2004年05月25日

講座:女子割礼・アフリカ(悲惨です)


5e7de239.jpg 実を申しますと、エロネタには悲しくなるようなものが多々ございます。わけても本日のは悲惨です。

 男子の割礼なら多くの方が聞いたことがおありでしょうけれど、アフリカ諸国には女子の割礼があります。
 現在存命のアフリカの淑女の中で、割礼手術を受けた人の数、1億2千万人。日本の人口と同じくらいですね。それが28カ国に散らばって住んでいるといわれます。

で、どんなものかと申せば、

1/ クリトリスの切除。(アフリカの一部と中東の一部。7~10才の少女)
2/ クリトリスとその他の部分(主に小陰唇)の切除。(アフリカの広範な全域。7~10才の少女)
3/ 陰部封鎖。クリトリスと小陰唇を切除する。そして左右の大陰唇に長い傷を作り、傷口を合わせて縫うか、接着し、治癒にともなって癒着させる。尿と経血が出る穴は、木切れをさしこんで一つだけ作る。(エジプトのヌビア、スーダン、エチオピア。0~8才の少女) 治ったあとの外観は、つるりと平面的になった陰部に、穴がぽつりと開いている感じか。結婚に際して夫や近親者が、穴を指かナイフで広げて性交しやすくすることがある。

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 割礼をする理由は、古くからの慣習というのみで、明確には語られていません。
 アフリカの多くの地域では、性はタブー視されています。口にされること自体がめずらしいのです。
 女性の地位がひどく低いので、女性もめったに反対の声をあげません。

 私は他国の風習への偏見はかなり少ないほうです。日本人の価値観のわりと多くの部分が、このせまい日本か、せいぜい西洋の一部、そして現代という特殊な時代でしか、通用しないことを知っているからです。
 でも女子割礼ばかりは、「今すぐやめぃ!」といいたい気持ちです。

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 擁護派のあげる理由。

1/ レイプの予防。
 説得力なし。穴は開けてあるのですから。(そもそもレイプする男を野放しにするのが間違いなのでは?捕まえてちむぽを切除するべきです。)

2/ 「コーランに書かれている」から。
 イスラム教が普及した地域の一部に、このような誤解があるようです。でもコーランのどこにも「女子も割礼すべし」とは書かれていません。ハディス(ムハンマド(マホメット)の言行を記した書物)に、信徒へのすすめとして、男子の割礼が言及されているのみ。

3/ 少女を完全な女にするため。
 女子割礼をする地域では、必ず男子割礼も行われているそうです。
「少女と少年は人間として未完成で、両性的である」という考え方があります。確かに性器の形って似ていますね。クリトリスは皮をかぶっているのでペニス、小陰唇はヒラヒラぶらさがっているので陰嚢。割礼で要らない部分を切り取ることで、少女は女らしく、少年は男らしくなるというわけ。
 一見なるほどと思わせますが・・・少年は包皮の先をちょっと取られるだけで、健康には何も影響がない。でも少女はクリトリスそのものを切除。危険な手術です。将来の性感を損ないます。精神的トラウマにもなります。ましてや小陰唇まで切ったり陰部を綴じたりするとは。不公平な感じがします。

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 要するに、女性の性感をなくすための技術なのでしょうね。
 クリトリスは大変密集した神経をそなえ、神経の糸は陰部全体に伸びています。クリトリスを切りとれば、快楽が大幅に失われます。そうなればセックスは将来の夫とする「おつとめ」に限られてくるでしょう。
 アフリカの殿方に多い「処女崇拝思想」のせいもあるかもしれません。
 従順な淑女を作り上げる方法なのです。きわめて男性中心的な風習です。

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 手術を受けないと、さまざまな偏見にさらされます。
 性欲のある = 淫乱な・娼婦のような、と見なされたりします。欠陥品よばわりされて、嫁のもらい手がなかったりします。
 アフリカではそういう女は暮らしていけません。女ひとりで経済的に自立する社会体制ができていないからです。未割礼の女性は畑仕事や水汲みに参加できない決まりがある部族もあります。
 つまり、なかば社会からの強制です。

都市部の裕福な家庭の娘が、進んで割礼を受けることもあります。親から学校を続けさせてもらう・仕事に就かせてもらう許しを得るために。「いい子にするからお願い」というわけですね。

 これがいくら法律で禁じても破られ続ける理由です。女性の地位そのものを上げなければ、割礼はなくならないでしょう。

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 執刀人は病院の医師のこともあります。
 でも多くは村の老女です。もちろん環境は不衛生で、消毒もしていないナイフを使ったりします。
 少女は出血や感染症で死ぬことがあります。治っても障害が残ることもあります。
 心に深い傷を負うことはいうまでもありません。不感症や膣痙攣に悩む女性がいます。

 子どもを出産するときに悪化することもあります。何度も出産し、何度も陰部封鎖をしたために、もうほとんど大陰唇が残っていない、という女性までいるそうです。
 ちなみにアフリカの男性には「子だくさんは男らしさの証」という価値観があります。望まない妊娠を女性が避けることは難しいのです。

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 私が女子割礼のことを知ったのは、『息吹、まなざし、記憶』(エドウィッジ・ダンティカット)や、『喜びの秘密』(アリス・ウォーカー、『カラーパープル』作者)から。いずれも割礼にまつわる心の葛藤を描いています。
 割礼の実体を伝えるテレビ番組を見たときには、呆然。最後に実際に手術された少女の悲鳴が流れたので、思わず吐き気をもよおしました。

 女子割礼廃絶運動NGOの支部が、日本にもあります。興味を持たれた方は検索なさってみてください。


***画像***
本文との関係性0.5%。子どもを抱く母親像。ナイジェリア、ヨルバ族。
ヨルバ族に割礼があるのかどうかは知りませんが、おだやかな像ですね。(『アフリカのかたち』)

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この記事へのコメント
 こんばんは。
 まだやってるんですね。
 女子の割礼って知ってましたけど、過去のものだと思ってました。
 クリトリスをすりつぶす、というのもあるみたいですが。
 しかし、アフリカには性器関連だけではなく、ピアッシングや人体改造にまつわる風習が多いイメージがありますね。それもストイックな宗教的儀式ではなく、美意識の根幹になってるような。
 ここらへんの理由に関する良著があればお教えいただきたいです。
 では。
Posted by lsty(エルエスティーワイ) at 2004年05月26日 01:20
なにをするんだ!いったい!
って感じです

しかし価値観というものは様々なもので一概に否定しづらいです
郷に入りては郷に従えということもありますし・・・
Posted by もとやま しんいち at 2004年05月26日 16:28
>lsty様
すりつぶす!!いででででっ!!(股間を押さえてジタバタ)
アフリカの美意識による人体改造は、ホッテントット族の小陰唇伸ばししか知りません。
不勉強すみません。

>もとやま様
異民族間の話題のタブーには、政治、宗教のほかに、性に関することも頑としてありますね。
話題に出したとしても、こればっかりは議論になりにくい。“民族の歴史”というばかでかいものか、“私的な問題”という内輪なものに、還元されがちだからです。
そうして出口を封じられてしまうと、意見が言いたくても、「その風習が好きなら続けてください」とでも言うしかなくなるんですよね。
で、私としてはせめてこう言ってみたいのです。
「仮に個人的にも社会的にもその風習を実行するかしないかを自由に選べる立場になったとして、なおも自分の意志で実行を欲すると思えるのなら」。

ただ日本在住のアフリカ大陸出身女性数人と話をしたところでは、アフリカで女性が尊敬されないのは本当に悲しいことだと。外国に住めるようなエリート女性だけでなく、現地の一般庶民の女性も声をあげ始めているようです。命の危険さえあるのに...。
割礼の是非はともかくとして、まずは状況から抜け出すことを自発的に願った人が抜け出していければいいなと思います。
Posted by 万里アンナ at 2004年05月26日 18:17
以下、SNNの方でのフォローをコピペ。


申し添えておきますが、アフリカはすばらしい大陸です。行ったこともないのに肩を持っておきます。
芸術や音楽における人類への貢献の大きさはいうにおよばず。
「多様性と共存」という難しい課題においても、見るべきものがあります。
日本は食べ物や原材料や雑貨など、いろんなことでアフリカ諸国のお世話になってます。
日本在住のアフリカンの殿方には、親切で知的でフレンドリーな人がいっぱいです。それにスタイルのよい美形もいっぱい(#^^#)。
アフリカンフェスタはとても楽しかった。
いまさらフォローにならない?(--;)
Posted by 万里アンナ at 2004年05月30日 18:01