新型コロナは欧州などで依然猛威をふるっており、国内でも警戒を怠ることはできない。インフルエンザとの同時流行も想定され、希望する人がスムーズに検査や診察を受けられる態勢の整備を急がねばならない。
保健所などに置かれた相談センターに連絡し、そこで医療機関を紹介してもらう現在の方式が、月内をめどに一部変わる。疑わしい患者を診る病院や診療所を都道府県が指定し、センター経由でなくても受診できるようにする。保健所の負担が減るのはいいが、心配もある。
まず、そうした病院を十分確保できるかだ。医師の間には、発熱患者が大勢訪れたり、感染者が出たとき風評被害が起きたりすることへの不安がある。そんな事情もあり、指定機関であることを公表するかどうかは、自治体が地域の医師会などと協議して決めるという。
だが患者にすればいかにも中途半端だ。最初に相談した先が指定機関ならばそのまま診察を受けられるが、違う場合はそこで別の病院を案内されるか、センター経由での受診を探ることになる。かなり混乱するのではないか。どこに相談したらいいか分からなくなる事態を招かぬよう、情報は極力公表する方向で調整を進めるべきだ。
相談に応じるにはそれに見合う設備や人員も要る。行政には現場の意見や要望を踏まえた適切な支援が求められる。
病院や福祉施設でのクラスター(感染者集団)の発生は、春の流行時に比べて減っている。経験と教訓を踏まえた感染防止策の効果だろう。引き続き知見の共有に努めてもらいたい。
6月下旬以降の「第2波」では、都市部の歓楽街からその周辺、さらに地方へと、年代別では若者から中高年へと、感染が広がっていった。最初にクラスターが発生したときに迅速に対処し、封じ込めることの重要性を再認識させた。
そのためには幅広い検査が不可欠だ。態勢の整備とあわせ、関係者の理解と協力がなければ難しい。歓楽街対策として警察を動員する動きも一部にあったが、強権的な手法は不信を招いて、かえって調査などに支障が出る恐れがある。大切なのは、日頃から業界との間で良好な関係を築いておくことだ。
先週からはインフルエンザワクチンの接種が始まった。国は当面の間は高齢者を優先する方針だが、乳幼児がかかれば重症化することもある。現場で柔軟に対応してもらいたい。
今年は接種希望者が増えてワクチンが足りなくなる可能性も指摘される。供給・流通の状況を把握し、情報を発信して不安を抑える。それも国の役目だ。
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