米中対立が激化するなか、この枠組みを米国の覇権争いの道具としてはならない。
日本、米国、豪州、インドの4カ国外相会談がおととい、東京で開かれた。昨年秋のニューヨークに続く2度目の開催だ。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、海洋安全保障や質の高いインフラの整備など、さまざまな分野で協力を深めることで一致した。
新型コロナの感染拡大後、日本で初めて行われた閣僚級の多国間協議である。自由や民主主義という価値観を共有する4カ国の外相が顔を合わせ、ルールに基づく国際秩序を築く理念を共有した意味は大きい。
この枠組みは、台頭する中国を意識し、安倍前首相が第1次政権の時に提唱し、第2次政権で本格的に取り組んできた。
豪印両国はこれまで、中国との関係に配慮し、ときに慎重姿勢を示してきた。ここにきて連携強化に応じ、外相会談の定例化にも合意したのは、中国の度重なる強引な行動への危機感からだろう。南シナ海や東シナ海での海洋進出などを受けて、地域の安定をはかろうとする動きに、中国が反発するとすれば筋違いだ。
とはいえ、参加国の間にも、なお考え方に差異がある。
米国のポンペオ国務長官は会談で「4カ国が連携し、国民を中国共産党の腐敗や搾取、威圧から守る重要性は増している」と強調した。11月の大統領選を前に中国に対抗する強硬姿勢をアピールし、対中包囲網につなげる狙いをあらわにした。
だが、米国の同盟国であるとともに、経済では中国との関係も深い日豪にとって、米中の確執は好ましくない。「非同盟」の伝統をもつインドはなおさらで、中国ともバランスをとる外交を続けるだろう。
外相会談では、他国に連携を広げることでも一致した。であれば、やはり米国の思惑とは一線を画さねばならない。東南アジア諸国連合(ASEAN)など、多くの国々は、米国につくか中国につくかの選択を明確にしようとしないのが現実だ。
既存の秩序に挑む中国の行動を抑えつつ、時間をかけて変化を促し、協調による共存をはかるほかない。米政府には、多国間の安全保障の枠組みに発展させたい考えもあるようだが、地域の緊張と分断を深める恐れがある。軍事とは切り離し、外交的な協力関係とすべきだ。
法の支配や人権の尊重といった普遍的な価値を、この地域に根付かせることが重要だ。日米豪印の各国も、それにもとる振る舞いをするようでは、連携を呼びかけても説得力を欠くことになるだろう。
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