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中国国際漫画文化展
2008年10月2日~6日
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*第1回中国国際漫画フェアの目玉
「中国国際漫画文化展」会場。
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「中国動漫新人類」─ 十代の若者のエネルギー
さて最後に、今年、広州で初めて開かれた「中国国際漫画フェア」である。なんでも、「中国」と銘打たれた(つまり「国家主催の、全国的な」)マンガ祭はこれが初めてなのだという。
それでは、なぜ広州なのか。
広州はもともと、香港が近いということや海外からの文物がいち早く入ってくる土地柄ということで、中国の中ではとくにマンガが早くから盛んなところだった。
それで以前から、漫友社という出版社が主催する金龍賞や、広州市天河区が主催する学生コンテスト、それに衛士龍公司が主催する漫画アニメフェアなどがさまざまに開かれていた。それを今年から、広東省政府が一つのイベントとして取りまとめ、中央政府の国家新聞出版総署(つまり新聞・出版など印刷媒体マスコミ全般を取り仕切る役所)が主催となって始めたのがこのイベントである。
その中心をなす中国国際漫画文化展は、昨年からほぼ今のような形になった。むしろ昨年の方が会場自体は広かったのだが、今回のようにまとまったイベントとして組織されていなかったので、会場の広さに比してやや閑散とした雰囲気だったという。今年は、国家的な漫画フェアの一環として位置づけられたことで、会場こそ狭くなったものの、来場者は増え、1日目・2日目とも3万人を超え、3日目には来場者が4万人と報道されていた。
ほぼコミケの企業ブースくらいの広さの会場なのだから、これはたいへんな盛況といえよう。実際、1階の展示場は、ほぼコミケの混んでいるときと同じくらいにごった返していた。
しかも、世界のどの国際マンガ祭よりも客層が若い! 中心となっているのはほぼ十代である。現在の中国では、「中国動漫新人類」といわれるくらい、若い層は日本の「動漫」(アニメと漫画)の影響を受けており、それによってかつてとは価値観が変わりつつあるという(遠藤誉『中国動漫新人類』日経BP社)。
これに危機感を覚えた中国政府は、ここ十年というもの、国産のアニメや漫画を育てようと、巨額の国費をつぎ込んで、アニメ製作の拠点を作り、アニメ・漫画をい教える学校や学科を作ったりしている。今のところまだ、その政策はめざましい成果をあげているとはいいがたいが、意欲はずっと継続しており、今まではとにかくアニメアニメだったが、最近ようやく、「アニメの原点になっているのはむしろ漫画だ。漫画の力を伸ばしてこそ、その先に花が開く」というふうに認識が変わってきたのだという(今回お会いした広東省の政府要人の話)。広州での今回の第1回中国国際漫画フェアの開催も、その一環なのだろう。「中国には絵の上手い作家はいる。今の中国に必要なのは、それを面白さに確実に結びつけ、読者との間をつなぐ編集者とプロデューサーだ」という言葉が印象に残った。
事実、中国の若い人は面白いマンガを求めている。今まさにマンガにわくわくしている、といってよい。現地で感じるそのエネルギーはすさまじいもので、これから日本のマンガが世界により広い市場を獲得していくとすれば、それは中国をおいて他にない、という気にさせられる。
会場を回ると、日本マンガへの熱い支持と共に、フィギュアの精巧さなどには感嘆させられる(日本のフィギュアがほとんど中国で作られていることはよく知られている)。今回はまた、中国で人気が爆発してむしろ日本がそれを追いかける形になっているという「三国志ガンダム」(下写真)の存在が印象に残った。関羽ガンダムとか趙雲ガンダムとか、う~ん、その手があったか! という感じ。
中国ではまたコスプレも盛んで、ただ衣装を着るだけではなく、それを音楽に合わせた演劇仕立てのショーとして見せるところに特色がある(下写真)。とくにさまざまな武器を使った演舞コスプレが盛んなようだ。
アニメソング(それも日本語である)にあわせて踊ったり、上に書いたような演舞コスプレショーを披露するステージの横は「同人コーナー」になっていて、同人誌ではなく、手作りのコスプレ衣装や手作りのキャラクターグッズ(!)を売っている。ここでは、なかなか奇妙な味のある「トトロ」(宮崎監督はきっと知らないだろう)などを売っていて、笑ってしまった。
ここはまあ、「同人」コーナーだが、1階の企業ブースでも、さすがにマンガ本は正規版しか売っていないものの(中国ではマンガの翻訳は、正式には年間最大5タイトルしか許可されないこともあって、海賊版出版物も多い)、売っているグッズの中には明らかに海賊版と思われるものが混じっている。共産国なので、この国際漫画文化展は完全に国家主導のイベントなのだが、
そういう公式な場で売っているものにさえ、海賊版が混じっているのも微笑ましいというかなんというか。
翌日行った、「動漫特区」(広州では地下鉄のターミナルに、アニメ・マンガを前面に打ち出したショッピング・センターを作っている。ただ、当たり前だが、それでは店は埋まらず、ファッション関係などのほうがずっと多い)の本屋では、“『少年ジャンプ』同人小説集”と銘打たれた雑誌も売っていた。やっぱりマンガが盛んに読まれるようになると、同人誌も出てくるのだ。
ここ1、2年、中国では同人誌即売会も開催され始めているのだという。来年あたり、そこにもぜひ、行ってみたいものである。 |
※写真はすべて藤本由香里さん提供のものです
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