網を広げる。不正受給は一人残らず、何年かかってでも返還してもらう」と話す。延滞金や加算金の請求に加え、刑事告発も検討する。現時点で調査対象外者は、自主申告すれば加算金の支払いを免除するなど「自首」扱いにするという。
若者らが安易に犯罪グループに手を貸すのは一向に減らぬ「ニセ電話詐欺」と同じ構図だ。専門家は「被害者に思いをいたす想像力が欠如している」と指摘する。
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