河床に複数の甌穴 川崎・多摩区の五反田川
 
2012年10月19日 09時58分    東京新聞
 
岩盤に開いた大小さまざまな甌穴=川崎市多摩区で
 
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 神奈川県川崎市多摩区の五反田川の河床に、石の浸食作用でできる珍しい「甌穴(おうけつ)」が複数あることが分かった。市は近く本格調査し、数や形成された年代などを特定する。県内で甌穴群が確認されたのは初めて。 (栗原淳)
 
 甌穴は、川底の岩盤のわずかなくぼみにたまった石や砂が、水流を受けて回転するなどし、年月をかけて周りを削ることでできる円筒状の穴。
 
「ポットホール」とも呼ばれる。関東では、埼玉・長瀞渓谷や群馬県中之条町の四万川などで見られる。
 
 今回確認された場所は、小田急線生田駅の近く。近所に住む郷土史家の山口醇さん(77)が以前から気付いていた川底の穴について八月に市に連絡し、甌穴と分かった。
 
 山口さんによると、甌穴が見られる岩盤は長さ約十二メートル、幅約五メートル。穴は七~八個あり、最大で直径五十センチ前後、小さいもので十センチ前後。穴同士がつながってできた細長い溝も、幾筋も確認できるという。
 
付近では昭和四十年代に、川底にコンクリートを敷く工事が行われたが、現場は固い岩盤が露出したためコンクリートで覆う必要がなく、自然の河床が残ったらしい。県文化遺産課は「県内で甌穴は把握していない」としている。
 
 地質学に詳しい「多摩川流域自然史研究会」(東京都三鷹市)の増渕和夫代表は
 
「甌穴は水量のある速い流れの川でできる。河川改修で今は市街地をゆったり流れる五反田川が、かつては急流だったことをしのばせる貴重な痕跡」
 
と話し、できた年代は
 
「一万年前より新しいのではないか」
 
とみる。
 
 川崎市文化財課は来月にも、穴の数や深さなどを詳しく調べて地質学的な価値を見定め、保存や活用のあり方を検討する。