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2020年10月07日

【新型コロナ】COVID-19が1型糖尿病を引き起こす? 自己免疫が関与か

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COVID-19は糖尿病を引き起こすか?
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後、肺や腎臓の障害が現れたり、心臓などに長期間、影響が残るケースがあることが明らかになってきた。最近これに、インスリン依存状態となる糖尿病もCOVID-19によって引き起こされる可能性があるとする報告が加わった。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染後、COVID-19の症状は現れなかったがインスリン依存状態となり、入院加療が行われた19歳のドイツ人青年の症例報告が、「Nature Metabolism」に9月2日、論文掲載された。University Medical Center Schleswig-Holstein(ドイツ)のMatthias Laudes氏らが報告した。

 この青年が糖尿病を発症する数週間前、両親2人がCOVID-19を発症。家族全員に検査が行われ、この青年も抗体検査が陽性だった。ただしCOVID-19関連症状はみられなかった。しかしその後、倦怠感、多飲・多尿、体重減少などの高血糖症状や腹痛があらわれ、緊急外来を受診し糖尿病と診断され、入院に至った。

 入院時の血糖値は550mg/dLを超えており、医師は1型糖尿病を疑ったが、1型糖尿病に多い遺伝的変異は見つからなかった。

 医師たちは、これは1型糖尿病なのか2型糖尿病なのか、あるいは新しい病型の糖尿病なのか判断がつかなかった。また、1型糖尿病でないとすれば、糖代謝異常はいずれ改善する可能性もあるが、そのような経過をたどるか否かもわからなかった。

 何より、SARS-CoV-2感染が糖尿病状態を引き起こした原因かどうかも確信がなかった。しかしそれでもLaudes氏らは、SARS-CoV-2感染が1型糖尿病を発症させたのではないかと考えている。

 同氏らは、膵臓のインスリン分泌細胞であるβ細胞にも存在する可能性のあるACE2受容体に着目。ACE2受容体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパクが付着する場所とされている。同氏の理論は、ACE2受容体に影響を与えるSARS-CoV-2が、β細胞を障害し糖尿病発症に至ったというものだ。

 この機序は、自己免疫疾患として1型糖尿病が発症するプロセスに近い。そして、米レノックス・ヒル病院のCaroline Messer氏によると、「COVID-19パンデミック以降、自己免疫が関与している糖尿病の新規発症が増加しているようだ」とのことだ。

 Messer氏は、SARS-CoV-2感染にともないβ細胞が破壊される可能性を示したLaudes氏らの説を「理にかなっている」とし、1型糖尿病の新しい亜型である可能性にふれ、「SARS-CoV-2感染から約4週間後に、1型糖尿病の有無を確認する必要がある」と述べている。

 一方、米フロリダ大学糖尿病研究所のMark Atkinson氏は、同大学発行の「UF Health」のニュースの中で、この考え方に否定的な見解を示している。

 同氏らは、組織バンクに保存されていたCOVID-19に罹患せずに亡くなった非糖尿病36人の膵臓を観察したが、β細胞からはACE2を発見できなかったという。

 この結果を同氏は、「SARS-CoV-2がβ細胞を破壊し、糖尿病を発症するとの考え方を支持するものではない」と述べている。なお、Atkinson氏らの研究結果はプレプリントとして公開されたものであり、査読を経て論文掲載されるまで予備的なものと見なされる。

 これらの新たな知見について、米JDRF(旧・青少年糖尿病研究財団)のSanjoy Dutta氏は、「より多くのエビデンスを得られるまで、SARS-CoV-2感染がβ細胞の破壊につながるのかどうかは判断できない。COVID-19に関連する可能性のある糖尿病を1型糖尿病として一律に扱うのは時期尚早だ」と語っている。

[HealthDay News 2020年9月3日]

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[ Terahata ]

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