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コミックコンベンション
2008年7月24日~27日
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*コミコンの会場、サンディエゴ・コンベンション・センター。
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コミコン=SF大会=ビジネス・ミーティング
一方、アメリカはカリフォルニア州サンディエゴで毎年7月末に開かれるコミック・コンベンション(通称コミコン)は、1970年開始。今年が第39回。来年で40周年を迎える。参加者は年々増え、今年はなんと、1日の入場者が12万5千人を数えたそうだ。
会場はサンディエゴ・コンベンション・センター(上写真)。メイン展示場は一つで、コミケが開かれる有明の国際展示場の東館くらいの大きさだろうか。4日間開かれるが、メイン会場の展示にはとくに日によっての変化はない(配布物やイベント出演者などは変わるが)。
ただ、特徴的なのは、メイン会場の左右に大小さまざまな部屋がたくさんあり、それぞれの部屋で1~2時間交代で、シンポジウムやらトークショーやらサイン会やら、映画やアニメの上映会やら、研究発表やら……1日に、下手をすると百を超える数の大小さまざまなイベントをやっているということだ。
つまりその点ではむしろ、コミケというよりSF大会の感じに近い。実際、最初期のコミコンはSF大会の会場の片隅で開かれていたらしく、第1回の参加者は145人だったという。それが今は一日に12万5千人。
コミコンも有料のチケット制をとっていて、入場料は、日によって変わるが、20ドルないし25ドル。もちろん通しチケットだと割安になる。チケットは完全予約制で、昨年までは当日券もあったらしいが、今年は完全ソールドアウト。私自身、気がついたときには4日のうちすでに中2日の分は売り切れてしまっており、あとは伝をたどって入れてもらったりした。そういう状況だったので、今年は企業用のパスが盗まれるという事件もあったようだ。消防法の関係で、ある一定の数以上のチケットを売るわけにはいかないのである。
つまり、サンディエゴにある現在の会場はすでに限界を超えてきているということで、ロサンゼルスやラスベガスの会場が名乗りをあげているらしいが、2012年まではサンディエゴ・コンベンション・センターとの契約があるので違約金を払わないと移れない。だが、そのあとは? コンベンション・センター自体をそのために建て直すという話さえあるらしいが、もしかしたら、数年後にはコミコンの会場はサンディエゴではなくなるかもしれない。
メイン会場の様子は、まさに「巨大な企業ブース」という感じだろうか。「アーティスト・アレイ」というコーナーでは作家からの出展もされているし、プロでない作家のイラストやアート作品の展示即売会もあるし、マンガ古書なども扱っているのだが(アメリカのコミック市場は、コレクターズ・マーケットである時代が長くあった)、なんといっても目立つのは大企業のブース、それも、近年はとくに映画関係である。
アメリカのコミコンは、マンガだけでなく、ゲームもグッズも、そして映画も含んだあらゆるキャラクター・エンタテインメントの祭典であるところに特徴がある。映画にはアニメだけでなく実写(CG)も含まれるが、いわゆる文芸映画は扱われない。「スターウォーズ」とか「スパイダーマン」とか「トランスフォーマー」とか、そうしたキャラクタービジネスや特撮ビジネスの範疇に入る映画が大きく打ち出されている。昔はもっとコミック関係の比率が高かったらしいが、近年は映画関係の比率が目に見えて増えていると聞いた。
会場ではコスプレも目立つ。作り込んだマンガのコスプレもあるが、プロの映画関係者によるコスプレ─というか、撮影用の衣装そのもの─やショーも大々的に行われている(下写真)。
日本のマンガは、というと、コミコンで一番目立ったのはポケモンの頃(2002年頃)だったらしいが、今年は、日本のマンガそのものの比率はそれほど高くないという印象だった。少なくともアングレームより明らかに低い。ただ、MANGA―STYLEで描かれたアメリカ人の作品は確実に増えてきており、会場を歩いていると、アメコミが日本のマンガに与えた影響、日本のマンガがアメコミに与えた影響の両方が感じ取れて興味深かった。
今年は『少年ジャンプ』40周年、アメリカ版『SHONEN JUMP』5周年というので、版元のVIZ media(小学館・集英社・小学館プロダクションの系列会社)が力を入れて宣伝していた。そしてアメリカでは、VIZが出している『SHONEN
JUMP』『SHOJO BEAT』に続いて、今度はアシェット社系列の出版社が、スクエア・エニックスと提携して、『YEN +』という雑誌を、このサンディエゴ・コミコンにあわせて創刊した。(写真)ラインナップは、「鋼の錬金術師」「ソウルイーター」「ひぐらしのなく頃に」「陰の王」「すもももももも」など。ただ、この雑誌は、半分は左開きで、現地のマンガ家によるMANGA─STYLEの作品や韓国の作家の作品などを載せている。これでアメリカのマンガ市場には、少年マンガ誌、少女マンガ誌に加えて「萌え系・ゲーム系」マンガ誌も加わったというわけだ。
サンディエゴのコミコンには、さまざまな面からキャラクター・エンタテインメント産業にかかわる人々が集まってくる。つまり業界関係者が一堂に会す機会でもあり、関係者の間では連日ビジネス・ミーティングが行われていて、業界関係者は逆にほとんどコミコンそのものに参加する暇はないようだ。
会場を見ていても、いっそすがすがしいほど「売れるものが勝ち」という哲学(?)が打ち出されている感じがして、「ああ、アメリカだなあ」と思う(一方で、コミコンの運営そのものは、コミコン・インターナショナルという非営利団体によってなされ、コミケと同じく二千人あまりのボランティアが参加していたりするのだが)。
言ってみれば、「芸術」として国がマンガ(=バンドデシネ)を支援するフランス、「エンタテインメントはビジネス」のアメリカ、そして「コミュニティ」や「仲間意識」が出展者同士や出展者と来場者を結びつける動機になっているコミケ……。そう考えると、それぞれのマンガ祭の性格にはそれぞれのマンガ文化の特色がよく出ているような気がする。
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