ネット上での誹謗中傷トラブルは絶えませんが、他者への誹謗中傷は歴とした犯罪です。被害者は「ネットの書き込みだから…」と泣き寝入りする必要はございません。
誹謗中傷により、名誉やプライバシー等の権利が侵害されたことを証明できれば、慰謝料を請求できる可能性は十分にあるでしょう。
この記事では、誹謗中傷により慰謝料請求が認められる要件、慰謝料と弁護士費用の相場、実際に慰謝料を請求する方法についてご紹介します。
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ネットの誹謗中傷を
放置するのは危険です!
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ネットの誹謗中傷を削除せず放置すると、以下のようなリスクが生じます。
- 身元を特定されて嫌がらせをされる
- 仕事や職場での評価の悪影響
- 家族や周囲の人まで誹謗中傷される
- 周囲からの孤立やいじめの誘発
- 取引先や顧客の信頼を損なう
また、SNSや他サイトで拡散され続ければ、完全な削除は難しくなってしまいます。
誹謗中傷の対応は時間との勝負です。
IT弁護士ナビでは、『相談料が無料』の事務所も多数ございます。
少しでも早く誹謗中傷トラブルを解決したい場合は、お近くの法律事務所へご相談ください。
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誹謗中傷により法的に権利侵害が行われた場合に慰謝料を請求できる
冒頭でお伝えした通り、慰謝料の請求は、誹謗中傷によって権利が侵害された場合に行うことができます。
誹謗中傷による権利侵害には、『名誉毀損』『侮辱(名誉感情侵害)』『プライバシーの侵害』などがあげられます。
名誉毀損
名誉毀損とは、公の場で、他人の社会的評価(評判)を落とすような事実を適示する行為を言います。
名誉毀損に該当するケース
例えばですが、ネット上に、「〇〇は〇〇と不倫をしていた」と書き込んだ場合や、「〇〇は〇〇罪で警察に逮捕されたことがある」と職場で言いふらした場合は、名誉毀損に該当します。
公の場で他人の評判を落とすような事実を適示すれば名誉毀損となりますので、適示した事実が真実であるかどうかは問われません。
例えば、実際に不倫をしていたかどうか、または逮捕歴があるかどうかは問われないということです。
名誉毀損に該当しないケース
しかし、誹謗中傷の内容によっては名誉毀損が成立しない場合があります。
発言や投稿が、一般社会の利害に関する事項で(公共性)、もっぱら社会の利益を図る目的をもってなされたものであり(公益性)、かつ、その内容が真実(真実性)の場合です。
例えば、政治家のスキャンダルを週刊誌が掲載する場合や、報道機関が重大な犯罪を報道するケースなどがあげられます。
侮辱
侮辱とは、第三者の名誉感情を侵害する行為を言います。
名誉毀損と異なり、事実の適示は不要なので、悪口や、攻撃的な発言が典型的な侮辱となります。
侮辱に該当するケース
例えば、職場内で「〇〇はブスでデブだ」と言い放つ行為や、「〇〇は気持ち悪いから死んだ方がよい」などとネット上に公開することは侮辱に該当します。
侮辱に該当しないケース
侮辱行為として権利侵害が認められるためには、「侮辱行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超えた場合」とするのが、判例です。
そのため、「あいつは気に入らない」とか、「あいつの書いた本は面白くない」といった、個人の否定的な評価が記載されているだけでは、権利侵害とはなりません。
プライバシーの侵害
プライバシーの侵害とは、本人が公開を望まないにも関わらず、個人情報や私生活上のこと公表することです。
プライバシーの侵害に該当するケース
例えばですが、職場内で「〇〇さんの年収は〇〇円だって」と言いふらす行為や、「〇〇の家は〇〇駅のセブンイレブンの近くにある」とネット上で氏名や住所を公開することはプライバシーの侵害に該当します。
プライバシーの侵害に該当しないケース
プライバシーの侵害は、真実である、または真実らしく受け取れることが求められるため、全くのでたらめを言いふらした場合は、プライバシーの侵害に該当しません。
また、友達同士の内輪で、言いふらした程度ではプライバシーの侵害があったとするのは難しいでしょう。
誹謗中傷により請求できる慰謝料の相場
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では、誹謗中傷を受けた方が、請求することができる慰謝料の相場について解説いたします。
名誉毀損による慰謝料の相場
『名誉毀損によって損害賠償請求』した場合の慰謝料の相場は、一般人の場合で10~50万円です。それに対して事業主が名誉毀損を受けた場合、売上に影響がでるため、慰謝料の額は50~100万円になります。
名誉毀損は誹謗中傷の内容の真実性は問われませんが、誹謗中傷の内容が虚偽の場合、慰謝料の額が高くなる傾向にあります。
侮辱による慰謝料の相場
誹謗中傷の内容が、侮辱に該当する場合の慰謝料の相場は、1~10万円を目安に考えてください。
プライバシー侵害による慰謝料の相場
プライバシーの侵害の場合も同様に、慰謝料の相場は10~50万円を目安に考えてください。
ヌード写真の場合はより高額になる
ヌード写真の公開もプライバシーの侵害に該当します。
プライバシー権侵害の慰謝料は、どれだけ人に知られたくない事項かということが重要となるので、ヌード写真を公開されたような場合、100万円以上の慰謝料が認められる場合があります。
また、案件によっては数百万円の慰謝料を請求できる場合もあると言われております。
【関連記事】リベンジポルノの相談先とよくある相談例|相談者の傾向と対策まとめ
慰謝料が高額になるケースとは
テレビや雑誌などのメディアが権利侵害を行った場合、慰謝料は高額になりやすいです。特に有名人・芸能人が誹謗中傷の対象だとその傾向があります。
ただし、誹謗中傷の慰謝料は被害内容によりけりです。一般人でも状況によっては相場以上の慰謝料を請求できるケースも少なくありません。
ご自身の状況ではいくら請求できるのかを確認したい場合は、法律相談で弁護士の意見を参考にしてみてください。
慰謝料請求にかかる弁護士費用の相場
一般的に損害賠償(慰謝料)請求を依頼するための、弁護士費用の相場は以下の通りです。
裁判外での請求
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着手金:約10万円程度
報酬金:賠償金の16%
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裁判での請求
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着手金:約20万円程度
報酬金:賠償金の約16%
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また、匿名サイトの投稿で加害者が誰かわからない場合は、発信者情報開示請求で身元を特定しなくてはいけません。
投稿の特定をするには、別途で弁護士費用が発生しますが、60~80万円がおおよそ目安です。
なお、誰が書いたかを特定する手続きにかかった費用は、書込みを行った者に請求できるため、回収できるケースも多々あります。
※どこまで認められるかは裁判官の判断しだいのため、必ずしも全額請求できるとは限らない点にはご留意ください。
【詳細記事】ネット誹謗中傷問題を解決する弁護士費用の相場
誹謗中傷により慰謝料を請求する方法と手順
最後に、誹謗中傷を受けた方が、慰謝料を請求するまでの手順を説明していきます。
- 証拠を保存する
- IPアドレスの開示請求をする
- プロパイダの特定
- プロパイダへの保存請求
- プロパイダへ情報開示請求
- 投稿者へ請求
【詳細記事】ネット誹謗中傷の犯人特定方法|必要な期間と費用の目安を確認
証拠を保存する
誹謗中傷に関する情報は全て保存してください。ネット上で誹謗中傷された方は、書き込みされた日付と共に、スクリーンショット機能を用いて保存するといいでしょう。
会社や学校などで誹謗中傷を受けた方は、レコーダーに誹謗中傷の内容を保存する、その場にいた人に証人になってもらうといいでしょう。
サイトの管理会社へIPアドレスを請求する
ネット上で誹謗中傷を受けた方は、書き込みを行った人の身元を特定しなければなりません。特定するために、まずは書き込みが行われたサイトの管理会社へ投稿者のIPアドレスを請求してください。
もし請求に応じない場合は、裁判所で発信者情報開示請求の仮処分の申立を行います。
プロバイダの特定
請求によって入手したIPアドレスから、プロバイダ会社を特定できます。「IP SEACH」にIPアドレスを入力することでプロバイダ会社を特定することが可能です。
プロバイダに対する保存請求
プロバイダが保有している情報は3か月程度で消えてしまうため、プロバイダを特定したら、プロバイダへアクセスログ等の保存請求をする必要があります。
プロバイダに対し発信者情報開示請求
無事保存が完了した旨通知があった後で、プロバイダ会社へ発信者情報開示請求訴訟を提起し、この請求により投稿者の氏名・住所が特定されます。
【関連記事】発信者情報開示請求とは|請求訴訟を行う具体的な流れ
投稿者へ慰謝料を請求する
今度は、投稿者へ損害賠償請求を行いますが、直接、投稿者へ慰謝料の交渉を行います。
交渉は弁護士に依頼することが一般的であり、まずは書面でのやりとりから交渉を始めます。書面に弁護士の名前が記載されていることで、慰謝料の請求に応じやすくなるでしょう。
もし、慰謝料の話合いがまとまらない場合は、損害賠償請求訴訟を提起することになります。
まとめ
誹謗中傷被害で請求できる慰謝料の相場は、以下の通りです。
誹謗中傷の内容
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慰謝料の相場
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名誉毀損(一般人)
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10〜50万円
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名誉毀損(事業主)
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50〜100万円
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侮辱
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1〜10万円
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プライバシー侵害
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10〜50万円
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プライバシー侵害(ヌード写真の公開)
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100万円以上
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なお、犯人の身元特定や慰謝料請求に必要になる弁護士費用は、弁護士事務所によって違います。
誹謗中傷による慰謝料を請求したい場合は、まずは弁護士事務所に相談して、見積もりをだしてもらうと良いでしょう。
【参考】誹謗中傷の被害を相談できる窓口4つ