数々の検証や非公式大会など、「艦これ」で見るディープなゲームコミュニティ
2期のTVアニメ放送も楽しみだ
熱中/熱狂できるゲームであれば、自然に大きくなるのがファンによるゲームコミュニティだ。ソーシャルネットワークが普及した現在、ある程度人気のあるゲームであれば、不特定多数のユーザーが情報をまとめるwikiによる攻略サイトが作られていくのは当たり前。特に人気の高いゲームであれば、攻略ツールやMODなどで、開発者の想定を超えた遊ばれ方が構築されることも珍しいことではない。
しかし世の中には、想像を絶するほどディープなゲームコミュニティも存在する。それが今回紹介する『艦隊これくしょん-艦これ-』(以下、艦これ)のコミュニティだ。「艦これ」は第二次世界大戦期の旧日本海軍の艦艇を題材としたソーシャルゲームで、言わずと知れた萌え擬人化コンテンツの火付け役だ。2013年にサービス開始するやいなや爆発的な人気となり、サービス開始から7年目を迎えた今では、日本の海を守る海上自衛隊も積極的にコラボを行っている。
以下のツイートは、防衛大臣時代の河野太郎内閣府特命担当大臣のツイートで、写真はおそらく護衛艦「涼月」の艦内で、艦これの「涼月」のタペストリー(?)が普通に飾られている。
艦これほどにもなると、ゲーム攻略、プレイツール(改造ツールではない)、データベースなどが、普通のゲームではなかなか見ないような規模で普及している。なかでも艦これというゲームに詳しくなくても楽しめるのが「λ(ラムダ)杯」。動画配信サービス「ニコニコ動画」で、「艦これ」の生配信を行うニコ生主(動画配信者)7人(例外あり)がチームを組み、リレー形式で艦これ攻略RTAに挑むゲーム大会だ。自身も「艦これ」ユーザーであるラムダ氏が大会を主催している。「艦これ」ファンによる非公式大会だが、提示された条件をクリアした配信者にWebマネーなどによる賞金を提供する個人スポンサーも付いている。
この大会のおもしろいところは、実況慣れしているニコ生主が、大会への参加と同時に動画配信も行っている点だ。大成功したときの雄叫びや、失敗したときの悲鳴、ミスを重ねてパニックを起こしたときの生々しさなど、大会に参加するプレイヤーとしての生の声がリスナーへとダイレクトに届くし、リスナーからの応援も直接届く。基本的に観戦するだけの、普通のeスポーツにはない楽しみ方がここにはある。
紹介がギリギリとなってしまい申し訳ないのだが、2020年10月10日には5回目となるλ杯が開催予定。ラムダ氏は各ニコ生主の様子をミラー中継して実況するので、艦これ初心者は大会本部の配信映像の視聴がオススメだ。17:30に開会式が行われ、19:00に参加者グループが一斉にスタートするスケジュールとなっている。
そこでλ杯の見所はもちろん、λ杯を通じて「艦これ」の魅力や、本稿の本題である艦これのディープな世界を紹介していきたいと思う。
見た目とは裏腹に、シビアなゲーム設計の「艦これ」
まず艦これというゲームは、戦艦「大和」や駆逐艦「雪風」など、艦艇を擬人化した艦娘を、提督(プレイヤー)が指揮をするシミュレーションだ。提督は艦娘を、すごろく状になっているマップに送り出して深海棲艦(海から現れる敵)と戦うのだが、マップの移動や戦闘はほぼフルオートで進行する。提督は艦娘の戦い振りを見守るのみとシンプルなゲームだが、艦娘は戦闘で倒されると復活はできず、2度と手元には戻ってこない意外とシビアな側面もある。
すごろく上のマップには分岐が多数存在する。行き先はランダムだったり選択できる分岐もあるが、その多くは編制や索敵(能力)値が分岐条件となっている。戦闘に入ると、どの敵に攻撃するかはランダムで、詳しくは後述するが、艦娘が攻撃する順番のコントロールもしきれない。複数のマップを連続で攻略していくλ杯では、難しいマップが並ぶ後半の海域ほど全体のバランスを見ながら編制と装備を調整する必要があるり、いかにランダム要素を最小限にとどめて、最速のタイムをたたき出すかに、提督としての知識と技量が求められる。
λ杯は複数のチームが同時にスタートするRTA。チームごとに1人のメンバーが担当海域(マップ全体)をクリアしたら後続のメンバーにバトンタッチするリレー方式で、最終的にもっとも早くすべての海域突破したチームが優勝となる。
λ杯の難しいことは、タイムアタックとボスマスの完全クリアの両立を求められる点だ。例えば3-4では、通常空母や戦艦といった重量編成で簡単に突破できるのが、その編制だと遠回りの道に分岐してしまう。そこでタイム短縮が求められるRTAでは軽量編制で近道するのだが、戦闘の難易度が上がってしまうため道中で艦娘が大破しやすい。大破すると次の戦闘で艦娘が轟沈する可能性が発生するため、レギュレーションで撤退が義務づけられているので大幅なタイムロスとなってしまう。
またボスにたどり着いても、戦闘開幕時にランダムで決まる交戦状態(お互いの位置取り)によって火力が大きく変化する。T字有利という状態であれば両軍の攻撃力が120%にアップするのだが、T字不利を引いてしまうと両軍の攻撃力が60%にダウンしてしまう。先ほどの3-4の軽量編制で攻撃力が低下するとなおさら完全勝利が難しくなるため、スムーズな突破には運も必要となる。
艦これは何かと準備に時間がかかるゲームなので、その集大成となる大会で失敗したくない意気込みに、チーム戦である責任も加わるため、そのプレッシャーたるや尋常ではない。そのため複雑な操作が必要になる場面で、悲鳴を上げて混乱するニコ生主を見かけると、ちょっと悪いなと思いつつも、毎回大笑いしながら試合を見守っている。
艦これでは、出撃する1つの艦隊(パーティー)あたり最大6隻で編制し、全体で約24~30前後の装備を装着する。この装備はとても重要で、たったひとつの装備を間違えるだけでも、索敵不足でボスにたどり着けなくなるのはよくあることだ。
特にバランスが難しいのが空母の装備で、両軍の空母が装備する艦載機による空中戦で制空権を確保する(勝利する)と、戦艦の攻撃力を上げられるなど重要な副産物が生まれる。しかし攻撃力と制空権の両取りはできないので、火力を重視してギリギリを狙いすぎると制空権の確保に失敗してしまい、タイムロスをするどころか、ボス戦であれば下手をすると攻略失敗にもなりかねないので、そのさじ加減は重要だ。
また射程を変更することで攻撃の優先順位を調整できる。射程を伸ばすと優先順位は上がるのだが、調整しやすい空母の射程を1隻だけあえて低く抑えて、可能な限り最後のタイミングで攻撃させることで、高火力の空母を最後に残りやすい固い敵に攻撃させやすくできる。艦娘がどの敵を攻撃するかは基本的にランダムだが、そのランダム要素をどう削るかも提督の腕の見せ所だ。
各参加者は大会前に入念な準備を行うものの、いざ本番となったら編制ミスや出撃ミスに、出撃と間違えてショップに入るなど、何かしらハプニングが発生する。担当する海域の出走が終わる頃には、肩で息をするかのように呼吸が乱れて疲労困憊になるニコ生主もおり、これぞまさにeスポーツ(!)という場面に多々遭遇することもできる。
攻略サイトや攻略ツールが信じられないほどの充実振り
艦これには種類は380を超える装備が実装されており、筆者も1650前後の装備を所有している。艦隊の強化には装備の改修が欠かせないのだが、強化できる装備は曜日ごとに決まっている少々複雑なシステムなので、何のヒントもなしに狙った装備を改修するのは少々難しい。
そこで作られたのが、改修できる装備を簡単に調べることのできる情報系サイト明石の改修工廠早見表だ。このサイトでは曜日(デフォルトは当日の曜日が自動で選択される)と、装備アイコンをクリックすると、その曜日に改修できる装備の一覧が一瞬で表示される。おすすめをクリックすれば、その曜日に改装できる有能な装備が表示されるなど、提督にとって今や欠かせないサイトとなっている。
これほど完成度の高いサイトを個人が運営しているというのだから驚きだが、艦これでは、多機能サイトのうちの一角に過ぎない。自分の艦隊情報を入力することで艦隊戦力の分析が行える艦隊分析や、艦隊情報を他人に見せることに特化した艦隊晒しページ(リンク先は、筆者の艦隊情報)。複雑な計算式からなる、空母から発艦する戦闘機の戦闘結果(制空権)を計算するための制空権計算系サイト。ややグレーゾーンのツールであえて使わない提督も多いが、艦これをより快適に遊べるようにする専用ブラウザまで開発されている。