第8話:追放と覚醒【八】
「ほ、ほぅ。これはまた食い気味に拒絶してくれるではないか……っ」
まさか断られると思っていなかったのか、ラームの声は震えていた。
「落ち目の王国から、未来ある帝国へ鞍替えできるのだぞ? こんなチャンス、そうあるものではない。もう一度、じっくりよく考えてみたらどうだ?」
「いえ、けっこうです」
何度誘われても答えは同じだ。
この人の下では働きたくない。
「ぐっ、いったい何が不満なのだ!? 我ら『大魔司教』は高収入・住居保障・終身雇用! そして何より――この私の直属として働けるというのだぞ!?」
「……素晴らしい条件だとは思うのですが、すみません……」
一番最後の部分がとても嫌です、とはさすがに言えなかった。
たとえそれが真実であったとしても、人には言っていいことと駄目なことがある。『本音と建て前』もまた優しさの一つだ。
「はぁ……。その反応、
ラームは大きなため息をつき、がっくりと肩を落とした。
「世界の『正しい歴史』を学ばず、大魔王様を悪と断ずるなど……笑止千万! 優れた剣術の才があったとしても、所詮は王国の異教徒というわけだ!」
彼は語気を荒げながら、自らの懐に手を伸ばした。
「帝国に与せぬ愚か者には、大魔王様に代わって天誅を下すしかあるまい! ――これを見よ!」
そこから出てきたのは、漆黒の結晶。
(あれは……
魔法を封じ込むことのできる希少な鉱石。
あの凄まじい輝きから判断するに、相当高位の魔法が封じられていると見て間違いないだろう。
「これは大魔王ルーグ=ディルフォード様がお残しになられた、二千年前の聖遺物! そこに秘められたる魔法は第八位階――<
「だ、第八位階……っ!?」
「ふはは! 今更、恐れをなしても遅いわ! 愚かな異教徒どもめ! 偉大なる『滅びの力』にひれ伏すがいい!」
ラームが魔法結晶を砕いたその瞬間――漆黒の轟雷がほとばしった。
「ッ!?」
それはまさに速度という概念を超越した力。
魔法の発生を感知したとき――俺の胸部は、打ち抜かれていた。
「が、は……っ」
「ルーグ!?」
「ルーグ殿ッ!?」
ノエルとゼノさんの悲鳴。
「ふははははははははっ! 大魔王様の魔法は世界一ィイイイイ!」
ラームの高らかな笑い声。
そんな中――。
「……あれ?」
確かにこの胸を貫いたはずの雷は、何故か俺の全身をふわふわと漂っていた。
(なんだろう。とても変な感じだ……)
この魔力、なんだか懐かしい。
それに何より――まるで自分のものかと錯覚してしまうほど、恐ろしくよく体に馴染んだ。
「ば、馬鹿な……っ。大魔王様の偉大なる魔法が……ッ!?」
ラームは顔面を真っ青に染めながら、ぶんぶんと首を横に振っていた。
「る、ルーグ……! 足元ッ!」
ノエルの
「う、うわっ!?」
まるで闇のように黒く染まった『死んでしまった大地』があった。
(こ、これが『破滅の大魔王』の魔力……!?)
ただ触れただけで大地を滅ぼすなんて、とんでもなく危険な力だ。
俺は精神を集中させ、大魔王の魔力を体の奥深くへ収めた。
するとその直後、
「そ、総員……撤退ッ!」
ラームの命令が轟き、大魔司教の面々は<
「……あの人たち、いったいなんだったんだろう……」
なんだかドッと疲れてしまったけれど……。
ゼノさんたち戦士隊一同とオココ村のみんなが無事だったので、まぁひとまずよしとしておこう。
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