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クリスタル・ブラスター英雄奇談(この物語を女教皇騎士団に捧げます1) 作者:礒部康

第一章

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第2部 ウィルガルド大陸伝奇

 そういう経緯で、クリスタル・ブラスターはこのとんでもない呪いの

 妖刀 戦慄ダイモスを使うことになった。


 ーーこのダイモス以外にももう1本魔法剣を選ばされた。

 それは普段用の騎士用の片手剣にした。

 その剣は氷か炎の魔法が敵によって自動的にかかり、

 少し体力も回復する剣を選んだ。

 これもくそばばあから


「来月の給料の銀貨100枚全部で我慢してやるよ。

 よこしな。

 武器屋で買うと金貨55枚はするさね」と言われたが、


 ーー母の自作だろ? 


「ただでくれよ! どけちばばあ!」


「何寝言言ってやがる!くそ息子!金は親子でも別だ!」


 来月になり、王室の給与係の官僚に給料をもらいに行ったら、


「もう、マダム・ブラスターさんが『今月の息子の給料銀貨100枚は

 私に払ってください』と言われたのでおかあさんに全額お渡ししましたよ」

 と言われた。

 ーーホントにくそばばあだ。


 クリスタルの目の前で、マダム・ブラスターは

 その2つの剣を融合させてしまった。

 4つのモードを選択できるようにしたという。


 1モード、片手剣の魔法剣(これは母から購入時の元)、

 2モード、両手剣モードの魔法剣、

 3モード片手剣モードの妖刀ダイモス、

 4モード、両手剣の妖刀ダイモス(母から購入時の元)


「くそ息子、これもただじゃないよ。

 この融合の料金も来来月の給料の銀貨100枚だからね」と言われた。


 (おかげで当分、クリスタルは自分の育った実家のマダム・ブラスターの家で

 母の顔を見ながら、料理下手のお馴染みの家政婦のおばさん

 ミルルさんの作ったまずい料理を毎日食べに帰る羽目になった)


 夜が更けて、ミルルさんが帰って二人っきりになったとき、

 マダム・ブラスターはクリスタルに語り始めた。


「妖刀ダイモスには素材に37匹の強力な魔物が入っているのさ」


 暖炉に薪をくべながら、暖炉の火を息子と見つめながら

 母はクリスタルにしみじみと語った。


「妖刀ダイモスはその剣でとどめを刺した命ある者の魂を吸収するんだ。

 だから人間につかうべき剣じゃない。

 魔物を妖刀ダイモスで切るかとどめを刺せば

 妖刀ダイモスはどんどん強くなる」


「どういう使い道があるんだよ?」


「霊体に自由に攻撃ができること、

 しかも霊体に攻撃ヒットすれば大ダメージが出せること。

 対魔物向けだね。だから普段の盗賊の討伐などで使うとき

 なんかは普通の魔法剣でお行き」


「なんか、無駄な気がするな」


「いつかお前が魔物と戦うときのために創ったのさ。

 おまえの本当の身体はこの大陸のあちこちに散らばって、

 魔物たちが持っている。

 それを取り戻し、本来のお前の身体になり、

 お前の真の父親である覇王陛下に挑めばいい。

 あの方はおそらく、悪魔に魂を売っていまのこの大陸の覇権を

 手に入れたのだろう。

 めったなことは言えないが、なにせ今をときめく、

 この大陸の最高権力者だからね。

 しかも善政を布いていらっしゃる。

 だれもが聖王と呼ぶお方だ。

 あの方のことを悪く言う者はまずおるまい。

 しかし、悪魔に魂を売った聖王などいてたまるものか。

 おそらく何か裏にある。おまえがそれを暴くがいい。

 それはお前の役目だろう」


「お前が葦の船に入れてられて川を流されていたのを拾ったとき、

 お前の魂の色をみて、すぐにわかったのさ。

 お前があの覇王ジョー・デウスの子であるとね。

 お前の身体には妖気が漂っていた。

 葦船の中にいた赤子であったお前

 私は手も足も耳も鼻も眼もないおまえのためにゴーレムの秘術を使い、

 まがいものの手足や眼や鼻や耳やおまえの身体に欠けているすべての

 器官を錬金術により、おまえのために作ってやった。

 おまえの魂が太古に存在したときく『恐怖フォボスの呪い』にかけられているのが

 わかったときは、正直 私もびびったね。マジでヤバイ!詰んだか! と思ったよ。

 でも、自分なら何とかしてやれるという自信はあった。

 だからこそ、お前をそのまま自分の手で育てようと思ったのさ。

 フォボスの呪いとは、そばにいる人間の生命力を吸い取り、

 死にいたらしめ、アンデッドに変貌させる という恐ろしい呪いだ。

 はるか古代に存在したと言う、今の魔法体系とは違う

 魔法体系での生贄の術式で、

 その呪いの防御魔法を新たに創造しなきゃならなかった。

 それのできる術者は

 この大陸に5人はおるまい。

 その一人である私に拾われたお前は運の良い子だった」


「フォボスの呪いとは、自分の最初の子がまだ腹の中にいる

 赤ん坊であるときに生贄とし、

 その体と魂を 悪魔に捧げ、この世の 支配者となることを願うという、

 おそろしい古代の呪法さ」



「私もおまえがそれを成し遂げるのを手伝うよ。息子よ。

 聖なる覇王ジョー・デウスの真の姿をあばくんだ」


「いつか自分が思い立ったら、この大陸中を巡り魔物を倒して

 お前の身体を元の身体に戻す旅をするがいい」


「フォボスの呪いはその呪いを願った者の命を奪わないと解けないが

 おまえに父であるジョー・デウスの嘘を暴けとは言ったけど、

 父の命を奪えとは言ってない。子であろうと父の道を正すこと!

 それに尽きる!

 今は2,3年に1回防御魔法を更新しているが

 フォボスの呪いを完全に封印することは出来なくはないよ。

 でもそれは、さすがに

 私の命と引き換えねばならない防御魔法なのさ。

 私があと50年位生きて年老いて私の寿命があと数日の命になったら

 私の命と引き換えに二度と更新しなくてもいい呪いの防御の

 大魔法をかけてやるよ。あっはっは

 そうすればお前はフォボスの呪いに苦しむことは二度となくなる。

 それでいい。うむ(ニコリ)」


 その日はそのまま、毛布1枚をひっかぶり彼は実家の暖炉の前でそのまま寝た。


 次の日、クリスタル・ブラスターはガウス・ハルモニア王より

 王室騎士として

 王室警護隊隊長を命じられた

 王様より呼び出され、クリスタルの辞令の最中に、

 たいへんめでたい事があった。

 予てより第2子をご懐妊中だったリナ王妃が2人目の

 王女を予定より早くご出産されたのだった。

 王は辞令もそこそこに家来たちをほっぽり、

 奥宮へ走って行ってしまわれた。


 この日、クリスタルは王様よりアナスタシア王女の警護担当を命じられた。

 特に気まぐれに外出して町中でのショッピングや

 いきなり森でピクニックするのが大好きなアナスタシア王女の

 警護はたいへんであった。


 クリスタルの母マダム・ブラスターは賢者としても名高く、

 国1の錬金術師で呪術の技術知識以外にも

 あらゆる分野への深い知識を持っていた。

 それで彼女はアナスタシア王女のご教育係を担当していた。

 その縁で幼い頃、王女と1歳違いのクリスタルは母に呼び出され、

 よく王女の遊び相手をさせられて、良く知っている幼友達でもあったのだ。

 王女の気まぐれに、よけいにNO! と言い辛く、

 クリスタルは王女に振り回されることになり、

 部下たちに失笑されることも多かった。


 やがて王女は誰よりもクリスタルを信頼していることに気が付いた

 二人っきりになると、ついため口で会話するようになっている二人であったが

「なんで、そんなに俺が信用できるんだよ?お前……」

「うるさいわね、あなたを信用しちゃだめなの?」

「……ったく、おまえもほんと、我儘だし泣き虫だし……

 困ったちゃんだなあ……」

「なにさ、クリスタルのばか……」

「俺だってさ、仕事でお前と付き合ってんだぜ!誰が仕事でなきゃ!

 お前みたいな、可愛くねえ気が利かねえ我儘で泣き虫なやつなんか……」

「私が可愛くないの?じゃあお傍付きの護衛、あなた以外の人にしちゃうぞ!」

「おう、上等だ!」

 こんな感じの会話が王女の部屋から聞かれる……

 *


 16歳の王女アナスタシアと王室騎士であり王室警護隊隊長クリスタル・ブラスター17歳は……

 やがて二人は愛し合うようになり、とうとうある夜、結ばれてしまった。

 王女の部屋で……

 そしてその次の日、悲劇は起きる……


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