「最近注目されるようになった知的障害スペクトラム。いわゆる境界知能です。IQが85から100くらいまでの間。普通に学校に通えるし大学にも進学できます。知的障害ではないので支援教育は受けられない。一般から見たらまったく普通の人です。実際に普通なんです。たくさんいます。彼はその境界知能にあって、理解や認知が歪んでしまうタイプだと思います。加えて解釈が浅い。長くて難しい文章が読めない」
「収監されてから、フランクルの『夜と霧』とか『アンネの日記』を読んだようだけど、『闇金ウシジマくん』とか、拘置所に入る前から漫画ばかり読んでいるようです」
「本や映画に対する理解が普通とは違う。そして浅いんです。例えば「アップルパイがあるね」と誰かに言われたら、「くれ」と言われたように思っちゃうとか、廊下で誰かとぶつかったら、わざとぶつかってきたと思いこむとか、そういった認知の歪みがあって、その積み重ねでいろんな社会経験がものすごくつらいものになって。その結果として、自分の生きづらさをカバーするためのコーピング(ストレスへの対処法)として、アルコール依存になったり薬物に手を出したりする。そういうタイプだと思うんです。
私自身は大麻はやったことがないけれど、周囲にはけっこういます。彼ほどの歪みはないですね。もともとの彼の特性的なものかしら。境界知能にある人は実生活でいろいろ困難があってストレスから抑うつ状態になって、しかも思考の幅が狭いので、自分は低賃金で頑張って仕事をしながら怠けているとか叱責されて社会的なストレスにさらされているのに、重度障害の人たちは何も生産しなくても食べられるし怒られないし、このまま生き永らえるのかって、……抑うつ状態による思考の狭さも働いて、どうしても許せなくなるって思考はすごく多い」
「つまり植松に特異な感覚ではない」
「そういう子は思春期ぐらいから目立ち始めて、周囲との軋轢の結果としてドロップアウトして、……日本っていったんドロップアウトしてしまうとリカバリーがすごく難しいから、社会に対する不満や怒りが強まるばかりで、これは安倍政権を支持しているネトウヨや自民党ネットサポーターでバイトしている人たちなんかにも共通するけれど、自分たちが抑圧されている原因は現政権にあるはずなのに、自分たちを攻撃者である政権と同一化して、リベラルな人や政権に対して声を上げている人を攻撃するという現象が起きているけれど、それと非常に近い」
あらためて書かねばならないが、僕は思想的にはリベラルの側にいる。現在の安倍政権は支持しない。だからこそこれ見よがしにならないように気をつけたいが、植松が安倍首相を強く支持していたこと、ドナルド・トランプを崇拝していたこと、犯行を予告する手紙はそもそも安倍首相宛てに書こうとしていたこと、今の政権ならば自分の行為は正当化されると思っていたことは事実だ。そしてこれらの事実は、(今はまだ書けないが)植松の犯行において重要な意味を持つ可能性がある。