中東のアニメ・マンガ基礎事情:「人物画禁止」
さて、今年10月27(木)~29日(土)の間に行われたのが、アブダビ初のアニメフェスティバル、その名も「ANI:ME」。
なぜ土曜日までの開催なのかというと、日曜日は宗教の規定に従って完全な安息日だから――と思いきや、アブダビでは金曜が宗教上の休日で、日曜はなんと平日なんだそうです。だから金曜日の午前中に大人の男性はみんなモスクへ行き、土曜日も学校は休日。つまり子供たちは金・土とお休みなのですが、土曜日は休日の後の半ドンで、午後から始まる会社もある。同じ半ドンでも、休日前か休日後かで、日本とは休みの午前と午後が違うんですね。そこでまず、中東との根本的な文化の違いにびっくりします。
中東でアニメが人気になり始めたというのは数年前から言われ始めてはいましたが、「人気と言っても、ほぼドバイに集中」というのがこれまでの情報でした。
なにせイスラム教では、そもそも「人物画を描くこと自体、宗教上のタブー」なのです。パリのシャルリエブドのテロ事件で、イスラム教では「偶像崇拝禁止」だから、神や預言者の絵姿や彫像は絶対禁止、というのを知った人も多いと思いますが、それほどの強い禁止ではないにしても、絵を描くなら風景画のみ、人物画は基本的にダメ、というのがイスラム文化です。だとすればマンガやアニメはそもそも奨励されるはずがない。とはいえ、なぜある程度は許容されているかというと、「外国の文化だから」。
一方でドバイは、住人の8~9割が移民という土地柄ゆえに、他のイスラム圏よりも規制がゆるやかで、かつ経済的にも余裕がある。ゆえにアニメ・マンガ関連の店やイベントはほぼドバイに集中しているという報告を、たしか6、7年前のコミケで聞いた覚えがあります。実際、ドバイでは5年ほど前から、ミドルイースト・フィルム&コミコン(MEFCC)という、アメコミ中心のコミックイベントが行われています。
しかし近年では、ドバイ以外の土地でもアニメ・マンガ関連のイベントを開こうとする動きがあり、今回、ドバイも所属するアラブ首長国連邦(UAE)の首都であるアブダビ(ドバイから車で1時間~1時間半)で開かれた「ANI:ME」がその皮きりの一つというわけ。そして私は今回、「トライガン」「血界戦線」の内藤泰弘さんをこのイベントにゲストとしてご案内するため、この地を訪れたわけなのでした。 |