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クリスタル・ブラスター英雄奇談(この物語を女教皇騎士団に捧げます1) 作者:礒部康

第一章

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第1部 ウィルガルド大陸伝奇

この話は女傭兵奇談の13年前の話となっています


どなたか「評価」頂き、おありがとうございます<m(__)m> もったいのう御座います

「よお、おふくろ、金くれーー」


 王室騎士のクリスタルは、王室お抱えの錬金術師である母の

 マダム・ブラスターを王宮の中庭で見つけ、そう声をかけた。

 王室騎士のクリスタル・ブラスターはきちんとした騎士の正装をして

 騎士のマントを羽織り騎士のレイピアを装備している。


「なんだよ、おまえ、王室騎士として勤務して給料もらってるんだろが」


 マダム・ブラスターは振り返りもせず、息子にそういった。

 何か彼女はノートに夢中でメモ書き中である


「ああ、だけど金がたりねーんだよ、なあたのむ」


「やかしーー、自分で稼ぎな」


 どうやら、マダム・ブラスターはメモを書き終わったらしい。

 メモ用紙をローブのポケットにしまうと、振り返りもせずにサッサと歩き始めた。

 マダム・ブラスターは40過ぎで少し出始めた白髪をかき分けながら言い切った。

 痩せた体に、その整った上品な目鼻立ち、目はどこか遠くを見ている。

 ここに自分の息子がいることも感知していないようだ。

 高位の王室の官僚である紫のローブを着て紫の賢者の帽子を被っている

 彼女はハルモニア1の錬金術師である。


「くそばああ~~なあたのむよ」


「それが、なにか頼む者の態度かよ」


「こらーー母親なら理由ぐらい聞けよー」


「どうせカジノに行く金だろうが」


「ちがう、欲しい剣があるんだ」


「うん? 割とまともな理由だな」


「そうだろ?給料でようやっと金貨1枚貯めたんだけど、

 その剣は金貨25枚する剣なんだ」


「金貨25枚とは 普通の剣じゃあないな?」


「うん、魔法の剣なんだよ。

 気に入ったんだ。掘り出し物だ。

 ほかのやつに買われたら一生後悔する!

 王室のど真ん前のすぐそこの武器屋だ」


 クリスタルは母親の手を引っ張って有無を言わさず王宮の外の

 正面玄関の前にある大きな立派な武器屋に母親を引き摺って行った。


「これがその剣だよ。

 いい剣だろ!」


「しょぼい魔法がついてるだけで金貨25枚か。

 ぼったくりもいいとこだな」


「攻撃すると少し体力が回復するんだ、いい剣だろ!」


「少し早いと思ってたが、まあいい。

 私の仕事場へおいで」


「ひええええ。おふくろの仕事場は臭いし汚いし、

 猛毒の瓶が平気であちこちに置いてあるし

 ひどい時にゃ、ネズミのミイラや本物のミイラの身体の一部

 なんかの素材が平気で転がってるからイヤだあああああぁぁ‼」


 今度はマダム・ブラスターが息子を引き摺って王宮から少し離れた

 古い墓場のあるさびれた教会の跡地に連れて行った。

 その教会の地下室がマダム・ブラスターの錬金術工房アトリエだった。

 壊れた石造りの教会の暗い石の階段を降りてドアを開けるとカビ臭い部屋。

 その奥の部屋を開けると何とも言えない薬品の匂いが鼻を衝く。

 さらにその奥の鉄の扉を開けると地下墓地だった。

 その最奥の部屋に蝋燭の明かりを頼りに進む。

 鉄の扉の向こうに、何本かの魔法剣が無造作に置かれていた。


「欲しいものを選びな。くそ息子」


「これ全部、おふくろが創った物かよ?」


「この国で私以外に、誰がこんなもん作れるってんだ?」


 魔法剣にはいちおうどれも札がついてて性能が事細かに書かれていた。

 どれもさっき武器屋でみた魔法剣なんか比較にならないすごい性能だ。

 目移りして奥の剣に目をやったとき、紫の微光を発する大剣を見つけた。

 それを持つと、一瞬、なにかヒヤリとした感覚があったがしっくり手になじんだ。

 持ち上げてみると、重いがしっくりくる。

 しかし、その剣には性能書の札が無かった。


「くそばああ。この剣なんだ?」


 マダム・ブラスターはすこしギョッとしたが、


「やっぱり、それを見つけたかい。

 ふっ……それはこの国の

 王軍があらゆるところで捕まえた魔族を全部ぶち込んで

 素材に使って創った呪いの妖刀だよ。

 それは聖典にでてくる戦慄ダイモスという呪われた妖刀さ。

 それは多分、お前以外の人間が触ったら

 生気を吸われてうつ状態になっちまうだろうよ。  

 下手すりゃそのまま立ち直れないかもな」


 クリスタルはドン引きでギョッとして剣から手を離した。


「それって、とんでもない魔具じゃねえか⁈」


「おまえは『恐怖フォボスの呪い』を魂にかけられているのは、

 小さいころから幾度も説明してやってるね。

 お前にフォボスの呪いがかかってるからこそ、その剣が使える。

 それは私がお前用に創ったともいえる剣さ」


 マダム・ブラスターの言葉でクリスタルはおそるおそるもう一度剣に手を振れた。


「ああ知ってるよ。

 おれが普通の生活ができるのは

 おふくろが呪力でそれを制する防御魔法を2年か3年に1回

 かけ直してくれてるおかげだってことも」


「それの性能は使ってればおいおい分かる。

 金貨1枚で売ってやるよ!」


「息子に金は払わせるのかよ。くそばああ!」


「くそ息子!金に親子なんて関係ねえな」


「ちぇっ、ホントにこれはすごい剣なんだな?」


「ああ、保証する。なにせお前専用に創ったのかもしれねえ」


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