1968年頃のロック黄金期、その頃にはギタ-を弾かれていたんですか? |
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T: |
弾いていました。小学生の時に友達のお兄さんがエレキ・バンドをやっていたので、エレキ・ギターがそのお兄さんのところに行くとあったんですよ。今の人たちには信じられないかも知れませんけど、僕らの時代はエレキを持っているだけで不良だったんです。だから家では買ってもらえないし、どんなにお小遣いをためても買うこと自体が不可能だったので、アコースティック・ギターを買って、それにピックアップを付けて弾いていました。アンプは家には持ち込めないですから友達のところに行って。でもすぐ暗黙の了解でそのお兄さんがエレキ・ギターを貸してくれるようになった(笑)。高校1年の時に始めてエレキ・ギターを買って、その頃は確かジェフ・ベック・グループとかのコピーをしていました。 |
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やはり練習といえばコピーがメインだったんですね。 |
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T: |
コピーですね。ジェフ・ベックは『トゥルース』っていう1stアルバムが大好きで、あれはたぶん今でも全部弾けると思いますよ。でも、あの人はどうやって弾いているのかが見ないと分からないんですよね。ベック・ボガート&アピスで来日した時のライブを前から2番目くらいで観て「こうやって弾いてるんだ!」って愕然としましてね。それから日本に来るたびにほとんど観て、1990年からはもうずっとイギリスにいたんですけど、イギリスで彼がライブする時も、半分ライブハウスみたいなところでやるんですけど、そういうライブも観ていましたが、観る度に上手くなってるんですよね。ライブを観て衝撃を受けたことを練習してできるようになっても、同じレベルになったと安心するのは大間違いで、次に観た時にはもっと凄いことをやっているんです。だからあの人はおそらくあれだけ弾けてなお、毎日練習してるんでしょうね。ブライアン・セッツァーとジェフ・ベックは間違いなく、今でもしっかり練習していると思いますよ(笑)。 |
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そこから土屋さんも、いわゆるテクニカルなロック・ギタリストを目指していったんでしょうか? キース・リチャーズではなく、ジェフ・ベックやジミー・ペイジを志向されたというか。 |
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T: |
グルーヴを作っていくという意味ではキース・リチャーズの技術は凄いですよ。たまたま僕がデュラン・デュラン関連の仕事でフランスに行った時に、近くのスタジオでストーンズがレコーディングをやっていたんです。僕はスティーブ・ジョーダンっていうドラマーと一緒にレコーディングしていたんだけど、突然チャーリー・ワッツからスティーブに「すぐに来い」という電話が来て、もちろんロックの大御所、大先輩ですから、一目散に行かなくちゃいけないわけです。どういうことかというと、ハイハットとスネアはチャーリーが叩かないとストーンズのグルーヴにならないけど、当時もうすでにチャーリーはお歳ですから、曲の半分くらいからキックとか踏まなくなるらしいんですよ(笑)。それでミックが「途中からやたら低域がなくなった!」と激怒して、エンジニアがいろんな配線とか1個ずつ調べていったら途中からキックがなくなっている。そこでチャーリーが言ったひと言が「若いもんに踏ませておけ」(笑)。これ本当の話ですからね。それでフランス中のスタジオに「若くてイキのいいドラマーはいないか?」って連絡が来て、スティーブに白羽の矢が立ったということなんです。だから『ダ-ティ・ワーク』のキックは全部スティーブ・ジョーダンですよ。ヘッドフォンなんかで聴くとすぐ分かります。あれだけ凄いイキがいいんですよ。 |
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ローランド(以下R):ハイハットとスネアにキックを重ねて……、それって凄いですね。 |
R: |
あの時代にハイハットとスネアだけを聴いて、後からそのグルーヴに重ねることができるってことが凄いよね。それを見たキースも「若いもんに弾かせておけ」って、ジミー・ペイジを呼んで……(笑)。『ダーティ・ワーク』の1曲目かな? ジミー・ペイジがメチャメチャいいソロ弾いてるんです。だから、お互いにリスペクトしてるんじゃないですか。これ、目の当たりにした実話ですからね。バンドもここまでやったらカッコいいなって思いました。 |