学術会議の任命拒否、撤回求め10万人超がネット署名 「学問の自由と独立を侵害」
2020年10月6日 05時50分
菅義偉首相による日本学術会議の新会員候補6人の任命拒否について、撤回を求めるネット署名が5日、10万人を超えた。また学会や教職員でつくる労働組合、映画界などからも、任命を拒否した理由の説明や、6人の任命を求める声明が相次いでいる。(臼井康兆、梅野光春)
ネット署名活動は、古川隆久・日大教授(日本近現代史)と鈴木淳・東大大学院教授(日本近代史)が呼び掛け人となり、研究者やジャーナリストら23人が賛同人となった。1日に任命拒否が明らかになったのを受け、3日にスタートした。
◆「社会に計り知れない損害」
呼び掛け文では、政治学や歴史学など思想信条の自由や人権の尊重に関わる分野の研究者が任命拒否されたこと、政府が理由を示していないことなどを批判。「前例のない、学問の自由と独立に対する侵害であり、ひいては社会に計り知れない損害をもたらしかねません」と指摘している。
1935年、「天皇機関説」を唱えた憲法学者美濃部達吉氏が国会などで排撃され、軍部の暴走につながったことなど戦前戦中のあしき前例も挙げている。古川教授は「任命拒否がまかり通れば、学問の世界にさまざまな悪影響が出かねない。研究者が学問の業績で評価されるのとは別に、政治的な評価を受けることになる」と話した。
◆「自由闊達な研究活動を萎縮」
一方、日本社会学会は5日、「研究者の自由闊達な研究活動を萎縮させる」とし、理由の説明と6人の任命を求める声明を発表。理事の落合恵美子・京大教授は「研究費の配分や国立大の人事介入、思想チェックなどへの糸口になるのでは」と危惧する。日本教育学会は7日にも同様の声明を公表する。会長の広田照幸・日大教授は「任命を拒否された6人には立派な研究実績がある。理由を明確にしてもらわないといけない」と主張した。
映画界では5日、青山真治監督や是枝裕和監督ら22人が連名で「表現の自由への侵害で、言論の自由への明確な挑戦だ」とする声明を公表した。
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