スペインのマンガ専門店
翌日からは、回りきれなかった展示やお店などを回るとともに、マンガ専門店を回ります。これはバルセロナの後、マドリードにも移動して調査。いろいろと面白い発見がありました。
バルセロナで一番大きいのは、先述のノルマの直営店。私たちは降りる駅を間違えてえんえん歩き、途中で道を聞くためにスペインからイタリアのYさんに電話する(笑)という騒動がありましたが、基本は凱旋門を背にして左側すぐです。1階はアメコミとBD、日本マンガは地下で、お客さんがいっぱい!とくに「マンガの描き方本」がすごくたくさん並べてあるのが目を引きます。中を見ると、コマ運びというより「絵」の描き方に特化している本が多いようです。また、「マンガで日本語」というような本も多い。
一方、マドリードでは、市の中心の大通りからちょっと入ったところにある広場を中心とした「Callao」という地区に、Madrid
Comics、Otaku Center、Generacion X、Atlantica Manga, Metropolis、Elektra
など、10くらいの専門店が密集しています。とくに多いのは、Calle de la EstrellaとCalle Lunaという通り。それぞれ短い間に3~4軒の専門店が。
バルセロナでもノルマの周りに小さな店がいくつかありましたが、このように専門店が一か所に密集しているというのは、スペインにおいてはまだまだ日本マンガはマニアのもの、という位置づけを表してもいるでしょう。とはいえ、あるのはいずれも街の中心部ですけどね。
この探訪で一番の発見は、古書も置いている専門店で古い雑誌のバックナンバーを見つけたことです。やはり思った通り、ホラーマンガ雑誌が複数出ている!それに、この妙に目を引くかっこいい雑誌は何? Metal……『メタル・ユルラン』だ!
『メタル・ユルラン』は70年代にフランスのメビウスを中心に創刊され、世界中のアーティストに大きな影響を与えた雑誌です。タイトルは『へヴィ・メタル』という意味で、アメリカでもその名前で発行されています。ここで見つけたのはスペイン語の『メタル・ユルラン』。しかも日本マンガ特集号まである!
また、この専門店街のすぐ近くの大型本屋さんFNAC(フランス系)と、デパートEl
Corte Inglesの中にある書店でもたくさんのマンガやコミックを扱っています。ここで一番の収穫だったのは、スペインの少女マンガ史の発見!!
ベルナベさんも言っていましたが、スペインでは80年代まで「少女マンガ」雑誌がありました。具体的には、古くは『SISSI』、それを引き継いだ『LILY』といった雑誌です(私もこのフランス語版は見たことがあります)。欧米では「少女マンガ」はかなり早い時期に消滅していて、少女向けタブロイド紙が長く発行されていたフランスでも、70年代の初めにはなくなってしまいましたから、スペインのこの例はかなり珍しい。なかでも有名なのは『ESTHER』という作品で、バルセロナでも何冊かは手に入れたのですが、デパートの書店に探していた1巻が!おまけに、この『ESTHER』の作者が編集した『スペインの少女マンガ誌』という本があるではありませんか!半分以上がカラーページで、スペインの少女マンガの歴史が、雑誌や作品の写真入りで一望できる!
このように、他のヨーロッパの国とは一味違うスペインマンガ文化。さらにスペイン語圏のマンガを探求するために、来年はアルゼンチンの調査を予定しています。みなさん、お楽しみに!
|