原発廃棄物、処分法に新提言 東工大の今田教授に聞く
編集委員 滝 順一

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2012/10/3 7:00

「また数百年間に科学技術の革新が試みられるだろう。原子力維持の立場からは、廃棄物量を減らすため原子炉における核燃料の燃焼度をあげ、核燃料サイクルを利用することが選択肢の一つになりうる。脱原発の観点からは、再生可能エネルギーへの転換で原発依存度を下げるのも道だ。また廃棄物の放射能が減衰する半減期を短くする核変換技術といったものもモラトリアム期間中に頑張って実用化できるかもしれない」

――暫定保管場所がずるずると最終処分になるのではないかとの心配もある。

「地域の住民、自治体ときちんと契約し、取り出して移す際の条件を明記する必要がある。また保管に信頼をもってもらうため政府や電力会社の機能一部を移転し、大型の研究施設やデータセンターを保管場所の近隣につくり雇用を生み生活基盤をつくることも、住民に安心してもらうには大事だ」

「これは私個人の考えだが、大きな施設を日本に一つつくるより、電力会社ごとに保管場所を設けるのが望ましい。そうすれば空き施設が常に9カ所あり柔軟な運用ができる」

――数百年は人の一生の何倍かになり、最終処分と事実上、大差ないようにも受け取れます。

「最終処分してふたを閉めてしまったら、その後にもし火山活動や地震でしみ出したらどうするのか。こういう心配は素人考えかもしれないが多くの住民が抱くだろうし、それを専門家が説明しても納得させることは難しい。万が一に移せるならともかく、ふたをしてしまうことに抵抗感がある」

「廃棄物問題は遠からず世界規模の問題になる。世界中で原発を建てており大変な量の廃棄物が発生する。米国も使用済み燃料の処分場所として考えてきたユッカマウンテン(ネバダ州)の計画が行き詰まっている。地球上のどこかに適地を探し、いい場所があればそこに埋めたいと考えている。一国では対処しきれず、50年もたてば核戦争より廃棄物問題が国連安全保障理事会の重要議題になるのではないか。そうなるときまで保管する意味はある」

 ■取材を終えて
 「国民的議論を喚起し、原発反対か推進かに二分されている議論を同じテーブルに着けるようにしたい」とも今田教授は話す。廃棄物処分の問題は賛成・反対にかかわらず逃げられない課題で、意見対立を超えて原子力政策を議論する端緒となると考えている。総量管理というアイデアはまさにそこを目的としている。
 これまで原子力にかかわる工学分野の研究者が中心に議論し政策がつくられてきた。学術会議の委員会には人文社会系の科学者が参加し委員長も社会学者が務めた。「人文社会学者にまとめられるか」との声もあったようで、とりまとめには苦労されたようだ。
 暫定管理でコンセンサスが得られるかは疑問だ。暫定と言っても数百年は長い。空の施設も同時に用意して万が一には移すというのは合理的だが、それで納得が得られるのかどうかわからない。ともあれ注目すべき提案であり政府や電力会社はしっかり受け止める必要がある。

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