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 日本の南海上を進んだ台風14号は伊豆諸島などに大雨を降らせ、東京都三宅村などに一時、大雨特別警報が出された。犠牲者が出る事態は避けられたが、台風シーズンはまだ続く。備えを怠らず、被害を防ぎたい。

 東日本を中心に死者・行方不明者が100人を超えた台風19号の上陸からきのうで1年になる。長野県千曲川など多くの河川が氾濫(はんらん)し、大勢の人が建物に取り残された。

 こうした教訓から、最近は地元の気象台国土交通省地方整備局が、記者会見で早めの準備を呼びかけることが増えている。コロナ禍の今、避難所での混乱を避けるためにも、迅速で丁寧な情報提供は重要だ。

 内閣府は今、避難情報の出し方を抜本的に変更する方向で検討を進めている。最大の変更点は避難勧告を廃止し、避難指示に一本化することだ。

 8月に発表された政府の中央防災会議の作業部会の中間報告は、避難勧告をなくし、従来の避難勧告のタイミングで避難指示を出すよう提案した。政府は来年の通常国会で必要な法改正を行い、梅雨期までに運用を始めたいという。

 台風19号の被災者を対象とした内閣府のアンケートでは、勧告と指示の意味を正確に理解していた人は約18%にとどまり、40%は指示が出てから避難を始めると答えた。

 勧告は危ない場所にいる人全員に避難を呼びかける情報で、指示は災害発生の恐れが極めて高く、重ねて避難を求めるものだ。一本化は「指示待ち」を減らすことにつながるだろう。入念な周知策を講じてほしい。

 また、最近は避難情報が市区町村全域に出され、対象住民が100万人を超えることもある。気象庁などが警戒情報を早めに出し、自治体はそれをもとに地区ごとの危険度を見定め、対象を絞り込んで発表するよう努力すべきだ。

 中間報告では、避難勧告の前の「避難準備・高齢者等避難開始」についても要検討とした。誰に向かって何を求めているのか不明確という指摘があるからだ。高齢者以外でも、避難所から遠い人や、土砂災害警戒区域内の住民らはこの段階で避難すべきことがわかるように、名称を含め改善すべきである。

 これらとは別に、防災・気象情報に5段階の警戒レベルが導入されたのは昨年。命にかかわる情報が頻繁に見直され、複雑になるのは望ましくない。今後は長期間、この方式で行くという覚悟で取り組んでほしい。

 もちろん住民側の備えも大切だ。行政の情報と、それを受けた住民の的確な行動で、逃げ遅れゼロをめざしたい。

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