第二話 ビラン視点
兄ビレインを城の地下牢に幽閉することに成功したビランは、内心歓喜するしかなかった。
光属性の魔力、光魔力を扱えず苦しんでいた時、兄のビレインは自分の光魔力を使うことで助けてくれた。
体が弱く光魔力の才能に溢れている弟に対して、無能な兄−−−そんな肩書をつけているが実際のビレインは光魔力の扱いに長けていた。
ビランがようやく光魔法を扱えるようになってからも、ビレインが協力しているのを知っていることも、ビランにとっては煩わしくなる。
もうビレインは追い抜いていると考え、試しにビレインに協力は不要だと言って光魔法を扱うも、本来の自分とは思えないくらい酷いあり様だった。
その現実を受け入れられないビランは、ビレインが自分を乱す妨害を影で行っていると推測して、本来持っている光魔力が使えなくなっていると思い込んでいた。
父さんと母さんにビランを見ておくよう言われたからと言って、ビレインは必ず側にいた。
−−−大した力もないのに、弟に協力するフリをして楽に生きようとする小賢しい兄。
勇者になって、無能な兄が汚点だと考えたビランは、姉が本当に無能だと思い込んでいた。
今まで両親に溺愛され、才能があると確信していたビランは兄ビレインの妨害を受けないよう、嵌めることを決意する。
婚約者となったソウテイン王女を利用して、魔法学園の生徒と話を合わせる。
それだけで、無能な兄として評判だったビレインは、簡単に幽閉されることが決まった。
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ビレインを幽閉してから数日が経ち−−−勇者としての役目を果たしながら、ビランは自室で休んでいた。
もうビレインは魔法を跳ね返す特殊な檻に入れられているから、魔力による妨害はできない。
それなのに……ビランは光魔力を扱うことが困難になって、戸惑っていた。
「どうして、前みたいに光魔力が扱えなくなっているんだ……。これだと、本当に……」
−−−兄のビレインが協力してくれなければ、ビランは光魔力を巧く扱えない。
それがバレてしまった場合のことを考えて、バレないようにビレインを咎めた。
心のどこかで考えてしまう最悪の事態を、ビランは必死に否定する。
幽閉されている城の檻はセイソル家の屋敷から距離があるし、何より魔道具で調べたところ、干渉されていないという結果が出ている。
誰からの妨害を受けているわけでもなく……本当に光魔力を巧く扱えずに疲弊している。
周囲の期待に応えられていないビランは、明日も期待に応えられなければどうしようと、不安になりながら呟く。
「まだ勇者になったばかりで緊張してるってごまかせてるけど、どうすればいいんだよ……」
そこまで考えて−−−後悔している自分自身を否定する。
これもきっと兄ビレインの計画に違いないと、ビランはいつも通り兄のせいにしながら立ち直る。
「そうだ……。これは兄さんの魔法による嫌がらせの影響をまだ受けているだけ、時間が解決してくれるはずだ!」
今のビランは、不可能だと理解しながらも兄のせいにするしか精神を保てなくなっている。
そして翌日、ビランは城に呼び出されて−−−現実を知ることになっていた。
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