「男性は女性向けAVを見てみて」
その理由とは

 第1部では、登壇者の紹介に始まりAV業界の歴史、制作時の裏話などが披露された。来場客にとって興味関心の高い「AV業界の話」を導入にして、スムーズにAVを教科書してはいけない理由がわかる流れとなっていた。

 登壇者が繰り返し口にしたのは、「AVはフィクション」「AVはファンタジー」という言葉。プロが作っているフィクションだから、現実のセックスで全部を真似しようしてはいけないということだ。

 具体的には、例えば作品中によく登場する膣内射精の描写。そのように見せているだけで、実際にはカメラに写らないところで男優はコンドームを装着していると、登壇者が語った。

 また、いわゆる「女性器に指を入れ、液体を分泌させる行為」については、登壇者全員が「まねしてはいけない」と強調。腟内が傷つくこともあり、作品の中で強調されるほど女性が快感する場合ばかりでもないことから、「AVで見るだけにして」。

 さらに一徹さんは「男性は女性向けAVを見てみては」と提案した。女性向けAVでは、男性向けAVとは逆に、コンドームを装着する場面が必ず入るという。また、下着を中途半端に脱がす行為は、「実際にされると痛いこともある」という理由でNG。「女性器に指を入れる行為」は行われない。

「男性は女性向け、女性は男性向けのAVを見てみるのもいいのでは」

「ただ、どちらもファンタジー。女性向けAVも教科書にはなりえない。参考書ぐらいにはなるかも」

 大人の中には、「今どきの学生は、そんなことも教えられないとわからないのか」と思う人もいるかもしれない。しかし、性教育に関するネットニュースには必ずといっていいほど、「子どもにAVを見せればいい」といったコメントがつく。「AVでセックスを学べる」と思わずとも、AVで行われることが「普通」で「自分たちもやっていい」と思い込んでいる人は、大人でもいるのではないか。

 印象的だったのは、プライベートのセックスについて聞かれた出演者たちの回答だ。一徹さんは「地味です」と回答。AV俳優でもプライベートは「地味」という返答は、「AVはフィクション」の説明になっていたように思う。

経験談を交え
深刻な内容も敷居を低く

 第2部では、遠見さんが他の出演者にクイズを出すかたちで、避妊や性感染症の講義が行われた。遠見さんは、主に中高生への性教育講座を、これまで10年以上続けてきている。講演回数は500回以上。「えんみちゃんファン」も多く、「えんみちゃんのためなら使ってください!」とイベントのボランティアを申し出た人もいたという。

「12問のクイズをしましたが、驚いた表情や『そうだったのか』と納得する表情などがこちらからよく見えました。『性のことを気軽に楽しくみんなで考える場所』の経験は、これまでほとんどなかったのではないかと、反応を見て感じました」(遠見さん)

 遠見さんが講演で大切にしたのは、「自分自身の問題として考えてもらえるような工夫」。ただ単に正しい知識を説明するだけではなく、経験談を交えた。今回はさらに、俳優陣が経験談を語るアシストもあり、「(学生たちも)同じ目線で身近な問題として考えられる機会になったのでは」。

 講演の内容は、リプロダクティブ・ヘルスライツ(性と生殖に関する健康・権利)や、性的同意のない行為は性暴力であること、コンドームでは予防しきれない梅毒が急増していること、先進国なのに避妊方法が限られていて、特に女性が主体的に避妊できる方法が普及しておらず、後進的であること、中絶件数は減少傾向とはいえ看過できないこと……。

 取っ付きにくかったり深刻だったりする内容を、笑いを交えながら紹介することができたのは、登壇者たちのキャラクターによるところも大きいだろう。普及率が低いと紹介された女性の子宮内に装着する避妊具「ミレーナ」を紗倉さんが使っていると話し、遠見さんが喜ぶ場面もあった。