ノーベル化学賞にゲノム編集 遺伝子を効率的に改変 欧米の女性2人

2020年10月7日 21時23分
 【ストックホルム共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは7日、2020年のノーベル化学賞を、生物のゲノム(全遺伝情報)を効率的に改変できる「ゲノム編集」の新手法を開発した欧米の女性研究者2人に授与すると発表した。フランス出身でマックス・プランク感染生物学研究所(ドイツ)のエマニュエル・シャルパンティエ所長(51)と、米カリフォルニア大バークリー校のジェニファー・ダウドナ教授(56)。
 ゲノム編集技術は複数の種類があるが、2人が共同で12年に開発した「クリスパー・キャス9」は格段に扱いやすいのが特長。同アカデミーは、がんなどの新たな治療法開発につながりつつあることに触れ「生命科学に革命的なインパクトを与えた」と評価した。新型コロナウイルスの検査法開発にも応用されている。
 2人は細菌がウイルスから身を守る仕組みを研究。生物の設計図であるDNAの特定の部分にくっつく「案内役」と、その部分を切断する「はさみ」が遺伝子の機能を失わせることを解明。この仕組みが遺伝子改変に応用できることを示した。
 受賞はならなかったが開発には日本人も貢献した。九州大の石野良純教授が1987年に特定した大腸菌の遺伝情報の一部が、案内役として使えることが後に分かった。
 一方で18年11月には、この技術でエイズウイルス(HIV)に感染しないよう遺伝子改変した人間の受精卵から双子が生まれたと、中国の研究者が報告。安全性が確立していないため激しい非難を招いた。身長や知能を改良した子ども「デザイナーベビー」がつくられる懸念もあり、規制の議論が世界で進んでいる。
 賞金は1千万クローナ(約1億2千万円)で2氏で等分する。授賞式は新型コロナの流行を考慮し、オンラインで12月10日に開催。受賞者は居住国でメダルと賞状を受け取る。

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