「政界の一寸先は闇」を誰よりも知っているのは菅首相自身
だが、「政界の一寸先は闇」を誰よりも知っているのは菅首相自身だろう。既に景気の劇的な悪化を示す数字が上がってきている。今は政権発足当初だから支持率は高いが、御祝儀だ。何としてもコロナを収束させて解散総選挙を打たねば、何が起きるかわかるまい。
コロナが収束するのか? 逆に訊こう。そもそも、安倍前政権が科学的知見を尊重したのか? コロナで自粛した方が政権運営に都合が良いから、騒いだだけではないのか。ならば、政治的理由で収束する。
自民党に、潔く下野するなどという概念はない。権力の座を守るためなら、いかなる手段もいとわない。菅内閣の立場で論じるなら、もっともらしい理由を並べて、コロナを収束(したことに)させ、総選挙を断行すれば大勝間違いなしだろう。そうすれば政権基盤は強化できる。それを好まない勢力がいるということだろうが。
誰が総理大臣でも、国民の為になればいい。菅首相はさっそく、「規制改革」を掲げた。規制とは、官僚が国民に指図する根拠法令のことである。不要な規制を廃止、整理してくれるなら大歓迎だ。ということは、官僚の抵抗は激しくなるだろう。
ほとんどの官庁は戦々恐々で、菅首相の古巣の総務省などは狙い撃ちされている感がある。武田大臣とその背後に控える二階幹事長の力で総務省改革を行おうとしているのだろうが、どうなるか。
外政では、安倍前首相の実弟の岸信夫防衛相が注目だ。前内閣以来、経済安全保障に取り組んでいる。この分野は麻生財務大臣も後押ししている。
私は政権発足直後であり、「期待を込めて見守る」との立場である。
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「
倉山塾」塾長、ネット放送局「
チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『
嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『
13歳からの「くにまもり」』