▼行間 ▼メニューバー
ブックマーク登録する場合はログインしてください。

オヤジのやり方

作者:竹仲法順

     *

 本当にひどい。最近、呆れ果ててしまっている。なぜ、あんな役立たないヤクザ者を社員として雇い、使うのか?すっかりアイツらに乗っ取られてしまったな。古き良き時代は完全に終わった。これからは坂を転がり落ちるボールのように、加速度を付けて悪くなっていくだろうな。

 まあ、落ちぶれたということだ。叔父の会社もひどいのだが、オヤジの会社はそれにも増してもっとひどい。何がきっかけかというと、今の事務員が入ってきてからだ。何でも派手にやるようになった。さも、そいつが司令塔ででもあるかのように傍若無人に振る舞う。

     *

 だが、何事もいつかは終わる。オヤジのひどいやり方なり、恐怖政治の類もいずれ終わるだろう。放っておいて一向に構わない。会社自体悪性腫瘍なのだが、程なく瓦解する。全くひどいのだし、いずれ目が覚めるだろう。自分たちのやってきたことが全部裏目に出て。

 そもそも、なぜ座敷の開放なんかしたのか?理解に苦しむ。うちの家は伝統と格式があって、他人が容易に入れる家じゃない。それこそ、恥の上塗りだ。ただでさえ、ジリ貧気味の会社のトップが考え付いた愚策である。全く馬鹿げているのだが……。

     *

 ただ、ここに来て陰りが見えてきた。それはどうやらオヤジの寿命が持たないということ。これは吉報。オヤジが入院したり、老人施設などに入所したりして、家からいなくなれば、全部立ち消える。そして死んだりした場合、身内だけで葬式をしたりして、その後いろいろ考える。

 まあ、元々やり方が悪かったのだ。前述したように、ヤクザを使うのだから。振り込め詐欺グループに暴力団が絡むのと一緒である。ヤクザが作った饅頭を、ヤクザの手で販売する。売れるわけがない。そんなパチもん、誰が食うのか?騙されるなと言いたい。酒蔵作りなわけがない。裏の工場で暴力団が作ってるだけ。一緒にしちゃまずい。元来、酒蔵にはヤクザが絡んでいるのだが、うちの場合、もっと根深くて悪質だ。

     *

 最後に一言申し上げておくが、これから先、饅頭屋がよくなることはないだろうね。発展することなど、まず有り得ない。落ちていくのである。真っ逆さまに。そして墜落する。いいことは一つとしてない。単に醜い争いごとをし、名家の看板に深い罪を刻み付けただけ。もちろん因果応報だ。悪い結果が出るのは、悪いことを仕出かしたからに他ならない。会社自体、オヤジの代で廃業である。当然の結果として受け止めるしかない。

 ひとまず、きつめに一筆書かせていただきました。

 ではまた。

                               (了)




  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想は受け付けておりません。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。