第三王女の婚約者   作:NEW WINDのN

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久しぶりに登場





戴冠式へ

 

 そして·····。

 

 

 王位を継いだ(ことになっている)バルブロは、それを全国民に知らしめようと戴冠式を行う事を宣言した。

 戴冠式が行われれば、経緯はどうであれ、正式に王と国民および周辺国に認めさせることが出来るのだ。

(邪魔なザナックが、未だに逃げ回っているらしいが、無駄だ。報奨金に釣られた平民どもが血眼になっているからな·····)

 反逆者ザナックを捕らえたものは、たとえ平民であっても貴族に取り立てる。なお、生死は問わない。

 精巧な似顔絵とともに各所に高札を立て、そう喧伝している。

 各所で捜索が行われ、徐々に包囲は縮まっているという。

(ザナック、貴様はもう終わりだ。レエブン·····見誤ったな)

 一緒に逃亡していると見られるレエブン候も同じように手配されている。領民から慕われているレエブンですら、報酬目当ての平民に追われていると報告を受けている。

(ククク·····馬鹿な奴らだ。実際に貴族になることはないのだからな·····)

 バルブロは、見つけた平民がいた場合、それを殺すつもりでいる。

(平民など、使い捨てにすぎぬ·····俺様の為に働き、そして死ね!)

 ザナックの首が差し出される光景を想像し、バルブロは下卑た笑みを浮かべた。

 

「いやいや、それは私がいただきます」

 癇に障る甲高い声が広間に響いた。今、バルブロは王の間を占拠しており、この場にはバルブロに賛同するグループが集まっていた。

 その中核を占めるのは、バルブロの義理の父親ボウロロープが率いる貴族派閥だ。保身と出世欲塗れの者がほとんどであり、国を良くしようなどとはまるっきり考えてはいない連中の集まりだった。

 

「あちらの領土は私が」

「いやいや私が·····」

 彼らは何をしているのかというと·····なんと、バルブロの呼びかけに応じない王派閥に属する貴族の領土を奪う事を算段し、取り合いをしているのだ。

 

 もっとも実際に攻め込むわけでも、攻め込んだわけでもない。つまり、単なる空想·····いや妄想の類にすぎない。まさに取らぬ狸の皮算用という奴だろう。それで盛り上がれるのだからおめでたい連中だった。

 

 この場の空気は緩みきっており、緊張感の欠片もない。ザナックを取り逃した以外は概ね予定通りに行っており、戴冠式さえ終わらせれば、ひとまず大成功といえるだろう。

 細かくいえば、王の証となる道具類一式が行方不明であり、正式に王になる手順は踏めないのだが·····。

「ないなら作ってしまえばよい。どうせ王家以外にはわからん。それにその王家も俺様のみだからな」

 などと力技で押し切ろうとしていた。

「豪華にやれ」

 国の財政を無視して戴冠式を豪華に行う事を支持し準備を進めている。

 

「朗報でございます。ザナック王子を捕らえたと報告が·····」

「ほう。奴は死んだのか?」

 生死問わずという指示の意味は、殺してよい·····いや·····殺せ! である。バルブロとしては死んでくれれば手間が省けるというものだ。

「いえ、生きていると」

「チッ、生きているのか·····」

 バルブロは、残念そうに·····いや本当に残念だった。

「まあいい、途中で殺すように指示を出せ。あいつの顔は二度と見たくないからな」

「かしこまりました」

 兵が出ていくのを見送りながら、バルブロは醜く笑う。

「おめでとうございます。これで憂いはなくなりましたな」

「ああ。あとは明日の戴冠式を終えるだけだ」

 ポン! 誰かがワインを開けたらしく、それにつられて次々にポン! という音が鳴り響く。あっという間に各自の手にグラスが渡り、各所で乾杯が行われていく。まだ昼間だが、戴冠式の前夜祭のような盛り上がりだった。

「バルブロ王子·····いえ、バルブロ王に!」

「王に!」

「ともに栄えよう!」

 バルブロは思ってもない事を口に出し、ワインを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 






すみません、久しぶりに二週連続更新なんですが、まさかのサトラナの出番が·····ない。

そしてバルブロ主役回だと一気に書けるという·····うーん、慣れでしょうか。

サトラナは私が今まで書いたことがないテイストだからなのかしら·····。つぎは出番を·····。

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