ボーボワールの少女との悲恋物語、没後34年を経てついに出版
【10月7日 AFP】フランスを代表するフェミニストで、「第二の性(The Second Sex)」などの作品で知られる作家シモーヌ・ド・ボーボワール(Simone de Beauvoir)が、「個人的すぎる」として公開していなかった作品が7日、没後34年を経てついに出版された。
「Les Inseparables(仮訳:分かちがたき2人)」は、2人の反抗的な少女の情熱的で悲劇的な友情を描いており、自身の少女時代に少女と熱烈な恋に落ちた思い出をつづっている。
作品は、「第二の性」出版の5年後の1954年に完成していた。
しかし、パートナーのジャンポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)がこの本を「うんざり」しながら読んでいたため、ボーボワールは非常に自叙伝性が強いこの作品をお蔵入りにしたという。
作品内でボーボワールは、「ザザ(Zaza)」の愛称で知られる新しい同級生エリザベット・ラコワン(Elisabeth Lacoin)に瞬く間に魅了されたことを書いている。ザザは脳炎を患い、21歳の若さでこの世を去った。
「Les Inseparables」は感動的な成長過程を捉えた小説で、ボーボワールが慣習的な期待と闘うさまを描いていると評されている。また、「20世紀初めのパリにおける、女性のあるべき姿という伝統的概念にもがく、2人の若い女性の友情」というテーマは、「第二の性」に通じるものがあるという。
ボーボワールはその後、複数の女性と付き合ったが、うち何人かはサルトルの愛人でもあった。
ボーボワールは「娘時代―ある女の回想(Memoirs of a Dutiful Daughter)」で、初めてザザとの関係を書いている。
第1次世界大戦(World War I)中から1920年代に、2人は非常に親しかったため、学校の同級生らや先生から「inseparables(分けられない二人)」と呼ばれていた。
哲学者ポール・B・プレシアード(Paul B. Preciado)氏は仏朝刊紙リベラシオン(Liberation)に対し、「ボーボワールに小説(Les Inseparables)を出版しないように助言したのは、これにあまり関心を示さなかったサルトルだったと言われている」と話した。
しかし、ボーボワールの養女、シルビー・ルボン・ド・ボーボワール(Sylvie Le Bon de Beauvoir)氏は、数回書き直したにもかかわらず、最終的に「Les Inseparables」の出版を断念したのはボーボワール自身だったとしている。
「Les Inseparables」の前書きでシルビー氏は、ボーボワールはザザへの愛情の最終的な描写に満足していなかったと主張している。
英語版は2021年に出版の予定。(c)AFP/Hugues HONORE / Fiachra GIBBONS