議論引き起こすため、個人見解を発信

大学の軍事研究解禁を巡る議論への注目度は非常に高いものでした。大西会長自身も、一部メディアから批判される事がありました。この約1年をどう振り返りますか。

大西:今は学術会議の見解がまとまったので、その見解を説明する役割を会長として担っている。

 だが、見解がまとまるまでは、(自衛目的に限定して、安全保障への学術界の協力を容認する意見を述べるなど)積極的に自分の意見を話そうと意識してきた。意図的に議論を起こしてきたとも言える。それに対して批判的な意見も、もちろん多かった。ただ、そうやって議論を起こして進めることが重要だと思っていた。

 

 学術会議としては、これまで避けていたテーマと向き合うきっかけが全体としてはできた。1つの試みとして意味があったと思う。私が議論を仕掛けただけではなく、多くの科学者が色々と議論をしたことに意味がある。

学術会議内で、大西会長に対して「メディア取材に対応すべきではない」というコメントも出ました。

大西:会長としてメディア取材に慎重に対応すべき、という意見もあった。ただ、安全保障との関係を考える上で、皆が黙っていたら建設的な議論はできない。だから、議論の重要さを外に対してアピールするため、個人の意見だと断って発信してきた。逆の意見も出てきて、議論が盛り上がったのだと思う。

 2月に中間まとめができて学術会議としての方針が固まった。その時点で自分個人の意見を言う役割は終わったと見ている。それ以降は、共通でまとめた内容を土台にして話すようにしてきた。