しゃがみ込み動作を用いた足関節背屈制限の改善方法:足関節起立矯正台使用方法との比較
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抄録
【はじめに】足関節背屈制限に対しては、温熱を主体とした物理療法に加えて、種々の徒主的治療と足関節起立矯正台を使用しての改善を目指す方法が一般的である。しかし、その治療効果には必ずしも満足していないのではないだろうか。今回筆者らは、足関節背屈制限を足圧中心の前方移動の未学習という捉え方をし、その改善方法としてしゃがみ込み動作に着目し、足関節背屈制限を有する症例に対し臨床応用を進めた結果、治療効果を示したので、理論的推察も含め報告する。<BR>【対象】2002年2月から2003年9月までに当院整形外科にて、足関節果部骨折で遠位部の靱帯断裂が無いタイプで、観血療法を行い、理学療法が処方された患者のうち、膝関節や股関節に既往がなかった25例(25関節)であった。そのうち12例(12関節)を足関節起立矯正台治療群(Control群、以下C群、平均年齢38.6歳±15.9歳)、13例(13関節)をしゃがみ込み動作を用いた治療群(Squat群、以下S群、平均年齢39.3歳±16.1歳)に分類した。<BR>【方法】1)C群治療内容 温熱を15分施行後、モビライゼーションと足関節起立矯正台使用。2)S群治療内容 温熱を15分施行後、モビライゼーションとしゃがみ込み動作を用いた。なお、理学療法期間中にステロイド等の関節内注射は一切行われていない。治療効果の判定は改善された関節可動域(以下ROM)を術後8週、10週で測定した。ROMは自動とし、日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会の基準に従った。C群とS群との有意差は危険率5%以下にてF testおよびStudent'st‐test、Welch'st‐testを行った。<BR>【結果】1)術後6週(理学療法開始時)での比較、C群:1.1±1.1°、S群:1.5±1.6°であり、両群間に差を認めなかった。2)術後8週での比較、C群:2±1.3°、S群:5.9±1.8°であり、Student's t-testではC群に対しS群の有意差を認めた。3)術後10週での比較、C群:3.5±1.9°、S群:11.8±3.6°であり、Welch's t‐testではC群に対しS群の有意差を認めた。<BR>【考察】今回の結果から、足関節の背屈制限に対して、足関節起立矯正台使用より、しゃがみ込み動作を用いる方法で効果を認めた。足関節起立矯正台使用での問題点は、1)足圧中心の前方移動が得られにくい。2)背屈制限の改善は静的なものであり、動的な改善には直結しにくい。3)運動効果に即効性がなく、継続に対する動機付けとして弱い。などと考えており、今回の方法では、1)動的な運動の中で、足圧中心の前方移動を繰り返すことで、学習効果が生じやすい。2)ROM改善効果に即効性を認める事が多く、継続の動機付けとしても強い。などの理由で効果を認めたと考えている。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003(0), C1008-C1008, 2004
公益社団法人 日本理学療法士協会