この世論調査が、「安保法制に好意的なメディアによるものだ」という反論があるだろう。それでは、他のメディアによる、安保法制への賛否をダイレクトに尋ねた世論調査で、法案への「反対」はどれくらいの割合かを見てみる。読売新聞「50%」、日本経済新聞・テレビ東京「57%」、共同通信「58・7%」だ。安保法制に対して、特に批判的な立場とされるメディアでさえ、毎日新聞「58%」、朝日新聞「56%」なのだ(朝日新聞)。

 更に、安倍内閣の支持率を見ると、いまだに40%台を維持しているではないか(不支持率も約40%)。しかも、先月よりも6ポイント支持が上がっている(NHK)。世論調査の結果が示すものは、「1億人が反対している」(岡田克也民主党代表)という反対派の主張が、明らかに言い過ぎだということだ。どう贔屓目に見ても「国論を二分している」というのが正しい認識だろう。

 そして、「国論を二分している」問題であるならば、「国権の最高機関」である国会の議論・採決を通じて結着を付けるのが、議会制民主主義の「常道」ではないだろうか(もちろん、その国会の決定は、次の選挙で国民の審判を受けて、ひっくり返ることがあるということも含めての「常道」だ)。それを反対派が、「国会だけが民主主義じゃない」という言い方で圧力をかけ続けて、国会外から国会を制圧し、支配しようとすることの、どこに「民主的正当性」があるというのだろうか。

「声の大きな」反対派に比べて、賛成派は基本「静か」だということもある。表面的な印象だけなら「国民に反対が広がっている」が、それが本当の多数の民意なのかは、客観的にはわからない。それならば、多数の民意がどこになるのかは、ベストではないにしても、ベターなものとして、議会制民主主義のルールで決めるしかないではないか。表面的な印象やある種の空気で、ルールを破ってでも国家の重要課題の意思決定をしろというのは、恐ろしいことだ。筆者には到底容認できない。

議会制民主主義の本家本元・英国に倣えば
安倍政権の国会運営は全く問題がない

 この連載で何度も指摘してきたが、安倍政権の安保法制を巡る「強引」とされる国会運営は、「議会制民主主義の本家本元」である英国ならば全く問題とならないものだ。英国政治の特徴は「交代可能な独裁」だ。端的に言えば、英国議会の法案審議は、党首討論など激しい論戦で知られているが、法案の与野党修正はなく、日本的な見方をすれば「すべてが強行採決」なのである。

 英国では、首相や財務相など政治指導者には、日本以上に広範な権限が与えられている。指導者の決断が発表されるまで、基本的にすべて「密室」で非公開に進められる。各省庁間や政治家間の調整があっても、それは一切外部からわからない仕組みになっている。例えば、英国の予算審議は、毎年3月に財務相から予算案が発表されることから始まる。だが、それまでの予算案編成過程は「密室」で、外部からはわからない。発表後も出てこない。そして、予算案は議会で審議されるが、審議時間は日本の10分の1程度だ(第5回)。