- セシウムが体外に排泄される速度は比較的速いが、放射性セシウムの場合は放出されるβ線やγ線による内部被曝線量が健康への影響という点から問題になる
- 放射性セシウムが重要視されるもう一つの理由は、食物連鎖を通して人体に入りやすいからである
- カリウムはほとんどが赤血球に含まれる。カリウムは細胞内液に多く分布する。
- セシウムはナトリウムとカリウムの中間の分布をしている。血液中の75%のセシウムは赤血球に含まれている
- 経口投与されたCs132の全身分布は、投与後30分で主として胃の周辺に集まっているが、1日、2日と経過するに従い、肝臓、心臓、腎臓およびふくらはぎに相当する部分に放射能のピークが現れ、約7日でほぼ全身に分布するようになる
- 体内に入ったセシウムは主に尿に、一部が糞便に、さらにごくわずかな分布が汗の中に排泄される。投与後のセシウムは、ごく短い生物的半減期で減少する部分と長い生物的半減期で減少する部分とに区別することができる
- 日本人男子の場合、長い生物的半減期は約50~160日、平均85日である。もちろん個人差や人種による違いはあるが、平均値としてこの範囲に入る報告が多く、ICRP Publ30では、セシウムに対する生物的半減期を110日としている
- フォールアウト中に含まれるCs137は地面に落ち、根から吸収されて牧草に入る。このCs137で汚染された暴走を雌牛がたべることで、Cs137はやがて牛乳中に出現し、Cs137の含まれた粉乳を飲む乳児の体にCS137が蓄積することになる
- 乳幼児の生物的半減期は成人に比べて短く、新生児や乳児で約10日から25日である。また、9歳から15歳の子供では40から60日程度で、成長するにつれてしだいに成人の約110日に近付いていく、妊娠中は、生物的半減期が60%まで短くなる
- 摂取した放射能の7%が最初の一週間に、10%が2週間までに母乳中に分泌されている。
- 摂取した43%が母乳中に分泌されるのは、食事を通じて摂取する放射性セシウムの量と、体内の放射性セシウムの量との間に平衡が成り立っている場合
- 飼料中のカリウム含量を増すとセシウム137の排泄が促進されることが明らかにされている
- 飼料中のカリウム含有量を増大するとセシウム137排泄量も増加する。しかし、カリウム量には直接比例せず、8%以上にしても排泄の速度は大きくならない
- セシウム134がいったん組織に分布してしまうと、カリウムの沈着予防効果が余り無いことを示している
自然生体物質
- 微生物バイオマスは、合成キレート樹脂よりも優れたウラン濃縮能を示す。一方、植物性生薬バイオマスやポリフェノール系、多糖類、タンパク質系の生体物質の中にも、合成キレート樹脂に匹敵するか、それ以上の放射性核種濃縮能をもったものが存在する
- 微生物のなかには、特定の放射性核種を高濃度に、しかも選択的に自分の体内に濃縮する能力を持つものが存在する
- アカヒダワカフサタケ、エノキタケなどの菌種はセシウム137に対して高い濃縮性をもっている
- クリの内・外皮、たまねぎ外皮、柑橘類果皮などの植物系バイオマスは、優れたウラン濃縮能をもっている
- クリの内・外皮にはタンニン系化合物が、またたまねぎ外皮、柑橘類果皮などのバイオマスにはクエルセチンなどのフラボノイド系化合物が多量に含まれており、これらのポリフェノール系化合物がウラン濃縮能に強く関与しているものと考えられる
- シナノキ、キタコブシなどの広葉樹、ハイイヌガヤ、トドマツ、モミなどの針葉樹の樹皮にも高いウラン濃縮能が認められる
- 生薬も、またウランなどに対して優れた濃縮能を示すがその濃縮能は生薬の種類の違いによってかなりの差がある。サンシュユ、ゲンノウショウコ、ボケなどには高いウラン濃縮能が認められる
- 生薬中ではこれらのタンニン系化合物がポリオキシフェニル基を介して、ウランなどの放射性核種と強いキレート結合をつくっているものと考えられる
- 植物起源性の生薬は放射性核種への配位能が高く、かつ副作用も少ないことから、将来有望な放射性核種除去剤として期待できる
- 植物体に広く分布しているペクチンの脱メチル化物であるペクチン酸(α-D-ガラクツロン酸からなる多糖)や、渇藻類に存在している多糖であるアルギン酸などのように、その分子中に多数のカルボン酸配位子をもっている多糖は、ウランなどの放射性核種に対して強い親和性を示す
- 植物体に広く分布している生体色素であるクエルセチンやモリンなどのフラボノイド系生体物質は、ウランなどに対して高い濃縮能を示す
- これらのフラボノイドはクエルセチンの例に見られるように、フラボノイドがウラニルイオンと5員環の安定なキレート結合をつくるためと考えられる
- 分子内に多数のポリオキシフェニル基をもつタンニンは、ウラン、トリウムなどに対して極めて強い親和性をもっている
- 柿渋には多量の結合型タンニンが含まれているが、この柿渋にアルデヒド化合物を作用させて調整した固定化柿渋タンニンは、担体1gあたり1.7g(14mEq)ものウランを吸着することができ、合成キレート樹脂の5~6倍に及ぶ優れたウラン濃縮能がある
- 固定化柿渋タンニンのカラム法によるウラン吸着の様子を示したもので、カラムの選択ブに黒褐色のウラン吸着層が観察される。柿渋タンニン、五倍子(ゴボウシ)タンニンなどのタンニン系生体物質がウランに対して極めて強い親和性を有するのは、タンニンの分子内に多数存在しているポリオキシフェニル基が、図に閉めしたように、ウラニルイオンと安定な5員環のキレート結合をつくるためである。
- これらのタンニン系生体物質は、ウランのみならずトリウムに対しても高い濃縮能を示す。従って、柿渋タンニン、五倍子タンニンなどのタンニン系生体物質は、ウランやトリウム系列の放射性核種の除去剤として利用できる可能性が大きい
- 微細緑藻の一種であるChlorella regularisは 優れたウラン濃縮能をもつが、これには細胞内に存在しているタンパク質が強く関与している
- 微生物が生産するメタロチオネイン様の金属結合タンパク質も将来、放射性核種の除去剤として開発できるのではないかと期待される
- 放射性ストロンチウムの摂取が長期に及ぶ場合には、アルギン酸は極めて有効な排泄促進剤、防護剤となる。
- キトサンはアルギン酸と同様、前もって摂取しておくことによって、著しい体内残留率の低下、すなわち被曝低減化をはかることができる
- 被曝が長期に渡る場合は、食品そのものあるいは食品などに添加して日常的に摂取が可能な物で排泄促進ができれば最も好ましいわけで、今後とも天然由来の除去剤の開発研究が大いに期待される
- 昆布、カジメ、アラメ、などの褐藻類の細胞間を充填する粘質多糖であるアルギン酸消化管内の放射性ストロンチウムの吸収抑制剤、除去剤.処置が遅れるといずれもストロンチウム85の排泄促進効果は小さい
- ①カルシウムの挙動、整理に関する情報が多いこと、②海水や生物体中のカルシウム濃度はよく安定していること、③カルシウムの挙動に影響する要因はストロンチウムにも同様に作用すること。④ストロンチウム濃度は生物体、臓器、組織で大きな差があるが、ストロンチウムとカルシウムの比(Sr/Ca)は変動が小さいこと
- ストロンチウムとカルシウムが同時に存在した場合、ストロンチウムをより多く取り込む
- アルギン酸とともに放射性ストロンチウムの除去に有効であるキチン・キトサンのOR値は0.3~0.6程度で、両者の排泄促進機構が異なっていることが推測される
- 絶食させたり、ミルクあるいはビタミンDとともに与えると、吸収率は高くなる。さらに低カルシウム、低マグネシウムあるいは低リン食を与えた場合にもストロンチウムの消化管吸収は促進される。(ストロンチウムによって食品が汚染されている時点では、ビタミンDの過剰補給を避けたほうがよい)(絶食は厳禁)(カルシウムとマグネシウムの重要性の認識)
- ストロンチウムの代謝は年齢によって異なっている。とくに、成長過程にある乳幼児では骨形成能が活発である為、より多くのストロンチウムを骨組織中に取り込む危険性がある
- 妊娠中の母体が放射性ストロンチウムを摂取すると、その一部は胎盤を経て胎児に取り込まれ、胎児の発育不全や死産を招く場合があることが1940年代後半に明らかにされている
その他
プルトニウムは口から体内に入っても水に溶けにくいため排出されやすいが、肺などにたまると長時間とどまり、がん発生が懸念されている。 通常、プルトニウムは原子炉に閉じ込められている。しかし、福島第1原発事故では、水素爆発で建屋外に放出され、敷地内で土壌1キロあたり最大0・54ベクレルが検出された。
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