トランプ米大統領、軍病院へ入院 新型ウイルス陽性で発熱

President Trump walking to helicopter
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専用ヘリコプターへ歩いて向かうトランプ氏(2日、ホワイトハウス)

新型コロナウイルス陽性が判明したドナルド・トランプ米大統領(74)は2日午後、専用ヘリコプターでワシントン近郊のウォルター・リード米軍医療センターへ向かった。発熱があるという。ホワイトハウスは、大統領が病院へ行くのは「あえて大事をとるため」だとしている。また同日夜には、トランプ氏の元上級顧問のケリーアン・コンウェイ氏らも検査で陽性だったと明らかにした。

スーツ姿にマスクをしたトランプ氏は、ホワイトハウスの庭を歩き、専用ヘリコプター「マリーン・ワン」に乗り込んだ。記者団に手を振り、親指を立てて見せたが、発言はなかった。

ホワイトハウス報道官は声明で、トランプ氏は「疲労感はあるが、気持ちは元気だ。軽い症状を示しており、今日1日ずっと執務していた」と発表。

「あえて大事をとって、そして医師や医療専門家の助言にもとづき、大統領は今から数日、ウォルター・リード病院の大統領執務室で働くことになる」と声明は続け、「大統領とファーストレディへ寄せられた応援に、トランプ大統領は感謝している」と述べた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、病院に到着したトランプ氏は救急室で治療を受けることはなく、病院内の大統領特別スイートに直接向かった。

CBSによると、トランプ氏には軽い発熱の症状があるという。

主治医によると、トランプ氏は入院後、新型コロナウイルス治療薬、レムデシビルの服用を開始した。

歴代の大統領はウォルター・リード病院で定期健診などを受けてきた。

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トランプ氏「とても元気だと思う」とビデオ 入院前に

トランプ氏は同日、ツイッターに投稿したビデオで、「皆さんにとても応援していただき、感謝している。ウォルター・リード病院に行く。自分はとても元気だと思う」と話した。

さらに、「でも何もかもうまくいくよう、念を入れます。ファーストレディはとても元気だ。なのでどうもありがとう。感謝しているし、決して忘れません。ありがとう」と述べた。

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同日深夜には、「うまく行っていると思う! みんなありがとう。LOVE!!!」とツイートした

元顧問らが相次いで陽性に

2016年の大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務め、政権発足後はホワイトハウスの上級顧問となった(8月に辞任)コンウェイ氏は2日夜、COVID-19陽性と判明したとツイートした。

「症状は軽く(軽いせき程度)、気分は良好。医師と相談の上、隔離プロセスを進めている」

また、「私の心は常に、この世界的なパンデミックの影響を受けているすべての人と共にある」と、ハートの絵文字付きで投稿した。

コンウェイ氏の発表に先立ち、娘のクローディアさんは同氏が自宅で咳を繰り返していることや、陽性と分かったことなどをTikTokに投稿していた。

この日はコンウェイ氏のほか、マイク・リー上院議員(共和党、ユタ州)やトム・ティリス上院議員(共和党、ノースカロライナ州)もそれぞれ、検査で陽性と分かったと発表した。

3人は9月26日、トランプ氏がホワイトハウスの庭で最高裁判事候補にエイミー・コーニー・バレット氏を指名した際に同席していた。この式典の出席者の間で、複数の人の感染が明らかになっている。

米紙ワシントン・ポストは匿名の関係筋の話として、バレット判事は今夏、COVID-19陽性と診断された後、回復していたと報じた。ホワイトハウスによると、判事は2日の時点で陰性が確認された。

このほか、トランプ氏の選対本部長のビル・ステピエン氏が2日夜に陽性だと分かったと報じられている。米政治ニュースサイトのポリティコによると、ステピエン氏は「軽いインフルエンザのような症状」が出ているという。

1週間前にトランプ氏と接触があった共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長もまた、陽性と確認された。

トランプ大統領が執務できなくなった場合に、大統領代行を務めることになるマイク・ペンス副大統領は2日朝の時点で、ウイルス検査は陰性だったと発表している。

White House event for Amy Coney Barrett
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バレット判事を最高裁判事に指名するとトランプ氏が発表した式典の出席者のうち、少なくとも7人の感染が確認されている(9月26日、ホワイトハウス)

抗体カクテルとレムデシビル投与

ホワイトハウスのアリッサ・ファラー報道部長は、トランプ氏は大統領権限をマイク・ペンス副大統領に委譲していないと説明。「指揮しているのは大統領だ」という。

合衆国憲法の規定では、大統領が病気のため職務が遂行できなくなった場合、副大統領に一時的に権限を委ねることができる。トランプ氏がそうした場合、回復するまでペンス氏が大統領代行となる。

主治医ショーン・コンリー医師は同日午後、トランプ氏は「酸素吸入は必要としていないものの、専門医と相談の上、レムデシビル治療を開始することにした。最初の投与を終え、今はゆっくり休んでいる」と発表した。

レムデシビルはエボラ出血熱の治療薬として開発されたもので、ウイルスの複製を阻害し、症状の持続期間を短縮することがあるという。

コンリー医師はトランプ氏の入院前には、大統領がホワイトハウスで「予防措置として、レジェネロン社のポリクローナル抗体カクテル8グラムの投与を受けた」と説明した。これは、ウイルス量を抑制し回復を早めるためのものという。

この抗体治療は、ウイルスを抗体に付着させることで体の細胞を守り、免疫反応を起こしやすくるのが狙い。ただし、この治療法はまだ実験段階にあり、認可を得ていない。この段階で大統領に使用することに懸念を示す専門医もいる。

トランプ氏はこのほか、亜鉛、ビタミンD、ファモチジン、メラトニン、アスピリンを服用しているという。

「本日午後の時点で、大統領に疲労感はあるものの、気持ちは元気だ」とコンリー医師は説明。さらに、メラニア夫人は「軽いせきと頭痛だけで元気」だという。

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トランプ氏の感染判明までの7日間、集会や討論会に

トランプ氏は2日未明にツイッターで、自分自身とメラニア夫人が新型ウイルス陽性となったと発表。1日には、長年の側近で各地に同行しているホープ・ヒックス氏の感染が明らかになったばかりだった。

ヒックス氏の感染がすでに判明していた1日の時点で、トランプ氏はニュージャージー州で資金集めイベントに出席しており、この行動に対する批判も出ている。

トランプ氏は9月29日に民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領(77)と90分間にわたる討論会で、激しい応酬を展開したばかり。11月3日の大統領選に向けて、2回目の討論会はフロリダ州マイアミで15日に予定されているほか、今後の遊説や支持者集会の開催に大きな影響が予想される。

バイデン氏は

バイデン氏は2日午後、トランプ夫妻の早期回復を祈るとツイートした後、自分とジル夫人は検査の結果、新型ウイルス陰性だったとツイートした。

その上でバイデン氏は、「これでみんなあらためて気をつけて欲しい。マスクをして、社会的距離を守り、手を洗うように」と続けた。

バイデン陣営は、トランプ氏を非難する選挙広告の使用を一時的に中止しているところだと話した。

バイデン氏はさらに、「今のこの時、党派対立していてはならない。今はアメリカ全体にとっての瞬間でなくては。ひとつの国として、まとまらなくてはならない」とツイートした。

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バイデン氏のためのバーチャル選挙集会に参加したバラク・オバマ前大統領も、トランプ夫妻をいたわった。

「今は大きい政治闘争の最中で、とても真剣に闘っているわけだが、合衆国大統領とファーストレディにお見舞いを申し上げたい」とオバマ氏は述べた。

「お互いにアメリカ人で、お互いに人間で、誰もが健康でいられるようにしたい」

Trump's health statistics
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トランプ氏の2020年健診報告による、身体状況。年齢74歳で身長190センチ、体重111キロ、ボディマス(BMI)指数は30.5で「肥満」の部類に入る。コレステロール値は167mg/dLで正常値の範囲内。