聞き手・井東礁
新型コロナウイルスに対抗するため、塩野義製薬がワクチン開発を進めています。感染症分野では世界有数で、来年末までに年3千万人分以上の生産を目標に掲げています。ですが、手代木功社長は「ワクチンだけで収束は無理」と言い切ります。それでも開発する理由や収束の見通しについて、手代木社長に聞きました。
拡大するインタビューに応じる塩野義製薬の手代木功社長=大阪市中央区
てしろぎ・いさお 1959年生まれ。82年に東大薬学部を卒業後、塩野義製薬入社。米国駐在を経て経営企画部長、医薬研究開発本部長などを歴任し、2008年から現職。
――ワクチンを接種すれば安心ですよね
「一番ストレートに言うと、何もわからない。それが答えだと思います。まだ安全性や効果を示すデータが足りません。やはり現実的には、感染予防を習慣としてきっちりと行うこと。そして、どういう人が重症化するのかについて、なるべく早くいろんなパラメーターをとって、顕在化させることが重要です。ワクチンができたとしても、新型コロナにかかるリスクを減らす一つの手段にはなり得ますが、ゼロにはなりません。かからないようにするのは、現実的ではないのです」
――では日本の場合、全国民がワクチンを接種すべきでしょうか
「本当に約1億2500万人にワクチンを接種するのが、このウイルスの場合、正しいのかは、正直まだわかりません。医療情勢や致死率の違い、副反応のリスクなどと、どうバランスをとるのかは国ごとに違うので、総合的に考えなければいけない。最終的には、後遺症や重症化を経て死に至るようなことをどう制御するかが問題です」
――ワクチンがあれば完全に経済活動が再開できるとの期待もあります
「全部フリーになるというのは到底考えられません。臨床試験の最終段階であるフェーズ3は、2万~3万例が必要です。米食品医薬品局(FDA)は、ワクチンを打った人のうち、感染者が50%減れば効果があると承認します。つまり、1万人中100人発病する予定が、50人になればワクチンの価値があると判断されます。そしてかかった人が蔓延(まんえん)させる可能性は常にあります。ワクチンは万能ではありませんし、免疫はそんなに簡単ではないのです」
――厳しいですね。どうすれば収束するのでしょうか
「例えば昨年の冬、米国ではイ…
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