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アングレーム国際マンガ祭
2008年1月24日~27日
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*アングレームに今年からお目見えした「マンガビルディング」。
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皮切りはアングレーム
世界のマンガ祭のトップバッターは、毎年1月末に開かれるアングレーム国際マンガ祭。1974年に始まり、今年で35回目を迎える(つまりコミケより1年早く始まった)。
基本的には、バンドデシネ、略してB.D.と呼ばれるフランスのマンガ中心のお祭りなのだが、フランスでの日本マンガ人気の高まりを反映して、今年は初めて「マンガビルディング」(上写真)ができるなど、かなりあちこちで「MANGA」の姿が目についた。
アングレームは、ボルドーにほど近い、人口4万人ほどの古い地方都市で、パリからTGV(フランスの新幹線)で南西に2時間半ほど行ったところにある。
最大の特徴は、テーマごとに設けられた特設パビリオンとさまざまな建築物を使い、街全体を会場にしていること(下写真)。町の壁には、人気のキャラクターの絵が描かれていたりする。駅から会場をまわる無料のバスが出ているが、展示会場に入るには、予め駅前のセンターで入場券(一日パス。これを見せればどの会場にも入れる)を買っておかなければならない。ちなみに一日券は13ユーロ(約2千円)、3日券29ユーロ。このあたりは、カタログは買うけれど入場は無料のコミケとは違うところだ。
また、同人誌を売っているわけでもない。代表的なのは、まず有名出版社が軒を並べる第一会場。ここでは各社かなり工夫を凝らした大きなブースを作って自社の本を大々的に展示している。もちろん買うこともできる。たくさんの人が床に座り込んで読んでいるのでどうしたのかと思ったら、なんと、フランスでは書店でも「坐り読み」が認められているということ。これにはびっくりした。買う前の本を、床に坐って好きなだけ読みふけっても誰も文句を言わないのである。
また、各社、かなり大きな日本マンガのコーナーを持っているところが多く、日本マンガの浸透ぶりを改めて認識した。
一方、第二会場はオルタナティブ系(いわゆるガロ系)の中小出版社で、屋台のように本を並べて売っている様子はかなりコミケに近い。フランスでは出版社を作るのがものすごく簡単だというから、半分同人誌のような感覚でもあるのだろう。作家自身が手売りをしていて、本を買うと絵入りのサインをしてくれているところもかなりあった。
その他、「B.D.の周辺」と名づけられた会場では、フィギュアなどグッズを売ったり、ビニールに入れた古書を売ったりしている。もともとアングレームのフェスティバル自体、マンガ古書の交換会と、それに絡めた展示やイベントをメインとして始まったらしい。
その他にもさまざまな展示会場があるが、現在、フェスティバルの最大の目玉となっているのは、各賞の受賞者の発表と賞の授与式である。「マンガのカンヌ」それがアングレームなのだ。カンヌ映画祭の最優秀作品賞が金獅子賞なら、アングレームのそれは「金の野獣賞」と名づけられているという。昨年は水木しげるの「のんのんばあとオレ」が、日本人として初めて、その「最優秀作品賞」を受賞して話題になった。
このマンガ祭への去年(2007)の来場者数は約20万人。予算は350万ユーロ(約5億5千万円)で、そのうち3分の1を税金で、残りの3分の2をチケットの売り上げや企業からの協賛金でまかなっているという。ちなみに今年のメインの後援企業は、fnacという大きな書店チェーンとフランス国鉄。2億円近いお金が税金から出たり、国鉄が後援についたりと、国家の支援が大きいのも、このマンガ祭の特徴である。
アングレームには国立バンドデシネセンター(CNBDI。正式には「国立バンド・デシネ及びイメージ・センター」Centre national
de la bande dessinee et de l’image。 1990年に本格的オープン。2008年一月には名称変更され、「国際バンド・デシネ及びイメージ都市」Cite
international de la bande dessinee et de l’imageとなった。写真)もあり、中には国立のバンドデシネ図書館もある。フランスではマンガ(=バンドデシネ)を「第9の芸術」として国が支援しているのだ。
さて、今年初めてお目見えした「マンガビルディング」だが、他の会場より客層が若い。20代が中心で、女の子の姿も目につく。もともとバンドデシネの読者はほとんどが男性で、女性向けの市場がなかったのだが、翻訳された日本のマンガはフランスの女性読者をも惹きつけている。今年は「マンガビルディング」ではCLAMP展を開催中。通路には大きな『NANA』のポスターも目立つ。
驚いたのはCLAMP展の隣で、同時に「昭和の絵師」と呼ばれる上村一夫の展覧会も開催されていたこと。さすがフランス、というべきか。
新しい作品と同時に、時代を越えて残る作品や作家を意識的に評価していこうとする姿勢があるのだ。翻訳されている日本マンガも、新旧どちらもあって、「こんなものまで!」と驚くような多彩さ、層の厚さ。まさにフランスではマンガ(=バンドデシネ)は芸術であり表現なのだ。それがフェスティバルの性格にも表れているように思う。
そのせいか際立った特徴として、アングレームにはコスプレイヤーがいない(同じくフランスで夏に開かれるジャパン・エキスポではみかける)。これは、マンガ関係のイベントでは実はけっこう珍しいことなのである。
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