東大総長選は、五神真現総長が、来年3月の任期満了に伴い行われたもので、次のようなスケジュールで進んだ。
選考開始の公示が4月28日に行われ、7月7日、代議員会による選挙で11名の候補者が選ばれ、同9日、経営協議会から1名の候補者が推薦された。次に、学内の教員8名と経営協議会の8名で構成される総長選考会議が、9月2日と4日、面接審査を行った。そのうえで開いたのが9月7日の総長選考会議である。
選考会議が選んだ第二次候補は、藤井輝夫副学長、染谷隆夫工学系研究科長、永井良三自治医科大学学長(経営協議会推薦・元東大医学部付属病院長)の3名だった。9月30日、この3名に対する有資格者2375名による意向投票が行われ、有効投票数1818票の過半以上の951票を獲得した藤井氏が選ばれた。
前述の梶田氏らが要望書で指摘した疑義は、具体的には以下のようなもの。
1. 候補者を絞り込む方法の明確な合意がなされぬまま、性質が不明確な投票が議長の強い誘導のもと、繰り返し行われた。
2. 突然議長から特定の候補に関する否定的な文書(匿名文書)の存在が示唆され、同候補が排除される大きな原因となった。
3. 総長選考会議内規では3名~5名の第二次候補者の選定が可能であるところ、あえて最少人数の3名に候補者を絞り込んだ。
このうち、2の「特定の候補」が排除される過程は、先のやりとりで見た通り。要望書には「特定の候補(宮園氏)」が、7月7日の代議員投票で得票数第1位(67票)であったことが書かれており、より不自然な印象を与えた。
1の「議長の強い誘導」については、見方の分かれる部分もある。4時間以上の議論のなかで、議長がある程度、強引に進めないと前に進めないのは確か。また、3の「3名への絞り込み」についても、3にするか、4にするか、5にするか、延々と議論が続く局面もあり、必ずしも強引ではない。